公開日:2010/10/14

システムの活用で、英語に触れる時間が増え、授業も充実!

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 国立大学法人岐阜大学は、LL教室の老朽化に伴い、2009年8月、学生用パソコン50台を配したCALLシステムにリニューアルし、『CaLabo EX』を導入した。導入から半年、全学部共通の英語の授業を中心に、幅広く活用している。システムを活用して授業を行っている、教育学部の巽徹准教授の『英語A2』を訪ねた。

 

ランダムにペアを変えることで、英語を繰り返し使う必然性が生まれる!

 教室に入るとまず、教室前方のスクリーンに映し出された英語の映像が目に飛び込んできた。巽先生は、毎回授業が始まるまでの間、イギリスのテレビ番組を流している。日本で放映されている番組の元祖版や逆に日本の番組をアレンジしてイギリスで放送された番組などを紹介し、番組中のクイズにクラス全員で挑戦することもあるという。これは学生にも好評で、授業も盛り上がるという。「テレビのCMもおもしろいんですよ。スーパーや日本車のCMを通じて、イギリス文化の特徴や日本とイギリスの違いなどが見えてきます。こういう一見余分に見えるところにこそ、興味が生まれたりするんですよね」と巽先生は語る。

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先生用のPC画面では、各者学生のPC画面をチェックできる。

 こうしてテレビ番組を見ながら思考が英語モードに入ったところで、授業がスタート。まずはスクリーンに写真が映し出され、それが何かを隣の席のパートナーと英語で話し合う。この日の写真はバッキンガム宮殿とロンドンの地下鉄の2点。「地下鉄undergroundは、アメリカではsubwayと呼ばれ、イギリスでは他にもトンネルの形からtubeとも呼ばれるんです」という巽先生の話に、学生たちは興味深そうに耳を傾ける。
 続いては、隣の席の人とペアを組んでのChat Time。2010年最初の授業だった今回のテーマは"What did you do during your winter holiday?"。学生たちは言いたいことが英語で表現できないことにもどかしさを感じつつも、Chatを楽しんでいるようだった。
数分後、巽先生の合図で全員がヘッドセットを装着し、『会話レッスン』の「ペア(ランダム)」モードによってペアが組まれた。各学生のモニタ画面にペア相手の名前が表示されると、学生たちからは歓声が上がり、さっそく"Hello!"と会話が始まった。
 巽先生は、普段から「ペア(ランダム)」モードをよく使う。それは、英語を繰り返し使う必然性を作るためだ。隣の席の人と一度話した同じトピックでも、相手を変えることで再び新鮮に楽しく会話を行うことができる。また、お互いが使う英語を参考にして表現の幅も広がってくる。そうした状況をボタンひとつで作り出せることに、魅力を感じているという。また、学生にとっても、次は誰と組むのかなというワクワク感もあり、授業が活性化するという利点もある。
 学生がChatしている間、巽先生は『巡回モニタ』機能で各ペアの音声を順番にモニタする。その際は、学生たちがどんなところで苦労しているかをその場で把握し、『インカム』機能でペアの会話に割り込んで個別にアドバイスすることが多い。そして、ペアレッスン後に全体に向けて、多かった間違いや正しい事例を紹介。今回は、「実家hometown」や「おみくじfortune slip」という単語が紹介された。

『ムービーテレコ』で自分の発音をチェック。音読学習の効果が倍増!

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 続いてPicture Tellingのコーナーへ移る。_x0003_スクリーンに映し出された、数枚の「身近なもの」の写真のうち、1枚についてペアの一人が英語で説明し、もう一人がそれが何かを当てる、というクイズ形式による学習だ。途中でペアや写真の種類を変え、回答者には写真が見えないようにするなど、活動の難易度も上げていく。
 学生たちはこれまで英語を習ってきたが、特に高校ではそれを使って話すことがほとんどなかったという。英語でどう表現したらいいか「知っているけれど、使ったことがない・使えない」。巽先生は、今まで蓄積してきたものを使って、自分の言葉で相手とコミュニケーションする場面を多く設けたいと考えている。使わないと埋もれてしまう単語や表現も、使うことで改めてインプットになる。
 こうした活動の後、ライティングに移る。スクリーン上の数枚の写真から選んだ1枚について、配布された用紙に英文で描写する。そして自分の書いた英文をパートナーと交換し、相手が理解できればOKというものだ。スピーキングとライティングを組み合わせて学習するというのもポイントのようだ。

