フラッシュ型教材活用セミナー in 東京

 2010年10月2日、AP西新宿にて「フラッシュ型教材活用セミナー」が開催されました。体育祭など秋行事と重なる学校が多い中、小学校の先生方を中心にたくさんの方が参加され、最後まで真剣なまなざしで聞き入っていました。

趣旨説明

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 堀田龍也先生(玉川大学教職大学院・教授)による趣旨説明で、まずはフラッシュ型教材を体験。
 「帯分数を仮分数になおしましょう」という指示の後、表示される分数が連続して変わっていきます。最初は仮分数に直すのも簡単ですが、だんだん難しくなるため5問目になると全員の声が揃いません。もう一度同じスライドが示され、今度は答える声がきれいに揃いました。
 たった5問のスライドですが、「1回目よりも2回P002.JPG目のほうが答えやすい」「毎日行うことで、知識が定着する」ということに参加者は気づいたようでした。

 

 続いて、県名が書いてあるフラッシュ型教材を体験します。「みんなで一緒に読みましょう」の発問に、参加者は大きな声で県名を読み上げます。次に「県庁所在地を言いましょう」「名物を言いましょう」と指示が変化。同じスライドを使っても、指示の仕方、発問のパターンや順番を変えることで難易度が変化することにも参加者は気づいたようです。
 「フラッシュ型教材は単純だけど奥が深いんです」という堀田先生の言葉に、参加者は「なるほど!」と言わんばかりに皆うなずいていました。
 続いて再び土井先生。こちらも「算数」だが、内容は角度を答えるというもの。注目は、やはり発問の変化。「角の大きさは何度ですか。大きな声で読みましょう」と言ってシンプルに角度の大きさを読ませた後「90°よりも『大きい』か『小さい』かを答えましょう」という発問に。提示している問題は同じだが、発問が変わると難易度も変わる。

模擬授業?

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 その後、割石隆浩先生(北海道札幌市立新琴似緑小学校)と此川美奈代先生(富山県滑川市立西部小学校)による算数、社会、国語のフラッシュ型教材を活用した模擬授業を体験します。
 関東の都道府県名を地図で確認しながら答えるものや、ローマ字の読み方、最小公倍数や分数の約分など、基本的なことを確認するようなシンプルな内容ばかり。フラッシュ型教材がどんな教科においても活用できるということ、同じ問題でも先生が発問を変えることによって、より集中して取り組めることを実感しました。

教材作成・活用体験演習

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 模擬授業でフラッシュ型教材のイメージが広がったところで、高橋純先生(富山大学人間発達科学部・准教授)による「フラッシュ型教材作成・活用体験演習」です。
 ここでは、実際の教材作りに挑戦します。四字熟語やかけ算九九、歴史上のできごとなど、短い時間でしたが、グループごとにいろいろな教科の教材ができあがりました。グループでさまざまなアイデアを出しあい、教材を作成することで、フラッシュ型教材の具体的な活用についてイメージやポイントがつかめたようでした。P005.JPG

eTeachersの紹介

 「対談:フラッシュ型教材ここからはじめる」では、フラッシュ型教材活用実践プロジェクトの事務局・チエル株式会社の三好亜理紗からフラッシュ型教材を無料でダウンロードできるサイト「eTeachers」の紹介が行われました。会員登録(無料)をすると、自由に教材を検索したり、学年や教科ごとにダウンロードしたりできることなどの特長が紹介されました。
 高橋先生からは、ダウンロードした教材は、コピーしてスライドを増やしたり、文字や数字を書き換えたりすることによって色々とアレンジできるという活用のポイントが示されました。

模擬授業?

