社会とつながり、未来を探求する人材を育てる
学校訪問「地域から羽ばたく、まちと世界が教室になる高等学校」
―神奈川県―
新名学園旭丘高等学校
「リーダーズ・アカデミーコース」を新たに新設し、実践的な学びと多様な外部連携を通じて、生徒が社会と深く関わり、生きる喜びを見出す「全人教育」を推進している、神奈川県新名学園旭丘高等学校。生徒の「自己決定の力」を育み、地域と世界に貢献する人材を育成することを目指す同校に話を伺った。
新名学園旭丘高等学校
〒866-0881
神奈川県小田原市城内1-13
城内キャンパス(第1校地)
創立から120年以上の長い歴史をもつ、男女共学の私立高等学校。共同的な学校生活を通じて将来を切り拓く「普通科」と、自分らしいカリキュラムで学びを深める「総合学科」を設置している。
社会、そして世界とつながる学びを目指して
相模湾、箱根山に囲まれた自然豊かな地域で、地域産業や歴史文化が生活に根ざした神奈川県小田原市。同市に設立された新名学園旭丘高等学校は、この小田原の地に根ざし、生徒が人生で直面するさまざまな課題を乗り越える力を育むため、探究学習を推進。生徒の知的関心を高めるため、「教養講座」や「特別講座」を通して人文・社会・自然科学といった多様な学問分野に触れる機会を提供している。また、「平和」「人権」「環境」など現代社会の重要なテーマを「総合的学習」で取り上げ、教師と生徒が協働で課題解決型の学習を実践している。地域と連携し、「小田原のまちが教室」というコンセプトのもと、生徒が地域の課題を発見して解決策を探る活動を「地域に根差したグローバル教育」の一環として重視している点も特徴だ。
生徒の未来を見据えた学びの深化
旭丘高等学校が探究学習を推進する背景には、いくつかの課題意識がある。
堀内文兵校長先生は次のように話す。
「生徒たちが人生で直面する多様な課題に対し、仲間とのつながりを活かしてどう向き合い、乗り越える力を育むかという点を重視しています。特に、青年期は個人的な悩みだけでなく、無意識のうちに人類の未来や世界の動向について深く悩む時期であるため、生徒が社会や世界の課題に目を向け、他者と協力して困難を乗り越える力を育むことが重要です」
また、「なぜ大学に入るのか」「社会とどう関わるのか」といった生徒の深い目的意識の育成や、具体的な進路選択に探究学習をどう活かしていくのかも課題だ。総合学科では進路探究と「課題研究(インターンシップ)」が関連付けられているが、探究学習の概念を学校全体に十分に浸透させていくことがこれから求められている。
実践と体験が育む生徒の成長
これらの課題に対し、旭丘高等学校は多角的なアプローチで解決策を講じている。
まず、外部組織との連携を重視し、中国の安陽市開発区高級中学をはじめとする3校、モンゴルのツェツェーグン経営大学附属校と姉妹校提携を結び、国際的な視野を広げている。中国の高校生との交流においては、生徒が夏王朝の始祖とされる禹王に関するフィールドワークを体験。国際的な探究活動の一環として、学習を深める機会となった。JAXA(宇宙航空研究開発機構)の現役研究者を招へいし、生徒が直接質疑応答できる機会を設けるなど、普段出会えない専門家との交流を実施している点も他校には見られない点と言えるだろう。
また、地域文化への理解を深めるため、フィールドワークへの積極的な参加を推奨。菅原亮先生は、「生徒たちは当初『恥ずかしい、やりたくない』と言っていたにもかかわらず、実際に参加して多くの人と触れ合い、自分が評価されていると実感して達成感を抱けたようです。参加後は『すごくやりがいがあって嬉しかった』という感想を述べていました。スマホばかりに触れてきた世代の子たちにとって、体験から得られる学びは大きかったようです」と振り返る。
さらに、2025年4月開設の「リーダーズ・アカデミーコース(LAアカデミー)」については次のように話す。
「単なる学力向上だけでなく、明確な目的意識を持って大学進学に挑戦し、将来社会とどのように関わっていくかを見通す力を育むことを目的としています。全人教育を重視し、フィールドワークや芸術、身体活動を通じて人間性を総合的に育むカリキュラムだと考えています」(菅原先生)
LAアカデミーの生徒は入学してわずか3カ月で、保護者の前で自身の成長と課題について発表する機会が設けられ、しっかりとプレゼンを行った。保護者もその短期間での成長に驚きと納得を示しているとのこと。生徒自身も、実際の体験を通じた学びから手応えを感じ、充実感を得ている。
「探究学習を学校全体に広めるため、LAアカデミーの取り組みを学校の『起爆剤』『変革材料』」と位置付けています。この先進的な実践を『突破口』として、より多くの教員を巻き込み、学校全体の方針として探究学習を推進していくことを目指しています」(菅原先生)
地域と世界を支える人材育成へのビジョン
「創設者が信じた『人間の発達の可能性』と『地域を支える人間の育成』を大切にしながら、学校が『地域に開かれた市民立の私学』として、生徒一人一人が地域と世界を支える人間になることを目指しています」(堀内校長)
これは、地域との連携を深め、生徒が現実社会の中で学び、貢献する場を広げていくというビジョンに基づくものだ。
今後はさらに探究学習を充実させ、生徒たちが「これがやりたい」「学びたい」という情熱を持ち、自分自身で決断し、困難があっても力強く進んでいけるような「自己決定の力」を引き出すことを目標としている。
そして、最終的な願いとして、堀内校長は「生徒たちが学習や体験を通して『生きる喜び』や『根本にある幸せ』を感じてほしいです」と強く語る。
「学校教育が、生徒の人生を豊かにし、幸福な未来を築くための基盤となることを願っており、そのためにも探究学習は、生徒たちが多様な課題と向き合い、仲間とともに乗り越える力を育む上で必要不可欠です」(堀内校長)
これこそが、旭丘高等学校が目指す教育の核心であり、生徒たちが社会の一員として自立し、幸福な人生を送るための道標となるはずだ。
新名学園旭丘高等学校
校長
堀内 文兵 先生
新名学園旭丘高等学校
菅原 亮 先生