公開日:2011/9/1

神奈川県立白山高等学校での「県内高校外国語科教員対象春季CALL研修会」開催報告

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 2011年8月23日(火)、神奈川県立白山高等学校において今年2回目の『高校外国語科教員対象CALL研修会』が、県内の先生方12名参加のもと、三つの実践報告が行われた。

■授業実践報告
「初心者がまずは使ってみたCALL Part 2」

神奈川県立白山高等学校 教諭 畑瀬 敏樹 先生

 今年3月に開催されたCALL研修会に引き続き、CALLを有効活用するために試行錯誤しながら問題を解決していく畑瀬先生の体験談第2弾。4月以降に新しく使い始めた機能・授業方法を、発表された。中間モニタに先生コントロールパネルを提示し参加された先生方にも、どのボタンを押すとどのようなことができるのか、初心者の立場に立って具体的にお話をされた。
 CALL教室を利用するようになってから早2年。最初はどのような活用法があるのかわからず逃げていた、と振り返る畑瀬先生は、新しいことに挑戦し、少しずつ出来ることを増やされている。今年の目標は「1回練習したら使えるようになる機能を中心にCALLになじむ」「CALLを毎回使えない時間割の授業でも、CALLを活用できるようになる」の二つ。新たに使い始めた機能としては「ムービーテレコ (Self-Learningモード)」「ファイル配布」「IE一斉コントロール」「Webサイト許可」「メッセージ送信」であった。
 CDのモデル音声に続いてムービーテレコのSelf-Learningモードで各自マイク録音をし、音読練習を充実させる。また、Wordで穴埋め・英作問題を予め作成しておき、「ファイル配布」で生徒に配布する。印刷の時間を節約し、生徒は課題に直接書き込めるのが利点で、パソコンそのものや、ローマ字入力に慣れさせることができるそうだ。リーディングについても同じようにCALL教室を活用されている。意味調べはネットの辞書を使わせ、このとき、指定した辞書しか見られないように「Webサイト許可」でサイト閲覧を制御する。一方、文法の解説では液晶プロジェクタのe-Pen機能を活用されていた。更には「音声を聞かせる」で映画のテーマソングを書き取るようなディクテーションの授業もされている。「メッセージ送信」はこれら生徒の活動を英語で指示し、促すのに利用されていた。
 パソコン教室に教科書・ノート・CDコンポなどを持ちこまなくても授業ができ、全体的に無駄がなく、スムーズな印象を受けた。先生ご自身は、試行錯誤の授業から一転、様々な活動をCALLで実現できることを楽しまれている様子だった。参加者の半数はCALLシステムが導入されていないとのことだったが、初心者の視点に立ってCALLの機能を解説される畑瀬先生の発表は、わかりやすく、自信を持たせてくれるものだった。

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ムービーテレコの録音方法を解説する畑瀬先生。
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中間モニタに先生コントロール画面を提示して解説。

■授業実践報告
「CALL教室の機能を使った作品提出例・プレゼンテーション例」

神奈川県立白山高等学校教諭 西部 優 先生

 新学習指導要領の「英語表現」の授業に向けての試行として、プレゼンテーションを授業に取り入れられている西部先生のご発表。「書くこと」「聞くこと」「話すこと」のバランスが重要であり、CALL教室ではこの三つのバランスを保ちつつ、授業を楽しく展開することができるため、生徒の反応も断然違い、とても楽しんで活動してくれる、と嬉しそうに話された。実際に生徒にパワーポイントで作成させた音声付きプレゼンテーションの作品を液晶プロジェクタに映し出しながら発表された。
 西部先生の授業では、「会話→作文→スピーチテスト→映像クリップ」の流れを追って最終的にプレゼンテーションができるように促していく。テーマを「夏休みの予定」とすれば、夏休みの前後にプレゼンテーションをさせることで、未来形と過去形の学習もしっかりさせることができるというもの。
 先ず、CALLの「ランダムペア機能」を活用し、テーマについて会話をする。このとき、”When / With whom / Where / How / Why?”の質問をしながら話を具体的にしていく。そして最後に、excitingやboring等の感想を付け加えるのがポイントだそうだ。
 生徒の会話をスムーズにするために、生徒が言いそうな事を予め先生が用意、中間モニタに提示しておく。それ以外は質問させ、新しい表現を学び、自分のことを表現できるように支援する。次に、話した内容をパワーポイントに書き込み、書いて表現することを学ぶ。これを暗記して、クラスの前でスピーチをする。さらに自分のスピーチをわかりやすくするため、ネット上で画像を検索・貼り付けて、Windows Movie Makerでナレーションを入れる。最後に、画像に字幕とナレーションがついたムービークリップを使用して聞き取り、読み取りをする。
 プレゼンテーションの活動を通してスピーキング・ライティング・リスニングのバランスを保つ一方で、「人に見てもらう・聞いてもらう」ための工夫には生徒の「遊び心」や「個性」を引き出すことができるという。英語ができる・できないを超えて、「英語を使用した活動を楽しむ」様子が伝わってくるご発表だった。他にも人物・天気・物の形を表現しあい、その画像を言い当てる方法などをご紹介いただき、参加された先生方は興味津々の様子で、生徒の作品を視聴するときには感心したり、うなずきも多く見られた。

