公開日:2013/9/30

校内LANでフラッシュ型教材を共有し、情報交換を密に実施。

岡山県笠岡市では、今年5月にチエルのフラッシュ型教材全シリーズを、市内の全小学校に一斉導入した。市立大井小学校では、それ以前からe-Teachersを利用してフラッシュ型教材を活用してきたが、市販教材の一斉導入でその活用がさらに活性化している。

笠岡市立大井小学校
全校生徒約280 名。瀬戸内海に面した風光明媚な笠岡市の中心部にある。全教室に実物投影機・プロジェクタ・マグネットスクリーンを常設し、今年6月、50 型の大型テレビも導入。
〒714- 0071
岡山県笠岡市東大戸410 番地の2
TEL 0865- 62-2746
FAX 0865- 62- 4096
URL http://ooi-es.kasaoka-ed.jp/

おとなしい子に大きな声を出させてあげたい

 「私が受け持っているクラスには、おとなしい子が数名います。保護者も心配するくらい、声が小さい。そこで、フラッシュ型教材を使って大きな声を出させようと工夫しています」

 さっそく重政昌子先生が担任する4年生算数の授業を訪ねたが、教室内は猛暑を吹き飛ばすような活気で満ちあふれていた。この日行われたのは、算数の授業。「対角線の特徴を使って四角形を書こう」という単元だ。

 まずは、「交わる直線が垂直かどうか」を答えるフラッシュで、対角線の特徴を復習。○か×をジェスチャー付きで答えるのだが、その声量がとにかくすごい。教室中に子どもたちの元気な声が響きわたっただけでなく、その声は隣の校舎にまでとどろいていた。3年生担任の道廣久美先生も、「重政先生のクラスがフラッシュを始めるとすぐわかる。かなり離れてるのに、元気な声が聞こえてくるんです」と笑顔で話してくれた。

 それほどの声量を子どもたちが出せるのも、重政先生が絶妙な声かけをしているからだ。フラッシュを1問答えるたびに、重政先生も子どもたちに負けない大きな声で、合いの手を入れるのだ。

 「さぁ2回戦始めますよ! 背筋ピン! ヨーイドン!」「オッケー!」「ひっかからないで!」「窓ガラス割れてもいいから大きな声で!」などなど、重政先生が合いの手を入れるたびに、子どもたちの目はますます輝き、ボリュームは増していった。声が小さくておとなしい子など、どこにも見当たらないほど、全員が大きな声で元気よく答えていた。

 「フラッシュを解かせながら、声が出にくい子は重点的に見守ります。その子の隣の子に、後から『答えられてた?』『声出てた?』とこっそり聞くこともありますね。問題を解かせながら、子どもの様子をつぶさに観察できるのも、フラッシュの良いところです」

学習意欲が向上し自信を深めている

 「フラッシュ型教材は、授業に限らず、毎朝取り組んでいます。日直の子が操作して、子どもだけで実施します。私を真似て、合いの手も入れるんですよ(笑)」

 子どもたちは、フラッシュが大好き。特にランダム出題を好むという。

 「同じ問題でも、ランダム表示にするとドキドキするし、新鮮味があるんでしょうね。子どもはフラッシュで、”挑戦”したがっています。もっと難しい問題を解きたい! と学習意欲が高まっているのを感じます」

 特に、チエルの市販フラッシュは、子どもたちの学習意欲を伸ばしやすい特徴があると、重政先生は言う。

 「私はチエルの製品版を使うことが多いのですが、難易度を調節できるのがいいですね。子どもたちの様子を見ながら、少しずつ難易度を上げていけます。おかげで、勉強が苦手な子どもも、自信を持って取り組めるようになりました」

 また、『小学校のフラッシュ 基礎・基本』は、子どもの理解を助けるとも指摘する。

 「ビジュアル面が充実しているので、子どもも視覚的に理解できます。たとえば理科で習った「直列とへい列」も、『小学校のフラッシュ 基礎・基本』のおかげで、子どももすっきり理解できました。どんなビジュアルとともに出題すればわかりやすいか、考えて作られてあるのが製品版の良さですね」

全員が参加できるように当て方を工夫

 6年生を担任する篠原孝昭先生も、1年ほど前からeTeachersからフラッシュをダウンロードし、主に授業の冒頭で使っているという。
 「フラッシュを使うと、クラスに活気が出ます。授業のいいスタートを切ることができます」

 この日の社会科の授業も、『小学校のフラッシュ 基礎・基本』でスタートした。歴史上の人物名が表示され、その人物と関わりの深い事柄を選んで答えるフラッシュだ。たとえば「清少納言」という人物名の下に、「(右)源氏物語」「(左)枕草子」と二つの事柄が表示される。篠原先生は、まず全員で答えさせた。右手か左手か、正解の方の手を挙げながら答えるのだ。

