公開日:2026/5/8

「1人1台」のその先へ。通信環境の安定と可視化が支える教育DX

―福島県―
福島市教育委員会

GIGAスクール第2期を見据え、福島市はOSの統合とフルクラウド化を軸とした大胆な教育DXを推進する。
その安定運用を支える「補助輪」として4月から本格導入されるのが『Tbridge®︎』だ。通信遅延の解消、データの可視化により、子供と教師が学びの本質に向き合える環境の構築の実現を目指す。その変革への想いを伺った

福島市教育委員会

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〒960-8601
福島県福島市五老内町3-1

子供と向き合う時間・授業観の転換を生み出すために

 福島県北部に位置する県庁所在地、福島市。人口約27万人を擁するこの地では、現在、教育現場の大きな転換期を迎えている。

 福島市教育委員会 教育研修課 学校ICT推進係 主任の菅野玄徳氏は、令和5年度の着任当時から、「先生方が多忙を極め、子供一人ひとりと向き合う時間や自身の研鑽のための時間が十分に取れていないのではないか」という強い危機感を抱いていた。

 例えば、学校現場の要となる“先生と子供との信頼関係”。これは一朝一夕に築けるものではなく、お互いを知るための“共に過ごす時間”が必要不可欠だ。

 また、文部科学省が推進するリーディングDXの事例研究から、菅野氏は近い将来、教員が教壇から一方的に知識を授ける従来型の一斉指導から、子供たち自らが問いを立て、ICTを道具として使いこなしながら探究する“子供主導”の学びへの転換、つまりは“授業観の転換”が必要なことを強く認識していた。「一部の先進的な先生だけでなく、全ての教室でこうした学びが自然と行われるようになるためには、ICT機器を呼吸するかのように使えるとともに、ネットワークもストレスなくつながる状態でなければなりません。また『百聞は一見にしかず』で、先進的な取り組みを行っている他自治体の授業を先生たちが目にする時間を確保することも必要だと感じていました」(菅野氏)

 「先生が教室で過ごす時間や研修を行う時間を確保するために、今までのICT環境を抜本的に見直し、非効率的な作業を徹底的に削減したいと考えました」と菅野氏は整備時の思いを語る。

GIGA第一期から第二期へ

 GIGA第一期において同市では、教員は職員室の有線LAN接続に限定された校務用のシンクライアント端末と学習指導用の Windows 端末を使い分ける「2台持ち」の状態だった。たとえ時間がかからない校務であっても、教員は必ず職員室に戻らなければならなかった。また、子供たちには1人1台端末が整備されていたものの、教員用の学習指導用端末はクラスに1台の整備にとどまっていたため、授業内での活用もなかなか進まなかった。このような環境の中、限られた予算内でどのように整備し「学習指導用PC端末の教員1人1台」を実現していくか。そこで導き出されたのが、教員1人1台の「Google Chromebook™」+「Google Workspace for Education™」+「Windows 365」の運用だった。

 「当初は、学習指導用端末として Chromebook を導入しても、既存の校務用シンクライアント端末は残すつもりでした。しかしこれまで使っていた VDIのライセンス料が高騰することが判明したため、Chromebook のみの運用とし、Windows 端末の代わりに Windows 365 を導入したのです。その結果、持ち運び可能な1台に端末を集約することができました」と菅野氏は語る。

 Chromebook は、すでに全教員に配付済みで、実際に活用がしやすくなったという声が届いているという。さらに、2026年度からは、児童生徒用端末も iPad から Chromebook に一新される。教員が先んじて端末に慣れ親しむことで4月以降の現場の負担や混乱を大幅に軽減できる点も、今回の Chromebook への一本化がもたらす大きなメリットとなるだろう。

「感覚」から「根拠」へ。可視化が支える持続可能な教育DX

 Chromebook への全面移行を実現し、学校現場のさらなるICT活用を推進するうえで、ネットワーク基盤の整備はとても重要だ。整備計画を立てるうえで肝心なのは、文部科学省の掲げる「学校規模ごとの帯域の目安(当面の推奨帯域)」の条件を満たすだけでなく、「学校現場で実際に使ってみたときに問題なく使えるかどうか」だと菅野氏は言う。

