基礎・基本知識の定着に効く「フラッシュ型教材」は、授業作りにも直結!(フラッシュ型教材活用セミナー in 宮崎)

 ’伝説的’と謳われた、4月の徳島・三好市でのセミナーの余韻もそこそこに、7月25日、会場を九州・宮崎に移し、宮崎大学にて、通算13回目の「フラッシュ型教材活用セミナー」が開催された。
南国・宮崎市での「フラッシュ型教材活用セミナー」も徳島に劣ることなく、熱気にあふれ、実に有意義なイベントであった。

まず「模擬授業5連発」で、フラッシュ型教材の良さを実感

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土方先生(国語):形容詞を覚える。
本多先生(算数):提示されたそろばんを見て、数を答える。
渡邉先生(社会科):都道府県名や県内の市町村名を覚える。

 「形容詞です。先生のあとについて読みましょう」…最初の模擬授業は、東京都新宿区立早稲田小学校・土方奈緒美先生による「国語」。形容詞を覚えるフラッシュ型教材の実践だ。「楽しい」「悲しい」「苦しい」…先生の後に続いて読むうちに、参加者の声は次第に大きくなっていく。続いて「形容詞に合った読み方をしてみましょう。楽しい!」→「楽しい!」、「悲しい」→「悲しい」…表示される形容詞は先ほどと変わらないが、形容詞に合うように気持ちを込めて読むことで、しっかりと体にしみこませて覚えることができる。そして最後には「形容詞のあとに土方先生とつけて読みましょう。楽しい土方先生!」→「楽しい土方先生」…表示されるスライドは同じでも、発問を変えれば答え方にも変化が生まれる。これがフラッシュ型教材の大きな特長だ。
 フラッシュ型教材は、シンプルで、短時間に取り組む教材。模擬授業もテンポ良く進んでいく。

 次に、長崎県教育センター・本多博先生の「算数」の模擬授業。提示されたそろばんを見て、数を答えさせる教材だ。1桁、2桁まではなんとか読めていた参加者の先生方も、3桁までレベルアップすると、瞬時に答えるのに四苦八苦。こうして少しずつレベルアップしながら、順次、理解度を確認していけるのも、フラッシュ型教材のもうひとつの特長だ。

 続いて、宮崎県三股町立勝岡小学校・渡邉光浩先生の「社会科」。地元ならではの、宮崎県内の市町村を覚えるフラッシュ型教材だ。都道府県名や市町村名を覚える教材は、フラッシュ型教材の中でももっともオーソドックスといっても良い。色分けしたり、文字を隠したりなど、いろいろな提示方法がある。渡邉先生は、さらにスピードアップして難易度をアップさせるなどの工夫も取り入れ、参加者を引きつけていった。

 四つ目は、再び土方先生の登場。今度は「食育」の模擬授業「主菜はどちら?」。とんかつ、ハンバーグ、めだまやき…など、主菜が次々に出てくる。まずイラストと名前を見てしっかり覚えさせ、次は文字を一部隠して提示された料理を答え、最後には二者択一問題で確認。基礎・基本となる知識の定着に効く教材たるゆえんは、バリエーションの豊かさにもある。

 模擬授業5連発の最後を締めくくるのは、本多先生の「理科」。「消化管」フラッシュ。通常、スクリーンに映し出すはずの画像を、白衣をまとった自分の体に映し出すことで、臓器の実際の位置を重ね合わせながら、それぞれの名称を的確に覚えられるよう工夫された、まさにスペシャル・フラッシュだ。
 いずれの模擬授業にも、参加された先生方のうなずく姿が数多く見られ、フラッシュ型教材の効用を実感されたように感じた。

フラッシュ型教材の活用は、初めての先生にも容易にできる!

