公開日:2008/12/15
CALLを活用した豊富なアクティビティ
CALLを活用した豊富なアクティビティで
学生一人ひとりが主体的に学習に取り組める授業を展開
「大学生の英語は、できる・できないの二極化が進んでいる」「能力別のクラスでその進度を実感する」。これは、大学英語教育学会・ESP研究会の座談会で、大学の教壇に立つ現役の先生方から伺ったご意見の一部だ(チエルマガジン2008秋冬号/特集「学力保証を考える 〜大学英語教育の過去、現在、未来〜」)。大学の英語教員にとって、学生のレベル差は大きな課題だろう。
東洋英和女学院大学国際社会学部教授・竹下裕子先生は、CALL教室をうまく活用した講義で学生を惹きつけ、一人ひとりの英語力の底上げを図っていた。
プロジェクターや書画カメラでの視覚的なサポートで講義の効率化を図る
取材に訪れた12月3日(水)は、国際社会学科国際コミュニケーション専攻の学科基礎科目で、1年生を対象にした「English Workshop?」が行われていた。「English Workshop?〜?」は、英語力の総合的なスキルアップを目的とした必修科目で、進度別9クラス(各クラス15〜16名)に分かれて講義が行われている。
国際社会学科国際コミュニケーション専攻(1学年約140名) | |
1年前期 | English Workshop?・? |
1年後期 | English Workshop?・? |
2年前期 | English Workshop?・? |
2年後期 | English Workshop?・? |
- ▲スクリーンに大きく写すことで、英語力のレベル差に関係なくポイントをひと目で理解できる。
講義のはじめに、竹下先生はCaLabo EXの「ファイル配布」機能で前々回提出済みのファイルを返却。そして、一人の学生のライティングを例としてプロジェクターで投影し、全員に見せながら解説を行った。
竹下先生の講義では、随所でプロジェクターや書画カメラを使って、ファイルやテキストを大写しする光景が見られた。その効果について、竹下先生は次のように語る。
「授業は英語で進めますが、私が『手元のテキストの何ページの何行目を見て』と指示しても、英語が苦手な学生には私の話題にしている単語がすぐには見つかりません。ところが、大画面で『この単語』と見せれば、一目瞭然、全員が瞬時に認識できます。普通教室ではできない視覚的なサポートは、レベル差のある講義ではとてもありがたいのです」
豊富なアクティビティで、関心の薄いテーマにも前向きに
- ▲テンポのよいアクティビティで学生の気持ちが乗ってくると、教室全体に自ら取り組もうとする雰囲気が生まれてくる。
当日の講義のテーマは「日本の雇用問題」。前週に、同学部の経済学の先生が日本語で同じテーマの講義を行っており、それを英語での授業に発展させたものだ。これらの講義に使用する教材は、竹下先生をはじめとした同学の教員が制作。そのため、カリキュラムの連動も可能となっている。
竹下先生によると、「テーマによって学生の反応が違う」とのこと。今回の課題は、就職活動未経験の1年生だけに、「まだ先の話」「難しそう」と受け取られたようだ。
しかし、講義が進むにつれて、最初はテーマに対して及び腰だった学生が徐々に前のめりになってきた。スクリーンに映したテキストの読解、動画/音声教材学習ツール・ムービーテレコを利用したディクテーション、そしてシャドーイング。次々にアクティビティが展開されると、受け身でいられなくなった学生はどんどん前向きに取り組むようになったのだ。”他人事”だったテーマを、”自分の問題”として捉えだした。
竹下先生は、こうした学生の自主性や個々の成長を大切に育んでいる。
「自主的に作業する時間を与えると、学生は一生懸命がんばります。私は、『全員でこのレベルを目指しましょう』という形では提示していません。個々の英語力は、シャドーイングできる学生がいれば、一文も言えない学生もいるという具合に差がありますよね。『自分の今いるところから上がりましょう』と話しています」
一人ひとりのレベルアップを目指している竹下先生。CALLシステムは、そのサポートになっているという。
「ムービーテレコは自分の声を録音すると波形がでますよね。たとえば、シャドーイングに自信がなくて小声で小さな波形しか作れていない学生には、『前よりもっと大きな波形を作ろう』と、目に見える形で課題を与えられる。そういう意味では、学習システムが私の補助をしてくれています」
ランダムペアレッスン機能を使ってリスニング&スピーキング練習
同学が導入しているCaLabo EXでは、4種類のペアレッスンができる。竹下先生がスピーキングに活用しているのは、「ランダムペアレッスン」機能だ。
「隣の人とペアと組むというのは中学や高校でもするのかもしれませんが、これだと『今日は誰とペアになるのかしら』という楽しみがありますよね。ペアレッスンでは、ひとりが喋っている間、相手は何文言えたかというのを数えさせています。聞くこと、話すことの練習をしているのです」
竹下先生は、学生がより多く英語を話せるように、スピーキングの内容にも気を配っていた。今回は、日本の雇用問題という大きなテーマを話しやすいように噛み砕いて「外国人に日本の企業について教える(という仮定でスピーキングする)」という課題を与えたのだ。
その後に展開したライティングの課題にも「あなたの卒業後の仕事のプランは?」という学生にとって身近で親しみやすいものを用意。
CALLを活用したアクティビティで学生の意識を前に向かせ、「これならできるかも」と思わせる課題でさらに意欲をかきたてているのだ。
CaLabo EX(Ver.5.0以降)の会話機能
- オートで番号順にペアを組める「ペアレッスン」
- オートでランダムにペアを組める「ランダムペアレッスン」
- 先生が指定して2人以上のグループを組める「グループレッスン」
- オートでランダムにグループを組める「ランダムグループレッスン」*グループ人数の選択可能
- ▲ランダムペアでのレッスン。一人がスピーキングしている間、もう一人は相手の話した英文の数を数えるリスニング練習をしていた。
- ▲CaLabo EXの「巡回モニター」機能で学生PC画面を順次プロジェクターに表示し、ライティングの内容を瞬時にチェック。机間指導の効率化が図れていた。
CALLの活用で「常に参加している、楽しい90分」を実現
竹下先生は、CALL活用の利点は、学生一人ひとりが主体的に学習に取り組むことだと考えている。
「教材は配布されるし、リスニングやスピーキングをしなさいと言われるし、学生は気を抜く暇がないですよね。(普通教室で)誰か一人が指されて黒板で問題を解く間に他の人は待っているような、他の人が作業して自分は作業しないという時間をなるべく減らしたい。CALLの活用でそれを実践できていると思います」
講義の後、学生のみなさんから「CALLだと楽しくて90分間眠くならない」「常に自分が参加している気持ちになれるところがいい」という笑顔の感想を伺った。竹下先生の教えは、確かな形で実を結んでいる。
【DATA】
東洋英和女学院大学・国際社会学部
〒226-0015 神奈川県横浜市緑区三保町32
http://www.toyoeiwa.ac.jp/daigaku/index.html
「東洋英和女学院」は、1884(明治17)年、カナダ・メソジスト教会派遣の婦人宣教師マーサ・J・カートメルによって設立された。1989(平成元)年、横浜校地に大学を開設。2007(平成19)年度には、国際社会学部国際社会学科に、国際コミュニケーション専攻、社会システム専攻を設置した。グローバル化の進む現代社会において広い社会的視野を持ち、自分の考えを的確に表現できる女性の育成をめざしている。
東洋英和女学院大学・国際社会学部 竹下裕子教授