校内研修について教師としての「基礎的・基本的な知識・技能」を日常的な校内研修で身につける

2020年に向けた教員の養成

―岡山県―
赤磐市立山陽東小学校

多彩な校内研修を日常的に実施している、岡山県赤磐市立山陽東小学校の片山淳一先生。教員歴の浅い先生方の課題や悩みを解決し、日常の授業づくりや指導に生かせる校内研修を心がけていると言う。

教師としての「基礎・基本を学べる校内研修」を目指した

5年B組担任
研究主任 情報主任
片山 淳一先生

 「若い先生方は勉強熱心です。しかし、指導において何が大事なのか、どのような指導技術が効果的なのかを模索しています」と、片山淳一先生は、教員歴の浅い若手教師の課題を指摘する。たとえば、発問することが苦手なだけでなく、発問を工夫する大切さもまだ理解できていない。また、教科書での指導に懸命になるあまり、一方的な授業に陥りやすいと言う。

 「授業や指導に関する、教師としての『基礎的・基本的な知識・技能』がまだ身についていない状態なのです。新学習指導要領では、子供たちが『基礎的・基本的な知識・技能』を習得することを重視していますが、これは子供に限った話ではなく、先生も、教師としての『基礎的・基本的な知識・技能』を身につけなければなりません」

 しかし、以前の校内研修は、若い先生が教師としての基礎・基本を学ぶのには効果的でなかったと言う。校内研修として、公開研究授業と事前・事後検討会を年1回実施していたものの、その場限りのイベント的な傾向が強く、普段の授業や指導方法などの改善につながる研修になっていなかった。

 「もっと日常的に校内研修の機会をつくって、発問技術や板書・ノート指導のノウハウ、学習規律の徹底方法、学級経営のコツなど、教師としての基礎・基本を学び、日頃の授業や指導に生かせる内容の校内研修にしたいと考えました」

校内研修を定期的に開催し、実践的な指導技術を学ぶ


 そこで片山先生は、毎週水曜日の放課後に、1時間以内の校内研修を定期的に実施するようにした。

 「実践的な指導技術を学ぶ場と位置づけています。ワークショップ形式をとることが多く、先生方が指導技術のノウハウを体験しながら学べるようにしています」

 取材に訪れた日は、フラッシュ型教材のワークショップを開いた(コラム①参照)。ほとんどの先生はフラッシュ型教材に触れるのも初めてで、「九九をしっかり練習させたい」「間違いやすい送りがなを学習させたい」など、自分が受け持つ子供たちの課題に合う教材を作成し、先生同士で出題し合った。

 「まずは、フラッシュ型教材が子供たちにとっての『基礎的・基本的な知識・技能』の習得と定着に効果があることを実感してもらい、授業での活用に興味を持ってもらおうと考えました」

 さらに片山先生は、フラッシュ型教材を効果的に活用する際のコツをアドバイスした。

 「1問答えるごとに、大げさにほめましょう」

 「フラッシュ型教材は、即答が基本です。即答できるような発問と問題にしましょう」

 「出題順も重要です。易しい問題から始めて、次第に難易度を上げていきましょう」

 これらのアドバイスは、授業づくりや指導方法を考える上でも有効なことばかりだ。そして、校内研修の最後に、片山先生は「ほめることは、授業の基本です。ほめられると子供の学習意欲は高まります」と述べた。そして、こう続ける。

 「授業でも、発問はとても大事です。まず子供にも答えやすい発問を心掛けましょう。たとえば、五線譜上の音符を見せて『どうですか?』と漠然と発問しても、何を答えればいいかわかりません。『階名を答えなさい』と発問すれば、子供は答えやすいですよね」と述べた。

 さらに、発問によって答えの難易度が大きく変わることも説明した。たとえば、「6×5=?」と「6×?=30」であれば、子供にとっては「6×5=?」の方が簡単である。

 「最初は易しく、そこから徐々に難易度を上げていくのは、フラッシュ型教材だけでなく、授業計画の基本です。スモールステップで難易度を上げていく授業計画を作ることを心がけましょう」と片山先生がアドバイスすると、先生方は大きくうなずいた。

