公開日:2023/4/10

学校現場が求める課題の解消に効率的かつピンポイントに対応

教育委員会訪問

―山梨県―
甲府市教育委員会

経済的・人的リソースが限られる地方都市で実効性の高い学校ICTを迅速に進めるには――。甲府市教育委員会は、学校現場の声を丁寧に拾いつつ、子供や民間事業者も巻き込んだ効率的な取り組みを実践している。GIGAスクール体制の3年間の成果と次の目標を聞いた。

学校現場が求める課題の解消に効率的かつピンポイントに対応
甲府市教育委員会

甲府市教育委員会
〒400-8585
山梨県甲府市丸の内1-18-1
TEL: 055-223-7321

Google の研修で教員と管理職のスキル磨く

 甲府市は山梨県のほぼ中央に位置し人口は約20万人、富士山の雄大な姿がすぐそこに見える街だ。小中学校は36校、児童生徒は約1万1000人、教職員は約1000人であり、現在はGIGAスクールで Google Workspace for Education と Chromebook™ を利用している。

 GIGAスクール構想において、1人1台端末整備を行い活用を進めるにあたって甲府市は「自治体の限られた財政と人的パワーを最大限に生かすにはどのように進めていけばいいか」と悩んだ。活用の第一歩として進めたのが教職員のICTスキルアップだ。

 「Google 社が提供するプログラムを使い、全国の自治体のトレンドやGoogle の取り組みなどを知るとともに、教職員のICTスキル向上を目指す研修『Kickstart Program』を最大限活用しました」(甲府市教育委員会 教育部 教育総室 学校教育課 情報化推進係 教育指導係 指導主事の山主公彦氏)

 また、管理職向け研修も同時に実施し、市内36校の校長先生全員が参加した。「校長先生のリーダーシップや実行力は、学校を大きく動かす力を持っています」(甲府市教育委員会 学校教育課 情報化推進担当の鈴木昇氏)

全学校を対象に定期的にアセスメントを実施

 甲府市教育委員会は市役所内にあり、各学校のコンピュータ教室や先生の活動状況の把握が難しい。2025年度のデジタル教科書の本格運用を控え、校内通信ネットワーク拡充もまったなしだ。

 甲府市では学校ICT化を効率的に進めるため、全学校の管理職とICT化に関わる教員を対象に4カ月に一度、GIGAスクールアセスメントを行っている。2022年12月に実施した定期アセスメントでは、端末の破損時や管理・機器運用方法には満足との回答が目立った。一方で、アクセスポイントの設置、情報モラルへの取り組み、インターネットの接続スピードには改善希望との意見が多かった。

 「校内通信ネットワーク問題では、学校規模の大きい上位10校に対して校内からインターネットに直接アクセスする『ローカルブレイクアウト』を施し、データセンターへのアクセス集中リスクの軽減を図りました。今後も、学校現場が求める課題解消について民間事業者などとも積極的に連携しながら対応していきます」(甲府市教育委員会 学校教育課 情報化推進係 主任の杵川義弘氏)

 「ダッシュボード」をベースにした教育データの収集・活用にも力を入れている。教育現場におけるダッシュボードとは、児童生徒の出欠、健康状態、学習の習熟度、評価といった各種データを集約、分析結果をグラフなどにして分かりやすく表示する画面や機能を指す。

 「市内ではICTの活用度合いにおいて地域差・学校差・教員差が出始めています。ダッシュボードを使って校内通信ネットワーク接続時間など学校ICT化に関するデータを視覚化することで、PCの利用時間の少ないクラスの先生には学校と教育委員会が連携してサポート担当者を派遣するなど、課題について迅速かつピンポイントに対処することができるようになるでしょう。現在、一部の学校に協力いただき実証実験を行っています」(山主氏)

活用事例集のスライド作成でツールの使いこなしに導く

ジュニアICTリーダーの児童生徒は、普段の授業で先生をサポートするなど学校現場にも良い影響を
            もたらしている。
ジュニアICTリーダーの児童生徒は、普段の授業で先生をサポートするなど学校現場にも良い影響をもたらしている。

 2023年度以降さらに注力していきたい分野として、甲府市が教員研修やアセスメントとともに着目しているのが「教師向けICT活用ガイド・活用場面事例集」と「児童生徒のICT研修」だ。

 前者では、2021年度は教育委員会が窓口になって活用事例を募集し、編集した上で発行した。「2022年度は Google スライド™ を共有し、それぞれの担当者に入力していただきました。Google スライドを共有することで他校の Google スライドのデザインを見て、『写真や図表を入れてもっと見やすくしよう』と工夫するなどツールの使いこなしにもつながっています」(杵川氏)

 後者の児童生徒のICT研修では、子供たちは検索機能を使ってレクリエーションを楽しんだり事前に作成した自己紹介スライドを発表したりした。

 2022年12月には同じような取り組みを進めている大分県玖珠町など全国の10の自治体の児童生徒と『第1回全国ジュニア・ICT・リーダーサミット』を開催し、交流を深めた(チエルマガジン2022年春夏号掲載。記事はこちら)。「先生方から『研修を受けた児童がクラスでICTのお手伝いをしてくれます』といった話を聞くと、子供自身のリテラシー向上だけでなく、学校現場にも良い影響をもたらしていると手ごたえを感じています」(山主氏)。学校現場にとどまらず、子供や民間事業者も巻き込んだ甲府市の教育ICT化は、経済的・人的なリソースが限られている地方都市のGIGAスクール推進体制の一つのロールモデルとして注目していきたい。

*Chromebook、Google スライド は、Google LLC の商標です。

教育部 教育総室 学校教育課<br>情報化推進係 教育指導係<br>指導主事<br>山主 公彦 氏

教育部 教育総室 学校教育課
情報化推進係 教育指導係
指導主事
山主 公彦 氏

学校教育課<br>情報化推進係<br>主任<br>杵川 義弘 氏

学校教育課
情報化推進係
主任
杵川 義弘 氏

学校教育課<br>情報化推進担当<br> 鈴木 昇 氏

学校教育課
情報化推進担当
鈴木 昇 氏

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