公開日:2025/11/18

通信制限の不安を無くし学習効率向上を実現

―福岡県―
福岡南美容専門学校

福岡県久留米市にある福岡南美容専門学校は、無線LAN環境が整っておらず、動画などを使った授業の際には学生や講師がそれぞれ自身の通信回線に頼らなくてはならなかった。そこで2024年に「私立学校施設整備費補助金」を活用し、無線LAN環境を整備。整備前後で学生たちの学びはどのように変化したか話を聞いた。

福岡南美容専門学校

福岡南美容専門学校
〒830-0039
福岡県久留米市花畑1丁目1−1

美容科、理容科、トータルビューティー科、ヘアメイク科の4つのコースを設置する美容専門学校。美容師、理容師の国家資格をはじめ、美容に関わるさまざまな資格取得を積極的にサポートしている。

実技中心のカリキュラムに加え動画活用を進める

 福岡南美容専門学校は、美容科、理容科、トータルビューティー科、ヘアメイク科の4つの学科を有し、理美容系の専門知識と実技を学べる2年制の専門学校だ。福岡県南部の久留米市に所在し、福岡市中心部から電車で30分ほどという好立地に建つ。

 特色は資格取得に力を入れていること。国家資格である理容師の合格率は100%※、美容師についても、ほぼ100%の合格率※を誇っている。

 理容・美容などの技術を中心に学ぶ同校のカリキュラムは「実技」が中心だ。従来は動画などのデジタル教材を使用する機会はほとんどなかったため、結果的に校内の通信環境整備は後回しになっていた。

 当時の通信環境について、福岡南美容専門学校企画広報室の畳見祐太氏はこう振り返る。

 「無線LANの環境はあったものの、一般教室では利用できず、職員室などの限られた場所でしか接続できない状態でした」

 しかし近年、美容業界においても、技術の多様化により動画を活用した授業の需要が高まってきた。それにともない、講義におけるインターネットの活用も進んできて、徐々にインターネット環境の整備が課題として浮き彫りになってきた。

校内ネット環境の不備が学生・講師の負担と授業格差を生む

 「講義では学生のイメージやインスピレーションを広げるために、さまざまな画像を参照します。学生個人でも画像を集めていますが、それだけでは傾向が偏りがちになるため、講師が集めたものも講義では共有します」(畳見氏)

 画像の共有は、従来は講師が集めた画像を学生たちに見せる形で行われていた。雑誌や写真などであればその方法で十分ではあるが、インターネット上の豊富な情報を活用する場合は、学生各自の端末でアクセスする方が効率的に共有できる。ところが、教室に無線LAN環境がないため、学生は個人のスマートフォンでインターネットにアクセスしなければならなかった。

 「今の学生は、通信量に対し非常に敏感です。中には通信無制限プランを利用していない学生もいます。講義で画像や動画を共有すると『ギガが減る』ことになる。つまり通信量を大幅に消費するため、経済的な負担はもちろん、精神的なストレスをかけることにもつながっていました」(畳見氏)

 加えて、教室に無線LAN環境がないことで、外部講師を招いた際にも問題が顕在化した。講師によっては自前でモバイルルーターを持参するなどの対応を行っていたが、その場合の通信料は当然講師の負担になる。さらに、講師の対応にばらつきがあったことから、授業によってインターネット活用の度合いが、それぞれで異なる状況にもなっていた。

 通信環境が整備されていないことが、徐々に学生たちの学びにも大きく影響を及ぼすようになってきたのだ。そして、同校が整備を本格的に考えるきっかけが訪れる。

 「そうした中で、電子黒板の導入の話が持ち上がりました。電子黒板を活用するためには、校内の無線LAN環境を整備する必要があり、これまでの自前回線を使用するという課題と合わせて学内の通信環境整備が急務となりました」(畳見氏)

無線LAN環境により学習効率向上オンライン就活も可能に

 電子黒板とともに、授業でのインターネット活用を進めるために、2024年、福岡南美容専門学校は校内のネットワーク整備に踏み切った。校内に無線LAN環境を構築し、チエル社の『Tbridge®』を導入してネットワークの安定化に取り組んだ。どの教室からも授業などで一時的に通信量が増えても、容易にインターネットに接続できるようにしたのだ。さらに電子黒板の導入や授業での動画活用の結果、学生の学びに大きな変化をもたらした。

