公開日:2018/9/28

『大学英語教育学会(JACET)第57回国際大会』参加レポート

一般社団法人大学英語教育会(JACET)が主催する『第57回大学英語教育学会国際大会』が、
2018年8月28日~30日の3日間、宮城県仙台市にある東北学院大学土樋キャンパスにおいて盛大に開催された。

 今年の国際大会は「グローバル化に向けた初等英語教育から高等英語教育までの学習成果の質保証」をテーマとし、 小学校から大学までのあらゆる学校種において、英語教育の学習成果の質をどのように保証していくのかを課題とした。

 その中で、神戸学院大学の野口ジュディー名誉教授とリーズ大学のJudith Hanks准教授、お二方の基調講演を覗いてみた。

 野口名誉教授は、グローバル化が加速することで、日本の英語教育の現場では大きな影響が出ていることに言及した。 具体的には、日本の中学・高校の英語習熟は政府が掲げる目標とは程遠いこと、Generation Z(1990年代半ばから2000年代前半生まれの世代を指す)は 団塊の世代とは違う考え方を持っていること、Lingua Franca(母語が共通でない人同士のコミュニケーション手段として使われる言語)として英語をどのように扱うべきかの3点を挙げた。
 その中で、「The World Economic Forum (2015)によると、英語を話す人口は約15億人、その中で英語を母語として使っている人は4億人にも満たない。 何と70%以上が英語のノンネイティブスピーカーなのです」と紹介された。つまり、英語はLingua Francaとして実社会で使われているというわけだ。 この実状をもとに、21世紀で生き抜くために必要とされる英語をどのように学生に習得させるか、今の世代の学生をどのように動機づけるか、さらに、 教育の成果をどのように測定するかの3点に焦点をおき、実際に野口名誉教授が授業で行われた事例をいくつか紹介された。 テスト問題を自分たちで作るグループワーク、意見を表現する練習として新聞の読者投稿に投稿するグループワークなど、いずれの課題も学生一人で完結するものはなかった。 評価も先生からだけではなく、学生からのフィードバックも含めて行われる。ある目標を達成するために、自らアクティブに言語を使うこと、 相互評価こそが教育の成果を図る手段として重要であることを強調された。

 Hanks准教授は、学習者、教師、カリキュラムや教材開発の設計者、教員研修員、政策立案者、研究者など、教育関係者全員が関わることによって、 言語教育の中で、学びの質、さらには人生の質を高めることができると主張され、ブラジルとイギリスの学校での様子を交えながら進められた。  ブラジルの小学校では、新人の英語教師が当初は生徒は自分のことも、英語を学ぶことも嫌いだと思い悩んでいたが、好きなものと嫌いなものを 紙に書かせるアクティビティーを行ったところ、真逆の答えが返ってきたという。生徒たちにとっては、先生が生徒の意見や日常生活について知りたいということが驚きだったようだ。 また、イギリスでは、スペルが苦手な中東の生徒にどう指導したらよいかわからないと悩みを抱えている先生がいたが、調査をすると、 生徒に対する不安が指導そのものに影響を与えてしまっていることがわかった。いずれの事例も、先生と生徒のそれまでの生活感の違いが原因でした、とHanks准教授は話された。
 その後で、「教室の中での文化的アイデンティティーを考えてみましょう」と切り出し、「研究者とはどんな人? 学習者とは? 教師とは?  それぞれどのような関係にあるのでしょうか」の問いに、講演を聞いている先生方はペアになって議論を始めた。
 その議論を通して、教師も学習者に、学習者も教師になり得るということを実感したようだ。一方が与える、一方が得るという関係でなく、共に益を得て、 互いの人生をより良くしていくためにも必要不可欠な関係でいることが大切ということだろうか…。

 さて、今回のチエルは4技能のうちの「話す」に特化した「音素学習、発音矯正、プレゼン等のテキストの音声化」ができるスピーキング学習システム 『CaLabo Language(キャラボ・ランゲージ)』と、 この夏にバージョンアップされたばかりの英語ニュース教材配信サービス『ABLish(エイブリッシュ)』を展示。
 展示ブースには、スピーキング教材を求めて多くの先生方が訪れ、 『CaLabo Language』を体験いただいた。 「発音矯正では、細かく採点されて、目でも耳でも確認できるのが良いですね」「授業で利用したい」などと感想を寄せられた。 また、『CaLabo Language』には、 スマートフォン対応、学習履歴管理機能も備えてあることから、自宅での宿題として活用できるところも気に入っていただけた。

CL.jpg ▲『CaLabo Language』の発音矯正画面

 展示会を通して、日本の英語教育はどこへ向かおうとしているのか、先生方は何を求め、何を求められているのかを知る、大変貴重な機会となった。 私たちチエルは、先生方にとって、より活用しやすいモノづくりを実現するため、挑戦し続ける…。

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▲展示ブース

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▲『ABLish』の学習画面

一般社団法人大学英語教育会(JACET)は、1962年の設立以来、大学をはじめとする高等教育機関における英語教育および言語教育関連の、 研究・実践結果の発表の場の提供、大学教員の表彰、教育現場の調査研究を通じて、日本の大学英語教育の改善および英語教育に係る研究の発展に 寄与することを目的として活動している団体です。

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