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生徒のプレゼンテーション作品を紹介する西部先生。
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中間モニタにキーセンテンスを提示。

■授業実践報告
「CALL教室を使った高校英語の入門指導から大学受験指導まで」

神奈川県立座間総合高等学校教諭 山家 百合子 先生

 ムービーテレコの「録音・提出機能」を活用し、ネイティブの発音に近づける山家先生のご発表。外国に繋がりのある生徒が多く、英会話も積極的に参加する生徒が多く、活発だそうだ。先生ご自身も、TTの協力を得て音声ファイル作成や、Smart-HTML One Campusで問題集1冊をe-Learningの教材とするなど、大変活発な様子。「読めないものは覚えられない」「耳から繰り返し聞いたものは簡単には忘れない」という発音・リスニングの重要さを説かれ、CALL教室の活用方法を発表された。
 1学年では、英語らしい発音が出来るように、ネイティブスピーカーをまねて自分の音声をムービーテレコで録音。生徒のモニタは「ブラックアウト機能」を使って、ネイティブスピーカーの口の動きと音に集中させる。また、山家先生は発音記号を見せながらつづりと発音の違いに気付かせるようにしている。さらにリエゾン等を強調したカタカナ表記の発音をまねて発音・録音・聞き直すことにより、自分でもネイティブスピーカーに近い発音ができるという自信をつけさせる活動が中心。2学年になると、映画の台詞を使って英語らしい発音・抑揚を練習、重要情報を正確に聞き取れるようになることを目標とする。ここでも短文を読み上げ、ムービーテレコで録音・提出させる。3学年では入試対策に切り替え、山家先生が作成された教材と併せて、チエルのe-Learning教材『英文法徹底トレーニング』『センター試験英語完全攻略』『センター試験英語リスニング完全攻略』を繰り返し解かせ、入試問題に慣れさせるようにしている。e-Learning教材は解答を送信するとすぐに採点され、解説もあるので、個々のペースに合わせて自習させることが可能。やる気のある生徒は自ら進んで意欲的に取り組んでいるとのことだった。
 山家先生が問題集を1冊分、Smart-HTMLで音声付きのe-Learning教材にされているのには、参加されていた先生方も驚かれ、もし自分でもできたら便利だろうという感想が寄せられた。

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発音記号を指し、正しい発音を覚えさせる山家先生。
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発音・抑揚に注意してムービーテレコで録音する方法をご紹介。

■CALL活用法ご紹介

チエル株式会社 エリアマーケティング部 CS推進課 三木 智絵

 今回は “Natural Reader” というフリーのTTS(Text To Speech:読み上げソフト)と、山家先生のご発表で触れたSmart-HTMLの問題作成方法をご紹介。
 入力した文字をソフトに読み上げさせると、ネイティブさながらの発音に会場は一気に盛り上がった。ムービーテレコを使用すれば、この再生音(PC音)をキャプチャ、MP3のファイルに変換保存して、いつでも聞くことができる教材にすることが可能だ。例えば “TIME for Kids” のようなニュースサイトの文面をコピー&ペーストしてTTSで読み込ませ、リスニング教材にしてしまう。さらに、その文章を元に、穴埋め形式の聞き取り問題をWordで作成することも可能だ。CALLシステムとソフトを組み合わせることで、CALL教室の可能性が広がっていくことを知っていただけたのではないだろうか。
 また、Smart-HTML問題作成方法のご紹介では、問題入力・穴埋め問題の作成・音声ファイルの添付方法を中心にご説明。ここでは、山家先生のほかにも利用されている先生が参加されており、穴埋め問題の作成方法などについて予めいただいていたご質問にお答えしながら進めていった。その結果、参加されたほかの先生方にも「とても参考になりました」とのお声をいただき、今後もお使いいただけるようお力添えできたように思う。

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ムービーテレコでTTSの音声を繰り返し再生する。
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Smart-HTMLで穴埋め問題を作成。

 今回は前回よりも発表が多く、一つずつの時間が少ない構成だったので、もう少し時間を費やしてほしいというご要望もあったが、畑瀬先生によるCALLシステムの基本操作の解説、西部先生による新学習指導要領にのっとったCALLシステム活用方法や、山家先生自作のe-Learning教材のご紹介で、CALL教室のさらなる活用方法の可能性を知るのに加え、チエル株式会社によるSmart-HTMLでの問題作成方法ご紹介することによって、「疑問が解決した」、さらにフリーのTTSソフト活用法のご紹介では、「これだけでも参加した甲斐があった」という感想をいただき、今後の授業に参考としていただける、情報豊かで有意義な研修会となった。

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