 続いて、年号問題のフラッシュに移ったが、今度は班対抗。各班一人ずつ起立し、順番に答えていった。

 「全員が参加できるように、指名方法や当て方を工夫しています。全員で答えるだけでなく、班ごと・列ごとなどで答えるようにしています」

 その後、今度は男子だけ、続いて女子だけで答えさせたが、まだ習っていない時代の問題が出てくると、篠原先生は「これは予習問題なので、調べてもいいですよ」と指示していた。既習事項の復習だけでなく、予習もフラッシュで行うようだ。

 「eTeachers からダウンロードしたフラッシュ型教材も使っていますが、歴史問題のフラッシュはまだ習っていない人物や事柄が出てくることもあります。その場合は、教科書や資料集で調べたり、教え合ってもいいよと声をかけ、ゆっくりと解かせています」

授業の冒頭・中盤・最後でフラッシュを使い分ける

 数年前からeTeachers からフラッシュをダウンロードして使っているという道廣久美先生は、目的によってフラッシュをさまざまな場面で使い分けるように心がけているという。

 「授業の冒頭で復習目的で使うことが多いですが、授業の中盤や終盤で使うこともあります。授業の中盤では、本時に行った学習活動の振り返りが目的。たとえば国語の授業で、いくつかの熟語を提示してそれぞれの多義語を調べる学習活動をした場合、時間内にすべての多義語を調べきれない子どももいるので、フラッシュで答え合わせと確認を行い、次の学習活動につなげていきます。授業内の区切り的な使い方ですね」

 この日の算数の授業でも、授業の中盤でフラッシュを活用。本時の目あてである「あまりのあるわり算」の練習問題に取り組む前に、フラッシュで「あまりの出ないわり算」を復習した。

 「フラッシュで復習して頭を慣らしてから、本時の課題に取り組むと、目に見えて正解率が上がるのです。『小学校のフラッシュ 基礎・基本』は、クリック一つで復習問題にすぐ取り組めるのがいいですね。自作フラッシュではこうはいきません」

 そして授業の終盤で使う場合は、チャレンジ問題に挑戦したり、少しレベルの高い問題にフラッシュで取り組ませるという。本時の学びが定着しているかを確認し、応用できるかどうかを試すとともに、子どもの挑戦心を刺激して学習意欲を向上させ、自主学習の目あてを持たせるねらいだ。

一人ずつ答える機会を作って全員に自信を持たせたい

 この日の授業では、日直の子どもがパソコンを操作し、問題を出していた。

 「初めて取り組むフラッシュは私が操作して出題しますが、簡単な問題は子どもに任せています。子どもたちはフラッシュが大好き。昔は紙のフラッシュカードを使っていましたが、フラッシュ型教材では子どもたちのノリが全然違います。自動表示もできるので、テンポよく問題を解いていける。なにより、子どもの学習意欲が向上します」

 意欲的に、繰り返し練習することで、基礎・基本が定着しているという。

 「都道府県名や九九などは、フラッシュで何度も練習したおかげで定着しました」

 全員がしっかり学べるように、答えさせ方も工夫しているという。

 「聞いているだけの子どもがいないように、一人ずつ答える機会を設けることも心がけています。自分も答えられた! という自信を、みんなに持たせたいのです」

 勉強が苦手な子は、いきなり指名するのではなく、まずは全員で回答して慣れてきた頃合いを見計らい、当てるようにしているのだ。

eTeachersからダウンロードしたフラッシュを校内LANで共有

 チエルの製品版が導入される前から、フラッシュ型教材を多くの先生方が活用していたという大井小学校。その背景には、先生同士の教材の共有により、情報交換を進めてきたことにある。

 「若い先生もeTeachersにどんどん登録し、ダウンロードして使っています。eTeachersのランキング上位のフラッシュは、だいたいダウンロードしましたね。そのまま使うこともあれば、自分なりにアレンジして使うこともあります」と重政先生は話す。

 そして授業で使ったフラッシュは、校内LAN上の共有フォルダにストック。学年ごと教科ごとなどでフォルダ分けし、他の先生方がここから選んで使えるようにしているという。

 篠原先生は「違う学年を担当するようになっても、共有フォルダからフラッシュを探して使えばいいので、とても楽。本校の貴重な共有財産です」と笑みを浮かべる。

 大井小学校では、教材を共有する仕組みだけでなく、先生同士の情報交換も盛んだという。学校全体でフラッシュを活用し、子どもたちを伸ばそうとする共通意識が高まっているのだ。

