タブレットを用いた授業で、自主性と協調性を育む

2020年に向けたICT環境整備

―東京都―
杉並区立天沼小学校

2014年度に杉並区の教育課題研究指定校となったのを契機に、「ICTの活用に関わる研究」を進める区立天沼小学校。電子黒板が実物投影機とともに全教室に導入され、ほとんどの授業でデジタル教科書が活用されている。4年生以上の児童には、キーボード着脱式のWindowsタブレットが一人1台整備され、各教科の授業をはじめ、さまざまな場面で活用されている。今回は、5年生と3年生の2つの授業での活用事例を紹介する。


タブレット活用事例
【5年生・理科】「植物の成長」

 この日は、肥料の有無や日光の有無など、条件を変えて栽培した「いんげん豆」の成長過程を記録しながら、諸条件の有効性や意義を検証した。すでに複数回の授業が行われており、条件ごとに「何㎝伸びたか」「葉が何枚になったか」「葉の緑色の濃さがどれくらいか」などを比較し記録してきた。この日の内容は集大成となる結果発表だ。

 まず児童は、タブレットを使って2パターン(条件の有無)の「いんげん豆」を静止画で撮影し、気づいたポイントについて、プレゼンテーションソフトを使って入力する。その後、それまでに撮影してきた「いんげん豆」の画像も含めて、発表に使う画像をセレクトする。そして、グループワークに移った。他のメンバーの画像や入力内容と比較しながら、プレゼンテーションに向けてスライドへの記載内容や口頭での発表内容を考える。たとえば、4人のグループが「肥料の有無」をテーマにした場合、「肥料あり」で育てた2人と、「肥料なし」で育てた2人から、発表用に画像を使う児童を1人ずつ選択する。発表する検証の結論や分析結果の内容は、4人でじっくり話し合って文言を決めていく。この間、プレゼンテーションの内容は、教員が机間を回りながらチェックするほか、端末の操作方法などに関する疑問点があれば、ICT支援員が随時サポートする。

その後、発表用のスライドが完成したらオンラインで提出する。提出/未提出の状況は、電子黒板で確認できる。提出が済んだグループが、発表前の練習・リハーサルでの気づきに基づいて内容を修正し、再送信することも可能だ。


すべてのグループの提出が終わると、いよいよプレゼンテーションに移る。 1グループずつ前に出て、2名分の成長記録を左右に並べて、比較実験の結果を発表する。

 そして、授業の最後には、体験を通して気づき、導き出された生育のために必要な条件をクラス全体で声を出して発表した。模範解答は「水」「空気」「温度」「日光」「肥料」の5つだが、児童はさらにもうひとつの条件として「愛情」を付け加える。松川先生はそれを否定することなく、児童の主体性を伸ばすことに主眼を置いていた。

タブレット活用事例
【3年生・総合的な学習】「タブレットに慣れよう」

 3年生の総合的な学習は、ビジュアル・プログラミング・ソフト『Viscuit』を使って授業を行った。この日の目的は、タブレットに慣れ親しむことだ。ただし、いきなりタブレットに触れるのではなく、体を動かしてプログラミングの考え方を理解させることからスタートする。

 まず児童は床に座り、日向寺勝彦先生が「立つ」「右手を上げる」「左手を下げる」「座る」といった指示が書かれたカードを見せ、児童はそのとおりに動く。ただし、すでに児童が立っている状態で、さらに教員が「立つ」のカードを提示すると、児童は一斉に「ブッブー!」と”警告音”を発する。重複した指示や、実行不可能な指示に対する意思表示をさせることで、プログラミングの際に無理や無駄のないプログラムを組む必要性を体感させている。

 児童が席につくと、次は”すごろく”のようなマス目のシートが張り出され、人形を指定された場所まで動かすための指示内容を児童が声に出す。目的を達成するまでの全体像を俯瞰しながら、適切な手順を踏んでいく大切さを理解させる内容だ。



 そして、いよいよ『Viscuit』を起動する。最初は、個々が自由にイラストを作成した。イラスト作成に時間をかけすぎないことが肝心だが、描画ツールの使い方などは説明しない。あくまでも児童本人に考えさせてイラストを作らせる。次に、「『メガネ』と呼ばれるツールを使うと、作成したイラストが動く」という情報だけ伝えてから、イラストを動かす方法やルールを児童各自に探し出させる。その際、各自が見つけたルールは文字にして個々のワークシートに記入させる。子供たちは実際にイラストを動かして、自分で確かめながら文字に表す。次々とルールを見つけてワークシートを埋める児童もいれば、じっくりと確認した上で、ひとつずつ丁寧に書いていく児童もいた。

 そして、次の段階で行うのは、各自が見つけたルールを発表し、共有するグループワークだ。共有したルールをヒントにして、その場で新たなルールを見つけるなど、協働学習によって1+1を3以上にする光景が見られた。

 最後は、クラス全体での情報共有だ。児童にルールを発表させる。日向寺先生は児童の案を試して電子黒板に映し、児童全員に見せた上で、クラス全体の大型のワークシートにルールを記入する。

 こうしていくつもの法則が発表された後、日向寺先生はそれぞれに共通する動かす方向やスピードを設定するための大元のルールを整理して説明した。最後に、発展的な動かし方のヒントとして、『メガネ』を増やせることや、増やすことで変則的な動きになることを説明し、授業は終了した。

3年生 主任教論<br>日向寺 勝彦先生

3年生 主任教論
日向寺 勝彦先生

理科専科 主幹教論<br>松川 厚雄先生

理科専科 主幹教論
松川 厚雄先生

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