 これまで同市では、既存の回線において、クラス全体で同じ動画を視聴した際に端末の動きが少し遅くなってしまうという報告を度々受けていた。授業中、同じコンテンツに複数端末が同時接続する状況は学校現場では常に起こりうる。この先、教育DXに向けてICT活用が進めば進むほど、通信量も大幅に増えていくことが想定されるため、同市ではネットワークについても全面的な見直しを行い、複数端末からの同時接続時にも動きが遅くならないよう最適化を行う『Tbridge® エッジキャッシュモデル』の導入を決めた。

 全ての学校でICT活用を進めてほしいという強い思いから、本システムの導入先は市内全校とし、今後の通信負荷の軽減や高負荷時の通信最適化を狙っているが、「『Tbridge®』に期待することはそれだけではない」と菅野氏は言う。

 菅野氏が『Tbridge®』に寄せる期待は、ネットワーク状況の「数値化」にある。GIGA第二期の環境が整備され活用が進めば、この先、通信量が増えることでネットワークに新たな課題が生まれ、さらなる改善や整備の必要性が出てくるだろう。その際、現場の感覚的な声だけでは、行政の予算要求や政策判断に対してインフラ投資の必要性を説明しきれない。しかし「『Tbridge®』を使えば、トラフィックの状況やセッション数、ボトルネックとなっている箇所がグラフや数値で明確化されます。これは我々行政職にとって、財政部門への強力な『証拠(エビデンス)』となります。『これだけの負荷がかかっているから、この増強が必要だ』とデータに基づいて説明できることの価値は計り知れません」

 また、この“可視化”は教育委員会と学校の距離を縮めるツールとしても期待されている。市内各校の活用状況をモニタリングすることで、活用が盛んな学校をいち早く把握し、その優れた実践を他校へ横展開する。あるいは、活用が停滞している学校に対しては、それが通信環境の不備によるものなのかノウハウの不足によるものなのか、即座に課題を切り分けて的確な支援を行うことが可能になる。「どこに不調があるのかを客観的に判断し、活用が止まる前に手を打つ。こうしたデータに基づくマネジメントこそが、持続可能な教育DXには不可欠です」(菅野氏)

教育の未来を共に創る
パートナーへの期待

福島市教育委員会 教育研修課 学校ICT推進係 主任 菅野 玄徳 氏

 こうした複雑なインフラの移行と運用において、さまざまな製品・サービスを提供し、伴走し続ける企業との連携にも、菅野氏は価値を見出している。「教育委員会には人事異動があり、担当者が数年で入れ替わります。専門的な知識を持つ担当者がいなくなっても、学校現場や一連のシステムを熟知したパートナーが伴走し続けてくれることは、自治体にとって大きな安心材料です。つぎはぎのシステムでは、どうしてもうまく連動してくれない。一連の仕組みとしてワンストップなサービスとサポートを受けられることで、長期的かつ安定的なDXを推進できると考えています」(菅野氏)

 福島市が挑むのは、単なる機器の更新ではない。先生たちの時間を確保することで、子どもたちに向き合う時間を生み出し、授業観そのものも変容させる。そして、ICT活用の推進に伴って更なる整備が必要になった際に行政の合意を得るための確固としたデータ・エビデンス。さらに、パートナーとの連携による継続的なDXの推進。これらを一つに結びつけ、子どもたちの未来を力強く後押ししていく。

※Google Chromebook および Google Workspace for Education は、Google LLC の商標です。
※Windows および Windows 365 は、米国 Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
※iPadは、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。

福島市教育委員会 教育研修課<br> 学校ICT推進係 主任<br> 菅野 玄徳 氏

福島市教育委員会 教育研修課
学校ICT推進係 主任
菅野 玄徳 氏

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