公開日:2008/5/13

身近だけれど、見過ごしている「雪」を再発見して学びにつなげる

第6回「雪の学習」研究会

【セミナーレポート】

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札幌市立新琴似小学校 割石隆浩先生

「雪から拡がるさまざまな学びの世界を子どもたちに」を合い言葉に、雪の学習に関する情報を発信し、雪の学びの普及を進めている北海道雪プロジェクト。その第6回研究会が開催され、フラッシュ型教材を活用した授業で知られる割石隆浩先生が模擬授業を行った。

「二酸化炭素排出量の増加率は、全国平均と北海道どちらが多いでしょう? それは何故だと思いますか?」「北海道の二酸化炭素排出量には大きな特徴があるのですが、何だと思いますか?」

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割石先生が作成した、「冬の暮らしを考える」教材。教科書とワークシート両方の機能を併せ持ち、誰でも容易に授業を始められるようになっている

 知的好奇心を刺激する絶妙な発問と、実物投影機で映し出される精巧なワークシートやデータの数々に、参加者は身を乗り出して聞き入った。模擬授業のテーマは、「冬の暮らしを考える」(小学校高学年用)。北海道の冬に欠かせない「暖房」を、地球温暖化の観点から考察する単元だ。
「一世帯あたりの灯油の年間使用量は、北海道は全国平均の何倍でしょう?」。実は3倍にも達するのだと割石先生がグラフの載ったワークシートをプロジェクタで映し出すと、会場から「そんなに!」と驚きの声が上がった。

 模擬授業で使用した教材以外にも、割石先生は雪に関するフラッシュ型教材を数多く作成している。「雪国のクルマの工夫」や「雪国の住宅の工夫」、「除雪の工夫」などを問う写真入りフラッシュ型教材は、大人でも「なるほど!」と唸るほど興味深い情報に富んでいる。
「『写真を使ったフラッシュ型教材も作ってみたら?』と堀田先生にアドバイスされたのがきっかけです。北海道の子どもは、雪のことをわかっているようでわかっていない。当たり前と思って普段見過ごしていることを、写真入りフラッシュ型教材で改めて考察させることで発見が生まれ、認識が深まります」
 フラッシュ型教材には、誰でもすぐに使えるメリットもある。現在雪プロジェクトでは、雪の学習に関する授業案や教材、ワークシートの開発に取り組んでおり、雪の学習の普及にも、フラッシュ型教材が役立ちそうだ。

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割石先生が作成した写真入りフラッシュ型教材。目を引くビジュアルと写真上に表示される解説で、子どもの興味関心を高め、正確な理解を促す。「北海道雪たんけん館」のホームページ(http://yukipro.sap.hokkyodai.ac.jp/)で公開されている

 続いて、堀田先生の講演も行われた。
「雪は、とても魅力的な学習テーマです。北海道の子どもにとって身近な題材であり、リアリティのある活動を実現できる。同時に、北海道外の子どもにも、強いインパクトを与える。雪国ならではの生活の知恵や、自然を読み解く知識が、『雪』という題材に凝縮されています。
 ただし、雪はあくまでも『題材』。子どもに除雪体験をさせるのは、除雪の技術を習得させるためではありませんよね。除雪体験を通して、毎日除雪してくれる地域の人々の苦労や行政の活動を知り、自然の素晴らしさを肌で体感するために行うのです。関心・意欲、知識・理解、技能、思考・判断、学び方等、身につけさせたい力を明確にした上で取り組みましょう」

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実物投影機で使い方を実演すれば、見るだけで子どもは理解できる

 また、ICT活用の効果についても語ってくれた。
「今回のセミナーでは実物投影機が活躍しましたが、みなさん見ての通り、大きく見せるだけで大きな効果を得られます。たとえば分度器の使い方を、言葉だけで教えるのはとても大変。でも、実物投影機で分度器の使い方を実演して見せれば、子どもはすぐに理解できるのです」

 

 次の学習指導要領は、ICTを活用することを前提に策定されたと聞く。ICT無しには授業が成り立たない時代がもうすぐやって来るのだと実感した。

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