フラッシュをもっと使って子どもたちを伸ばしてあげたい

 最後に、今後の展望をうかがった。

 道廣先生が「『小学校のフラッシュ基礎・基本』にひと通り目を通しました。どの単元でどう使おうかと、今計画を練っているところです」と述べれば、重政先生はこう続く。「せっかくチエルの製品版全シリーズを導入していただいたので、授業で積極的に使っていきたいと思います。ただ、製品版だけを使うのではなく、自分でフラッシュを作るのも大事かなと。自分で作ることで製品版の良さもわかりますし、クラスの子どもたちに身近な教材を使ってあげたいとも考えています」

 たとえば、子どもたちが育てている花や種の写真を撮り、その画像で理科のフラッシュを作ってみたいとか。子どもたちは親近感がわくし、身近なものから学ぶ姿勢も身につくからだ。

 校内研修を担当している篠原先生は、フラッシュの活用をもっと広げていきたいと語る。

 「すべての先生方が、毎日の授業でフラッシュを効果的に使えるようになってもらいたい。近々フラッシュの校内研を開催する予定です」

 eTeachersからダウンロードし、自作もし、製品版も活用する大井小学校。先生方一人ひとりが意欲的にフラッシュを活用し、先生同士で教材共有や情報交換をして高め合っているからこそ、その効果を得られている。

校長室にいても子どもたちの元気な声が聞こえてくる
妹尾和正 校長

 基礎・基本の知識を短い時間で定着させることができるフラッシュ型教材は、学力向上に役立ちます。繰り返し練習することで、力がついてきていると感じています。

 子どもたちを活発にする効果もありますね。校長室にいても、あちこちの教室からフラッシュに取り組む子どもたちの元気な声が聞こえてくると、学校が活性化していると感じます。今後も校内研などでフラッシュをさらに普及させ、活用を促進したいですね。

4年生算数・対角線の特徴
『小学校のフラッシュ 基礎・基本』で今日の学びに関係する既習事項を練習(約10 分)

①交わる直線が垂直かどうか。○か×かジェスチャー付きで答える。まずは全員起立して、一斉に答える。
② 同じ問題をランダム表示で出題。隣同士でジャンケンし、まず勝った方のみ答える。続いて、負けた方が答える。
③図形の名前を答えるフラッシュ。まず全員で一斉に答える。
④同じ問題を、列ごとに答える。
⑤ 同じ問題を、ランダム表示で出題。隣同士でジャンケンし、まず勝った方から、次に負けた方が答える。

6年生社会・歴史
『小学校のフラッシュ 基礎基本』で復習(約10 分)

① 歴史上の人物に関係のある事柄を二択から選ぶフラッシュ。まずは全員で答える。右手か左手を上げながら答える。
② 年号問題のフラッシュを、班対抗で答える。各班一人ずつ代表者が、順番に立って答える。
③次は男子だけで答える。続いて女子だけで答える。
④最後に全員で答える。

3年生算数・わり算
授業の中盤に『小学校のフラッシュ 基礎・基本』で復習(約10 分)

① 本時の目あてである「あまりのあるわり算」の練習問題に取り組む前に、フラッシュでおさらい。あまりの出ない割り算問題に取り組む。フラッシュは日直が操作を担当。
②まずは男子だけ、続いて女子だけ。
③次に全員で一斉に答える
④一人ずつ順番に答えていく。
⑤最後に全員で答える。

フラッシュ製品版全シリーズを市内全校に一斉導入した理由は…
笠岡市教育委員会 学校教育課・統括 髙橋 伸明先生

 今年5月に、市内の全小学校にチエルのフラッシュ型教材全シリーズを一斉導入しました。「授業で使おうと思ったときに、この単元のフラッシュがなかったという事態は避けたい。どの教科どの単元でも、日常的にフラッシュを使って学習できる環境を整えたい」と、市の担当課を説得しました。

 フラッシュは基礎・基本の知識の定着や学力向上に効果がありますが、「大きな声を出す」場面を意図的に作れる良さもあります。実は笠岡市は島が多く、島の小規模な学校では、教師と子どもがマンツーマンに近い指導を行っています。小さな声でも聞こえる至近距離で授業を行っているので、大きな声を出す場面がありません。そこで、フラッシュで大きな声を出す機会を設けています。

 今後は大井小の成功例を、市内の他の小学校に広めていきたい。「フラッシュが入ったので使ってみたいけど、まだよくわからない」という先生方の声も聞こえてきていますので、例えば市内の情報教育部会の研修でフラッシュ型教材活用の研修に取り組む予定です。せっかく市内全校に導入したのですから、もっと普及させ、もっと効果を上げていきたいと思います。

4年B組担任<br>重政 昌子 先生

4年B組担任
重政 昌子 先生

3年A組担任<br>道廣 久美 先生

3年A組担任
道廣 久美 先生

6年B組担任<br>篠原 孝昭 先生

6年B組担任
篠原 孝昭 先生

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