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パネルディスカッションでの、新地先生と渡邉光浩先生によるご発表。参加者は聞き入っていた。

 教科もいろいろ、活用シーンも様々なフラッシュ型教材。パネルディスカッションでは、渡邉先生からは「『指示は端的に』『シートはコピー』。冗長な発問では、テンポ良く答えさせることはできません。」と教材作成のコツを’伝授’いただいた。フラッシュ型教材はそもそもシンプルな教材なので、複雑さはできる限りそぎ落とすことが望ましいということになる。
 また「フラッシュ型教材の専用サイトである『e-Teachers』を利用すれば、教材は無償でダウンロードできるが、やはりクラスの実態や授業のねらいに合わせて先生が自分で工夫するのがよい」とも話された。一から作るのは大変でも、ダウンロードしたフラッシュ型教材を学校、学年、クラスに合わせてアレンジするなら、難しいことではない。
 また、今セミナーのゲスト、宮崎大学大学院教育学研究科教授の新地辰朗先生は、「ICTは、限られた先生や場面だけでなく、教育活動のあらゆる場面での活用が期待される段階に進んだ。学校組織の教育力向上に寄与するということだ。授業をデザインする力、子どもたちに働きかける力、そしてICT活用のバランスを心掛けることで、教師の力量は着実に向上する」と話された。
 確かに、フラッシュ型教材の発問、スライドのひとつひとつ、タイミング、声かけ…教材にまつわる教師の働きかけが、自らの指導力をアップさせることにつながることは明らか。どんなフラッシュ型教材を作るかを考えることは、授業作りにも直結する話だ。お二人の先生方のご発表を、参加した先生方は、真剣な表情でメモを取りながら聞き入っていた。
 パネルディスカッションを取りまとめる富山大学人間発達科学部准教授の高橋純先生からは、「明るく楽しいトーンで」「短い時間で」「変化のある繰り返し」「ほめる」「授業につなげる」など、フラッシュ型教材活用のポイントが示され、模擬授業で身をもって体験された参加者の先生方には、納得の表情が伺えた。

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高橋先生によるパネルのまとめ。フラッシュ型教材ダウンロードサイト「e-Teachers」の紹介もなされた。

 いまフラッシュ型教材が注目されている理由については、「学力向上が重視されている中で、 ICTが学力に効くということは証明されている。教員のICT活用指導力を高めるためには、やりやすいところから成果を積み重ねていくことが重要であり、フラッシュ型教材のような、シンプルで知識の定着に効くICTの教材は、初めての先生にもとても適しているから」と話された。
 最後に、フラッシュ型教材の専用ダウンロードサイト『e-Teachers』に触れられ、「すでにフラッシュ型教材が6,700以上(7/25現在)もアップされている便利なサイトも存在する。そのようなサイトも利用しながら、フラッシュ型教材をうまく活用していくのがよい」とまとめられた。

外国語活動とフラッシュ型教材は、相性バツグン!

 第2部は「小学校英語フラッシュ型教材を活用しよう」と題して、三つの模擬授業が行われた。
 青森県八戸市立根城小学校・石井一二三先生の”Hello!”という元気な声からスタート。会場は一気に「英語活動」ムードに…。
 まずは『小学校のフラッシュ英単語』を活用して、形容詞の単語をリピート。”big、little、fast、slow…”意味も確認しながら教材に取り組み、くり返し覚えたところで、連想ゲームを実践。出題者だけが「動物」のイラストを見て、”big、brown…”などのヒントを出していく。いま覚えた形容詞を使ってヒントを出すところがポイントだ。答えは…”Bear!” 会場からはひときわ大きな拍手が起こった。

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石井先生の「フラッシュ英単語」を活用した模擬授業。会場は一気に英語活動ムードへ。

 続いて、富山県氷見市立明和小学校・表克昌先生の模擬授業は「道案内をしよう」。やはり「フラッシュ英単語」を活用して、”go straight”、”stop”などの日常の動作に関する単語を提示。音声に続いてリピートしたり、音声なしで”Only students.”で発音したり、変化をつけて繰り返していく。表先生のてきぱきとした指示に、参加者は迷うことなく活動を進めていく。そして、スイカ割りゲーム。代表者が前に出て、目隠しをし、ほかの参加者は、覚えたばかりの単語やフレーズを使って、代表者に声をかけてスイカの位置まで導く。”Turn right! … Go straight … Stop !…”…見事、スイカにヒットし、会場は拍手喝采、大盛り上がり!。

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表先生の模擬授業。日常の動作に関する単語を覚えて、スイカ割りゲーム。会場からヒントをもらって、スイカを見事ヒットする瞬間。