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 「じっくり模擬授業4実践」では、教科の基礎基本のためのフラッシュ型教材や、食育、小学校英語のフラッシュ型教材を活用した模擬授業を体験します。
 笠原晶子先生(群馬県前橋市立桂萱東小学校)は、『フラッシュ基礎・基本』の算数の教材を使って、真分数・仮分数の定義を確認し、提示された分数がどちらか答えさせます。帯分数の確認も加わり、提示された分数が1より大きいか小さいか、仮分数を帯分数に、帯分数を仮分数に直す練習を徐々にスピードアップしながら確認します。P007.JPG
 また、理科の「消化のはたらき」の教材を使って、消化管のはたらきや位置を確認した後に、先生から出題される「消化のはたらき○×クイズ」でその内容を再確認するなど、ただ確認するのではなく、楽しく知識を定着させるための工夫が随所に見られました。
 『フラッシュ食育』を使っての模擬授業は、石井一二三先生(青森県八戸市立根城小学校)。日本の行事とその行事にまつわる料理を確認した後、かるたゲームにチャレンジ。対抗戦にして参加者のやる気を高めることで、会場が盛り上がります。P008.JPG少しゲーム的な要素も加えながら、知識が確実に定着しているかを確認する、というポイントが盛り込まれていました。
 さらに表克昌先生(富山県氷見市立明和小学校)による小学校英語の模擬授業が続きます。『フラッシュ英語表現』を使って、"What subject do you like?""I like 〜. "を繰り返します。教科の言い方と、好きな教科の聞き方・答え方の表現を徹底練習。
 いよいよバトルシップゲームにチャレンジです。教科名と曜日3×3のマスのうち、それぞれの参加者が好きなマスに船を描きます。"What subject do you like?"とたずね、回答者の回答したマスに×を書き、最後まで自分の船が残った人が"Winner"。隣の席の参加者と勝負して楽しんでいる姿や、自分の船に×がつき残念そうに着席する姿が見られました。
 フラッシュ型教材で身に付けた単語や表現を使って行うアクティビティによって、確実に知識が身につくとともにコミュニケーション力もつくことを実感したようでした。

パネルディスカッション

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 パネルディスカッションでは、日常的にフラッシュ型教材を活用している先生方からの実践発表と活用のポイントが紹介されました。
 石井先生は、「授業の導入・まとめに2、3分活用する」「フラッシュ型教材を活用することで、子どもたちの視線が集まり、ほめることで達成感が得られ、自信につながる」といったフラッシュ型教材の活用のポイントや、活用することで生まれる子どもたちの変化などを紹介。

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 「全員ができることが大切。スモールステップでレベルアップしていくためには、指示を明確にしなければならない」といった具体的な活用方法に参加者は、真剣に聞き入っていました。
 表先生からは、先生方が英語活動においてもっとも不安に感じているのは「発音」であるという調査結果をもとに、「『フラッシュ英語』にはネイティブの音声がついているので、正しい発音はそちらに任せることで、英語が苦手な先生も安心して授業に取り組める」というお話がありました。また、「コミュニケーション力を育てたいが、基本となる英単語や英語表現の知識が足りない。その部分をフラッシュ型教材で定着させることがおすすめです」と話されました。

総括講演

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 セミナーを締めくくる堀田先生の総括講演では、「薬にそれぞれ異なる効能があるように、ICT活用も同様です。フラッシュ型教材はじっくり考えさせるものには合いません。子どもたちが瞬時に答えられるものをくり返すことによって、知識の習得、基礎・基本知識の定着を図ることができるのです」というお話に、大きくうなずく姿が印象的でした。
 また、「ICT活用の研修は、操作スキルの習得が中心の研修ではなく、具体的な授業技術を身につけるための研修であることが大切です」P012.JPG「ICTの活用は、機能が単純で、すべての先生が普通に使えるものが良い」という堀田先生のお話にも、参加者はとても真剣な表情で聞き入っていました。

 

☆参加者の感想(アンケートより)

  • (フラッシュ型教材は)短時間で子どもを引きつけ、反復することで習得効果を上げることが分かった。
  • 自分で教材を作ることはとても難しいことのように感じていたが、少しのアイデアでいろいろなことができるのだと分かった。
  • フラッシュ型教材の利用方法が良く分かった。教師の問いかけも重要であることも分かった。
  • フラッシュ型教材が何に効くのか、やりたい!と思ったときにどうすればよいのか(どのようなサポートがあるのか)などが分かった。
  • フラッシュ型教材・ICT活用が学力向上のどこに効くのかをふまえてきちんと実践しなくてはならないと感じた。
  • フラッシュ型教材の効果や用いどころ、使用法が限られているからこそよい、という点を理解することができた。

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