公開日:2021/11/12
地域と連携して、ICT活用指導力を育てる
―沖縄県―
沖縄女子短期大学
GIGAスクール構想により学校のICT環境整備が進む中で、教員のICT活用指導力向上が急務となっている。大学等の教員養成課程ではどのような学びが求められるのだろうか。
沖縄女子短期大学
〒901-1304 沖縄県島尻郡与那原町東浜1番地
1966(昭和41)年開学。総合ビジネス学科・児童教育学科を有す。産学連携推進センターを設置するなど、産業界や他大学との共同研究・連携事業も積極的に行っている。
人材育成と地域貢献
沖縄女子短期大学では、2015年にキャンパスを移転したのをきっかけに、ICT活用を積極的に進めてきた。
2017年度には文部科学省「私立大学等教育研究活性化設備整備事業」に採択され、他大学等と連携しながら教員養成のための教育プログラムの共同開発、共同研究を行ってきた。
また、学内のICT活用にとどまらず、周辺の自治体と連携し、現職教員を対象とした研修なども行っている(図1参照)。
「地域の課題を吸い上げ、学生の教育に生かすことで、地域の課題を解決する人材を育成しています」と産学連携コーディネーターの比嘉勇太氏は語る。
児童教育学科初等教育コースでは、新垣さき先生を中心に先端技術導入に関する研究プロジェクトを進めている。これまで、地元で子供向けプログラミング教育の体験イベントを実施したほか、ICT機器を使った授業の指導案を作成し、模擬授業などの活動を行ってきた。
2020年度には地元の与那原町教育委員会と連携し、現職教員の前で、学生たちがICT教育機器を使った模擬授業を実施する。
模擬授業の概要
新垣先生のゼミで2020年度後期に実施した、G Suiteと授業支援システムInterCLASS® Cloudを組み合わせた模擬授業の活動について伺った。
「まずはChromebook、G Suite、InterCLASS® Cloudなどの基本機能や操作を伝え、授業の指導案を作成させました。2人のグループで、対象の学年、教科を決めてもらいました。最初からICT活用を前提に考えるのは難しいので、まずは教科書の教師用指導書を参考にしながら、ICT活用にこだわらずに指導案を作ってもらいました。次のステップとして、どこでICTを使うと効果的な授業ができるのか考えながら、指導案作成を進めました。また、GIGAスクール構想の背景や意図を伝え、ICTを使う目的なども確認しました」と新垣先生。
最初のうちは難色を示していた学生たちも、話し合い、機能を確かめながら、さまざまなICT機能を指導案に取り入れていった。
模擬授業の具体例
小学6年生を想定した社会科の模擬授業では、Googleスライドを使って電子黒板に戦国時代の絵図を表示。「織田信長はどのように鉄砲を使ったと思うか」などと発問し、答えをGoogle Jamboardのふせんに書き出してもらう。そして、電子黒板で答えを一覧表示して、ペンツールを使って線や文字を入力しながら話し合った。また、InterCLASS® CloudのURL送信機能を使って、参考資料となるWebサイトのURLを生徒役の端末に送信するなど、授業支援システムもうまく活用していた。
小学5年生を想定した道徳の模擬授業では、Googleフォームを使い、生徒役に自分の長所、短所について無記名アンケートを取り、答えを電子黒板で一覧表示しながら授業を進めた。
小学4年生を想定した算数の模擬授業では、Chromebookのカメラ機能も使った。配付したプリントに答えを手書きで記入させ、そのプリントを各自がカメラで撮影し、それをInterCLASS® Cloudの画面モニタリング機能を利用して電子黒板に一覧表示する。その中から、先生役が発表者を選び、発表者の画面を大きく表示して、説明させた。子供が端末に入力するのは時間がかかるということで、プリントに書いてもらったものを写真に撮るという工夫である。
「InterCLASS® Cloudの画面モニタリング機能を使うと、子供たちがどういう状況なのか、手が止まっているのか、いっぱい書けているのか、画面の一覧表示で分かるのでいいですね。それを見て、どのように指導していくか考えることができます。子供たちが、他の人たちの意見をすぐに共有できるのもいいと思います。模擬授業の中でも、その良さを生かせている場面をたくさん見ることができました。今後、学生たちには、GIGAスクール構想の進む学校現場でこれまでやってきたことを生かしてほしいと思います」と新垣先生。
同大学では、現在も対面授業とオンライン授業を半々で行っているが、特に本ゼミでICT利用に慣れた学生たちはさまざまな場面で積極的に電子黒板やG Suiteを使用しているという。
模擬授業の様子をホームページで公開
模擬授業の情報を広く活用してもらうためのWebサイト「for GIGA SCHOOL」も企画中だ。模擬授業を動画に記録し、「授業アーカイブ」として公開。学校現場等で活用した際にはGoogleフォームを使ってフィードバックを入力してもらうなど、双方向のやりとりを見込んでいる。
「動画では授業の手順も分かるように、使用するツールの名称をテロップで表示したり、学生や教員のコメント等も表示したりします。また、授業内容だけでなく、ICT活用の意義などの解説動画も作っています」(比嘉氏)
現場の教員や自治体への支援につながる上、学生の意欲向上にも期待がかかる。
地域や他大学と連携してICT活用の普及に幅広く取り組む沖縄女子短期大学に、今後も注目したい。
*Google、Chromebook、G Suite(Google Workspaceに改称)、Google Jamboardは、Google LLC の商標です
*記事中の名称は取材当時のものです
児童教育学科
講師
新垣 さき 先生
産学連携推進センター
産学連携コーディネーター
比嘉 勇太 氏