公開日:2008/9/22
子どもたちのわくわくする気持ちを刺激
子どもたちのわくわくする気持ちを刺激
『フリーぺア』や『ムービーテレコ』を活かして自主的な学習意欲を引き出す
このところ中学校にも本格的なCALL教室が設けられはじめています。子どもらしさを多く残した中学生は、ピュアな好奇心も手伝って、CALL教室での授業を心から楽しんでいるようです。そんな中学生の英語学習を九州からレポートします。
席の離れた友達と大きな声で対話練習
- CALL教室での3年生の授業風景
今回訪れたのは、福岡教育大学附属久留米中学校のCALL教室。新谷祥生教諭による3年生の授業を参観させていただいた。まずは、その授業の模様から……
6 時間目、生徒が揃ってチャイムが鳴り終わると、英語で歌うことから授業はスタートした。新谷先生は、生徒たちが楽しみながら英語に親しめるよう、そして ウォーミングアップの意味も含めて、授業の最初に歌う時間を設けている。数週間から1か月ごとに新しい曲を選んで、生徒に歌わせている。
この日の曲は、ちょうど12月だったこともあり、曲はマライア・キャリーのヒット曲「恋人たちのクリスマス All I Want For Christmas Is You」。最初は『Soft teleco』を使って歌詞の発音練習だ。生徒はヘッドセットをつけ、『Soft teleco』でマライアの歌唱を聴き、発音やイントネーションを真似ながら5分ほどトレーニング。つづいて、先生の指示に従って席を立ち、何人かずつグ ループになって合唱した。教室がクリスマスの歌声に包まれ、リズムにあわせて思わず踊り出しそうになる生徒もいて微笑ましい。
歌でウォーミングアップの後は、対話練習。この日のメニューは、教科書で学んだフレーズを応用し、順序立てて理由を説明しながら対話するという学習だ。ホワイトボードには、その基本パターンが示してある。
What do you want for a Christmas present?
I want _______.
There are two reasons for that.
One is that I can _______.
The other is that I can _______.
So,I really want _______.
この対話について先生の説明があった後、生徒は1分間の考える時間を与えられ、それが済むとヘッドセットをつけた。先生は、『CaLabo EX』の「フリーペア」機能を用いて、生徒のペアを決める。自分のペアが決まると、教室のあちこちから「わー」とか「おー」といったどよめきの声があが る。生徒たちは、今日は誰が自分のペアになるか、毎回楽しみにしているのだ。
そして、ヘッドセットとマイクを通しての対話練習が始ま る。生徒はみな積極的だ。席を隔てた相手と大きな声で話している。その間、先生は生徒たちがどんな内容で対話しているかヘッドセットでモニターする。5分 ほど過ぎたところで、この基本対話をよりスムーズな会話にするためのアドバイスがあり、再び、生徒どうしの対話練習。授業の最後には、3人の生徒が指名さ れて、先生と英語で対話した。ちなみに当てられた生徒がクリスマスにほしいと言ったのは、自転車、デジタルオーディオプレーヤー、野球のグローブだった。
次は誰とペアになる? わくわくした気持ちで授業に
- 楽しそうに学習する生徒
この授業でおわかりのように、新谷先生は『Soft teleco』や「フリーペア」機能を使って、生徒の遊び心やわくわくする気持ちをうまく学習意欲に結びつけている。
「生徒はCALL教室にすごく来たがります。このシステムを使いたいと思っている子が非常に多い。なかでも子どもたちの声でいちばんよく聞かれるのは、フリー ペアレッスンで誰とペアになるかということですね。何回やっても、子どもたちはこれを非常に喜びます。いろんなクラスメートと対話練習できるし、次は誰と ペアになるんだろうという、わくわくした気持ちで授業に臨めるようです。自律的に英語学習に取り組ませる動機付けと して、とても有効な機能だと思います」
3か月前の研究授業では、新谷先生は「英語のラジオ番組に挑戦」という内容の授業を公開した。 生徒が仮想のDJとリスナーに分かれて対話をするという学習活動だ。対話だけだったらラジオらしくないので、DJ役の生徒は時刻のお知らせや天気予報な ど、教科書で習った定型的なフレーズを交えながら、今日はスペシャルゲストが電話でつながっているという設定でリスナー役と簡単な対話をした。このとき も、新谷先生は「フリーペアレッスン」をうまく授業に取り入れた。
- 生徒の書いた英語字幕を表示中のムービーテレコ画面
……というように新谷先生は、子どもの想像力や創造性を刺激して、自主的な学習意欲を引き出す授業を次 々 に考案し実践している。それは、音声的な学習に留まらない。
「最 近やってみたのは、”映画の字幕スーパーづくりに挑戦”という授業です。日本の昔話”金太郎”の一部を取り出して、その日本語音声を英語に直していくとい う学習です。金太郎を外国の人にわかるように説明するとしたら、どんな英語表現になるか考えて、アニメーションに字幕スーパーを入れていくのです。生徒に は事前に日本語の金太郎を「ムービーテレコ」で視聴させ、日本語を英語に直したテキストを「ムービーテレコ」の機能を使って入力させました。そして、班の 友達と英文を読み合って、お互いの発想のよいところを意見交換しました。」
生徒個々のニーズに応じた学習ができるようになった
- 新谷祥生教諭
福岡教育大学附属久留米中学校では、全校生徒が英語検定に挑戦している。3年生ぐらいになると、3級を持っていない子は3 級を、3級を持っている子は準2級を、準2級を持っている子は2級をというように、生徒によって受検するコースが異なる。こうなると、普通教室でのリスニ ングの指導はむずかしい。そこで、新谷先生はCALL教室の『Soft teleco』に3級、準2級、2級それぞれの問題を入れて、生徒ごとリスニングの練習をさせた。3日連続でこの学習をさせたところ、効果は満足のいくも のだったと新谷先生は評価している。
インタビューの最後に、『CaLabo EX』を導入してから授業がどのように変わったかをお聞きした。
「い ちばん感じるのは音声面での指導です。あらかじめ『Soft teleco』のサーバに音声を入れておけば、生徒たちは教科書を見ながら、自分が不得意な部分や、自分がまだスムーズに読めないところを、自分の時間を 使いながら練習できますね。生徒個々のニーズに応じた学習ができるようになりました。従来の授業では、私が1人の生徒に呼ばれたらそこに行って指導はでき ますが、あとの生徒たちはその間待つか、できないまま通過していくかになります」
では、中学校にもCALL教室は必要だとお考えですか?
「普 通教室でも工夫すればペアやグループでの対話練習ができないことはありません。でもネイティブの発音を聞くというような学習になると、ALTがいるときだ けになりますね。その点、『CaLabo EX』のようなCALLシステムがあれば、毎日ALTがいるような学習環境をつくることもできそうです。そのCALLシステムが中学校の段階であるという のは、英語学習にとって理想的ではないかなと思います」
新谷祥生先生