 そして、「フラッシュ型教材の研修のように見えますが、真のねらいは、フラッシュ型教材を通して授業づくりや指導技術の基礎・基本を学んでもらうことにあるのです」と、述べて研修を終えた。

一人1ミニ授業公開で、普段の授業を見て学び合う

 同校では「一人1ミニ授業公開」という公開研究授業にも取り組んでいる。普段通りの授業を公開し、気軽に見学してもらうことで、互いに学び合うことを目的とする。すべての先生が最低でも年に1回授業を公開することをルールとしている。

 この日は、片山先生が担任するクラスで「一人1ミニ授業公開」を行った。片山先生の授業づくりと指導技術は、若い先生にとって参考になる点が多く(コラム②参照)、メモを取る先生の姿も多く見られた。

「放課後ミニミニ研修」では、先生方の悩みを聞く

 さらに、「放課後ミニミニ研修」も始めた。これは、自由参加で毎週実施する短時間研修であり、「主に若い先生方を対象とした、なんでもお悩み相談室」だという。

 相談内容は多岐にわたるが、「教室の壁に何を貼ればいい?」「学習規律を全員に徹底するには?」といった、教師としての基礎・基本に関することが多いそうだ。

 この日は、片山先生が公開した算数の授業を振り返る質問コーナーとなり、「合同な四角形を書く手順を、すべての子供が上手に説明できるようになるには?」「つい一方的に教え込んでしまうが、どうしたらいい?」などの相談が寄せられ、片山先生は指導技術の基礎・基本(コラム②参照)を中心に、懇切丁寧に指導していた。

「校内研修だより」で実践方法や教育理論を学ぶ

 校内研修だより『力をつける』も、頻繁に発行している(コラム③参照)。その内容は、校内研修の告知から、学習規律10か条、身につけたい指導技術チェックリストといった、教師としての基礎・基本の紹介、さらに「主体的・対話的で深い学び」まで、最新の教育政策や理論の解説も行っている。「実践」方法と「教育理論」の両方を、バランス良く伝えているのが特徴だ。特に好評なのが、「一人1ミニ授業公開」のレポートだと片山先生は語る。

 「主に若い先生の授業公開を見て、良い点を誌面でほめています。ほめられたという成功体験が、先生の意欲を伸ばし、成長を促すのです」

多彩な校内研修によって、教師としての基礎・基本を習得!

 このように、授業や指導に役立つ多彩な校内研修を日常的に実施してきた結果、教員歴の浅い先生は、校内研修で学んだことを積極的に自身の授業で実施するようになった。

 たとえば片山先生は、紙のドリル教材とデジタル教材の両方を活用した漢字指導を行っているが(コラム④参照)、若い先生が同じ指導方法を取り入れてみたところ、漢字テストの平均点が大きく上昇した。「平均点90点を突破しました!」と、笑顔で報告に来たと言う。

 また、片山先生は左上のような自作のマグネットカードを使って板書やノート指導を行っているが、今では、その効果を実感した多くの先生が、このマグネットカードを使った指導方法を取り入れている。

 「授業づくりや指導技術など、教師としての基礎・基本を着実に習得し、実践できるようになってきています」と、片山先生は目を細める。

先生方をほめて伸ばす。そこから生まれる好循環

 「私が若い先生方から学ぶことも多々あり、若い先生が推薦する指導方法を、私も取り入れて実践しています。『一方的に教えるのではなく学び合うのが大事』という授業の原則は、校内研修にも当てはまります」

 最後に、校内研修を成功させる秘訣を尋ねると、「ほめて伸ばすこと」と、片山先生は答えた。

 「先生方は、学んだことを指導に生かそうと積極的に取り組んでいます。その努力を正当に評価して、ほめることを心がけています。ほめられると先生方はさらに意欲的になると同時に、授業の内容も良くなり、子供たちも目に見えて成長していきます。この好循環をつくることが、大切だと思います」

手作りマグネットカード。板書で用いるだけでなく、このマークを使ってノートにも書くように指導している。

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