 最後の模擬授業は再び石井先生。まずは、野菜の名前を『フラッシュ英単語』を使ってリピート。次に、参加者の手元に配られたカードで、今度は、カルタ取りゲーム。全員で”What’s this?”と言い、音声を聞いて、該当するカードを取る。ここでのポイントは、単語が提示されるまでは手を頭に乗せておくこと。そうすることで、どきどき感もアップ。

 チャンピオン決定戦は、カードが貼られたホワイトボードに背を向け、参加者の”What’s this?”のかけ声とともに提示された単語を「うちわ」でタッチするもの。見ている側も、どきどき・わくわく感を味わえる。3対3で迎えた最終戦。緊張の一瞬…。”What’s this?””Green pepper.”パシッという音が会場に響き、チャンピオンが決まった。ここでも会場は大賑わい。

 

『小学校のフラッシュ英単語』でコミュニケーション能力の基礎作りを!

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第2部のパネルディスカッション。チエル株式会社より教材についての解説、表先生からは英語活動の実践報告があり、高橋先生によるまとめが行われた。

 模擬授業の後は、「小学校で英語活動を楽しく、気軽に取り組むために」というテーマのパネルディスカッション。模擬授業の内容を、より詳しい実践報告として紹介したり、活用された教材についてより詳しく解説を加えたりする中で、小学校での英語活動を楽しく気軽に取り組むためのヒントを見つけてもらうのが、このセッションの目的だ。
 はじめに、チエル株式会社の三好亜理紗から、模擬授業で活用された『小学校のフラッシュ英単語』について、「教材の使い方は至ってシンプル。タブごとに教材を切り替え、絵と文字を組み合わせた4つのパターンから提示する教材を選ぶだけ。あとはネイティブの発音に続いてリピートする。シンプルだが、その分使いやすく、先生方それぞれの工夫をしやすいのがこの教材の最大の特長。ぜひ、活用いただきたい」と教材の仕組みをご紹介。

 続いて、表先生は日ごろの活動を踏まえて、「朝はおはようございますの代わりに”Good morning.”、朝の会では”How is the weather?”、ほめるときには “Excellent!”というように、『英語活動の時間』と決め込まずに『いつでも使う』のがポイント」と。
 さらに、「『フラッシュ英単語』を活用すると、ネイティブの音声がついているので、教師が英語を話さなくても授業ができ、優れたイラストなど、教師の英語活動を支援する工夫が実にたくさん盛り込まれている」と話された。

 これら二つの発表をもとに、高橋先生は「誰にでも使えるくらいシンプルに作られている教材なので、抵抗なく活用することができる。そして、楽しく、繰り返し学習することによって、単語の知識を基盤に、コミュニケーション能力を養っていくことができる」とまとめられた。

じっくり考えさせたい。そのためにもフラッシュ型教材で効率の良い知識定着を

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堀田先生による総括講演。「フラッシュ型教材を活用した現実的なICT活用」学習指導要領と絡めた総括に、参加者はメモの手を休めることはなかった。

 セミナーの最後は、玉川大学学術研究所准教授の堀田龍也先生による総括講演。
「フラッシュ型教材を活用した現実的なICT活用」と題して話された。
「今回の学習指導要領では、時数が増え、教える内容が増えた。これまで通り探究も重視されていますが、いきなり『自由に考えなさい』と言っても子どもは考えられない。考えるための知識が要る。漢字が読めれば文章を読むのが楽になるし、九九を覚えていれば計算が楽になるように、英単語を知っていればコミュニケーションが図れる。習得できていれば活用が楽になるのです。きちんと覚えさせるべきことは効率よく覚えさせ、じっくり考えさせるところに時間をかける。そのためにも、覚えさせたいことはフラッシュ型教材で身につけさせる。ICTで効率よくやるところは効率よく、じっくり考えさせることはじっくり時間を取る。それが、今の時代に求められていることなんです。」
 セミナーは、大きな拍手をもって閉会を迎えた。会場を後にする参加者一人ひとりの表情がとても晴れ晴れとしていたのが、これまでになく印象深いものだった。

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