アクティブラーニングの習得を内包するCALLシステムに刷新

―北海道―
北海道教育大学 札幌校

CALLシステムに特化した教室を、アクティブラーニング型の環境へと刷新した北海道教育大学札幌校。『CaLabo®LX』と『CaLabo®Online』を導入し、自宅などのオフキャンパスを含めた学びの支援にも取り組む構えだ。

アクティブラーニングの習得を内包するCALLシステムに刷新
北海道教育大学 札幌校

北海道教育大学 札幌校
〒002-8502 札幌市北区あいの里5条3丁目
明治19年(1886年)に設置された北海道師範学校を母体とする国立大学法人 北海道教育大学は、北海道における教員養成の拠点として歩んできた。全道に5つのキャンパスを構え、地域活性化の一翼を担っている。小中学校の教員を養成する札幌校は約1000名の学生が学ぶ。

グループワークやペアワークがやりづらい環境が課題に

 高い語学力と豊かな国際感覚、そして異文化理解力を身に付けた教員を国際社会に送り出すことを目指して、北海道教育大学が2015年度より実施しているグローバル教員養成プログラム。札幌校では1学年20人を定員として参加者を選考する。半期以上の海外留学や国際交流に関わるボランティアやインターンシップ、TOEIC®(国際コミュニケーション英語能力テスト)で730点の取得を目標とするカリキュラムが用意され、その前提として英語や異文化コミュニケーション、指導スキルの習得といった指定科目の履修も必須だ。こうした科目のすべてはCALL教室で行われる。

 従来、CALLシステムに特化した教室には『CaLabo®EX』が導入され、デスクトップ型のパソコンが約40台設置されていた。グローバル教員養成プログラムを履修する学生のほか、教育学部で英語を専修する学生も英会話や英語コミュニケーションの授業で利用してきた。ただ、パソコンに搭載されているWindows 8.1のサポートが2023年1月に終了することなどから、数年前より刷新を検討してきた。

 「学生たちが自学自習できるようeラーニング教材を複数入れるなどマルチな使い方で学習効果を高めてきました。一方で、教室の大きさの割にデスクトップ型パソコンの台数が多くなり、グループワークやペアワークがやりづらい環境になっていた点が課題にありました」と話すのは北海道教育大学札幌校の教授、志村昭暢先生。同校での英語教育を担い、CALLシステムの更新に中心的に携わってきた。

操作性など使い勝手は変わらず違和感なく移行できた

 刷新を契機に、変更したい点は大きく2つあった。一つはアクティブラーニング型の環境に変えること。パソコンの台数をあえて減らし、グループワークがしやすい4人掛けテーブルを配置した。什器やモニター、アノテーター機能付きのホワイトボードなど教室設備を充実させ、パソコン自体もBYOD(Bring Your Own Device)方式への移行を意識し、ノート型に変更。オフラインに限定したシステムにするべきか学内で議論はあったが、「稼働の安定性や利便性の高さなどを評価し、引き続き『CaLabo®シリーズ』を利用することに決めました」(志村先生)

 もう一つはオンライン授業にも対応できること。刷新時期の前後はコロナ禍が重なった。2020年に入学した学生は通学が叶わない時期が長く続き、Zoomなどを通じたオンラインに授業が急遽切り替わった。「CALL教室を離れた場所でも同じようなことができる設計にして、学びを支援し続ける環境が必要だと考えました」(志村先生)。2022年8月に発注仕様書を取りまとめ、選考結果として『CaLabo®LX』と『CaLabo®Online』の導入に至る。2023年度より従来のCALL教室の機能を兼ね備えたハイブリッドなPC教室に仕上げた。

 「操作性など使い勝手は変わらず、違和感なく移行できています。施行前に同じシステムを採用している道内の学校をいくつか見学させていただき、導入後の様子もイメージできました」(志村先生)

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講師卓でのモニタリングで学生側のパソコン操作を確認

 指導方法も変わったと志村先生は話す。「例えば英文のライティングの授業では、以前なら学生の机を個別に回って状況を理解し指導していましたが、今では講師卓で学生のパソコン上の操作を逐一モニタリングでき、例えば生成AIが利用されていないかも確認できます。一つのグループで画面を共有するといったディスカッションも進めやすくなり、授業内容に幅が広がっています」(志村先生)

 これまで志村先生が作成したオンデマンド用の講義動画は100本ほどに上る。これを学生が事前に視聴することで対面ではインタラクティブなディスカッションを中心にするなど、授業スタイルにメリハリを付けていきたいと志村先生は希望している。

 こうした動きを学生側も自然に受け入れている。「コロナ禍で不自由な学習環境を強いられた学生だけに、工夫して利用し学習効果を高めようとするマインドを感じます。英語を専攻する学生は、CALL教室での模擬授業といった科目もあり、学生自身が教師となった際に進めるであろうアクティブラーニングの授業習得にも間接的に役立っています」(志村先生)

 ICTの整備が進み、英語教育にも大学間連携による新たな動きが見られている。ほかの教育大学と共同で大学院博士課程の授業を行う計画が進んでいる。共通のシステムを導入していれば、海外の学生との交流も行いやすくなり、グローバル教員養成プログラムの拡充も期待されるところだ。

 同時にLMS(学習管理システム)の整備や拡張は将来に向けた課題だ。札幌校では独自に開発したプラットフォームなど複数が教員の裁量で並行して利用されている。「LMSの利便性をより多くの方が感じれば、統合に向けた機運が高まる」と志村先生は話す。将来の学校現場を担う学生が集う北海道教育大学だけにICT教育への熱意は高い。

教授<br>志村 昭暢 先生

教授
志村 昭暢 先生


※ご紹介させていただいた所属・役職は2024年3月1日現在のものです

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