 「参考画像や動画の共有は学生個人のスマートフォンではなく、電子黒板を使って行うようになりました。また、シャンプーやヘアカットなどの実技授業の前には、動画を使って手順を確認するようになりました。さらに、実技の様子を録画して専用ウェブサイトで共有し、学生がいつでも自前の端末で振り返り学習に役立てられるようにしています」(畳見氏)

 結果として、学習効率は大幅に向上した。動画による事前確認と事後の振り返りが可能になったことで、学生の理解度が格段に前進したのだ。学生からも「手順がより明確に理解できる」「通信量を気にせず学習に集中できる」などと好評を得ている。

 また、外部講師も自分でモバイルルーターなどを準備する必要がなくなり、それぞれの講義におけるインターネット活用の差も小さくなった。さらに、学内に設置している共有パソコンの数を増やして外部講師が活用できるようにし、講義や授業のデジタル化を推し進めている。

 それらの変化は、さらに、学生の就職活動にも良い変化をもたらした。コロナ禍以降、美容業界でも就職活動の際に、オンライン説明会やオンライン面接を取り入れる企業が増加している。併せて、同校でも就職ガイダンスをオンラインで開催している。従来は、このようなオンラインを基本とした就職活動の際に、学生個人の通信回線に頼らざるを得なかったが、校内に無線LAN環境が整備された現在は、校内からも柔軟にオンライン説明会等に参加できるようになった。ここでもまた「通信量を気にせずに就職活動ができる」と学生から好評だ。

 「今後は、整備したインターネット環境を、いかに学習環境に活用していくのかが課題になる」と畳見氏は語る。アイデアはすでにいくつかあるというが、その中の一つが、同校の強みでもある国家資格取得に対するサポートだ。

 「すでに行っている動画活用は、そのまま実技試験対策としても活用することができます。今後は、筆記試験対策をデジタル化することも視野に入れています。筆記試験の結果をデータ化できれば、学生もより効果的な学習が可能になり、また講師も、より効率的に指導を行えるようになるでしょう」(畳見氏)

補助金活用で環境整備を実現
さらなる効率化を目指す

 校内のネットワーク環境を整備し、学習効率向上に成功した福岡南美容専門学校。しかし、校内全体の無線LAN環境を整備し、授業でアクセス数が増加しても問題なくインターネットに接続できる回線を確保するためには、一定のコスト負担が必要であり、その確保は容易ではない。同校にとっては、そのコストが課題の一つであった。そこで活用したのが、文部科学省が交付する「私立学校施設整備費補助金」だ。

 「かねてより取引のあった、チエルコミュニケーションブリッジから提案を受けて検討を進めた結果、この補助金が専門学校でも利用できることを知り、申請することを決めました。申請手続きは、チエルコミュニケーションブリッジのサポートを受けることができ、煩雑な手続きはほとんどありませんでした」(畳見氏)

 通信環境を整えた福岡南美容専門学校が次に目指しているのは、学校業務のデジタル化である。学校業務では、主に紙の書類を使っているが、これをペーパーレス化できれば、教職員にとっても負担軽減や業務の効率化を期待することができる。通信環境を整備したことは、学生の学びだけでなく、教員のワークスタイルも大きく変化するきっかけとなっていくだろう。

 このように、福岡南美容専門学校は国の補助金を活用し、ネットワーク整備に成功した。しかし一方で、校内に無線LAN環境が整備されていない専門学校も珍しくないのが現状だ。もちろんそこでは、学生たちが通信を自前で負担しなければならないケースも少なくはない。このような状況に対し、畳見氏は次のように見解を述べた。

 「専門学校が利用できる公的な補助金はそれほど多くありません。だからこそ、利用できそうな補助金があれば、すぐに申請する必要があるでしょう。補助金と聞くと、手続きが難しそうなどのイメージを持つ担当者もいらっしゃるかもしれません。ですが実際に申請してみると、想像していたほど難しいものではありませんでした。信頼できるパートナーと協力できればスムーズに進めることも可能です。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか」

 福岡南美容専門学校は補助金を活用することで負担を抑えつつ環境整備を実現し、学習効率や就職支援の質を大きく高めることができた。専門学校が抱える通信環境の課題は決して特別なものではない。補助金申請を前向きに検討することが、未来の教育の可能性を広げる第一歩になるだろう。

※「第51回 国家試験での合格率」

福岡南美容専門学校<br>企画広報室<br>畳見 祐太 氏

福岡南美容専門学校
企画広報室
畳見 祐太 氏

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