 Picture Tellingのほか、巽先生の授業では「音読」も取り入れている。まずは身近なテーマについて書かれた英文を配布し、内容を理解してから、音読へ進む。このときに活用するのが『ムービーテレコ』の「録音・再生」機能だ。学生たちは個々のパソコンを使って自分の音声を録音し、その場で発音をチェックする。そうして何度も音読練習を重ね、ベストのパフォーマンスを『ファイル配布・回収』機能を使って先生に提出する。
 これまで自分の英語の発音を聞いたことがない学生がほとんどなので、それをチェックできることに新鮮さを感じているのが現状だ。今後は、「自分の発音をもっと良くするための取り組み」に発展していくことを、巽先生は望んでいる。
 『CaLabo EX』を導入する前は、携帯電話の録音機能を使って同じような授業をしていたという。しかし、1クラス分の音声データを確認・管理したり、教室を巡回しつつ学生一人ひとりにアドバイスをしたりするのは至難の業だった。それが、『CaLabo EX』の導入によって、そうした一連の作業を簡単な操作でできるようになり、授業の効率が上がった。先生自身の負担も減り、学生自身が活動する時間が増えたという。

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Picture Tellingのようす。写真が見えない相手に伝えるのは上級レベル。

 今回の授業の最後にも、この『ムービーテレコ』の「録音・再生」機能を使った学習が行われた。冬休みの宿題だった"How to save our world!"に、イラストを添えた英作文を音読した。次回の授業で予定している発表の練習のためだ。一人ひとりの発表はビデオに録画する。
 「録画・録音するというタスクが、モチベーションにつながると思います。大学のセキュリティの関係で、現在はデータを教室外に持ち出すことはできませんが、今後は、教材を持ち帰らせ、継続した学習ができればと思っています。学生も意欲的ですし、授業外でも率先して練習すると思います」と巽先生。
 『CaLabo EX』を導入して半年、巽先生をはじめとする岐阜大学の先生方はそのメリットを体感しているようだ。今後の幅広い活用と効果が期待される。

 

巽先生のCALL教室活用法

『CaLabo EX』で効率が上がり、より内容の濃い授業が実現!

 CALLシステムや『CaLabo EX』を導入して一番変わったことは、やはり「効率」です。授業の骨組みや目的は変わらないのですが、同じことが手間をかけずにできるようになりました。例えば、今日の授業と同じ内容をこのシステムを使わずに行なえば、ランダムにペアを組むだけでも、席を移動したり人数を調整したりと、英語を使っていない時間が増えてしまいます。効率的に時間を使えるようになった結果、授業の内容も濃くなったと思います。
 また、教材を提示するときには、スクリーンと学生のモニタ画面とを使い分けています。スクリーンを使えばクラスの一体感が生まれますし、練習するときには個々のほうが集中できます。目的によって臨機応変に切り替えることで、授業にメリハリがつきます。
 学生からのアンケートの回答でも、「英語を話す機会が増えてよかった」という声が多いです。特にChat Timeは、「使っているのは今のところ中学レベルの英語だけど、話すのは楽しい」と好評です。
 「CALLシステム」と聞くと、「CALLだけを使って授業を行うのは無理」と敬遠してしまう先生もいると思います。でも、授業中にずっと使うというものではないと思うんです。あくまでも学習指導の道具としてCALLがある。授業をより充実させるために、CALLを活用して組み込んでいくべきだと思います。今後は機能の理解をさらに深め、より効果的に活用していきたいと思います。

教育学部准教授 巽 徹 先生

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