公開日:2010/10/7

現場の声を活かしたICT環境の整備が成功の秘訣!

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 藤岡市は文部科学省の補助を受けて「学校ICT環境整備事業」を進め、今年4月末までに市内のすべての小学校(11校)の全クラスに大型テレビやプロジェクター、実物投影機などのICT機器を配備した。群馬県内初で、全国でも数少ない先進的な取り組みとして注目される藤岡市の教育活動を取材すべく、藤岡第一小学校を訪ねた。

フラッシュ型教材も市内全11校で導入!

 今回見せていただいたのは、5年生の社会の授業(担任 今井啓介先生)と2年生の算数の授業(担任 佐藤多佳子先生)。まず感心させられたのが、学年ごとに異なる機器を導入していたことだ。実物投影機に加え、1・2年生のクラスには50インチの大型テレビ、3・4年生は大型テレビの代わりにプロジェクターとマグネットスクリーン、5・6年生の教室にはさらに簡易型電子黒板ユニットも配置されている。例えば低学年の場合はテレビでNHKの教育番組を視聴することが多く、高学年ではデジタル教材の活用も増えるなど、学年ごとにICTの使用目的や方法が異なることが事前の調査で判明し、その実態に応じた機器を配置したのだ。
 ICT機器の配置に加え、藤岡市ではフラッシュ型教材『小学校のフラッシュ英単語/英語表現』『小学校のフラッシュ基礎・基本(1〜6年)』も一括で導入した。このフラッシュ型教材を活用していると聞き、拝見したのが今井先生の授業。上記の教材のほか、フラッシュ型教材専用の無料サイト『eTeachers』からダウンロードしたものや自作のものなど、さまざまなコンテンツを授業に取り入れているという。
 今井先生は毎回、授業のはじめに5〜10分程度「フラッシュタイム」を設けている。「子どもが喜ぶんですよ。授業のウォーミングアップにもなるし、以前にやったことの復習にも役立つ。短時間でさっとできるのがいいですね」と今井先生。この日は都道府県名や世界の国旗、首都名などの問題を、クラス全員で声を合わせ、手拍子を打ちながらテンポ良く答えていた。「手拍子でリズムをとるというのは、子どもたちのアイデアなんです。機器の準備も手伝ってくれますし、とても主体的」という子どもたち、目を輝かせながら取り組む姿が印象的だった。

子どもたちの理解度チェックにも役立てる

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 続いて見せていただいたのが、佐藤先生の算数の授業。「ものの長さをはかる」というテーマのもと、まずはデジタルコンテンツを使って前回の復習からスタート。「大型テレビがあると自然と前を見るようになりましたし、フラッシュ型教材で声を出すことで集中もしやすくなるようです。クラスをまとめるのにも効果的だと感じています」と佐藤先生は語る。
 授業の内容に入ると、佐藤先生は大型テレビの接続をパソコンからプロジェクターに素早く切り替え、実物投影機で教科書を映し出した。この日はものさしを使って長さを測る授業のため、ものさしの細かい目盛りを大きく映し出すことのできる実物投影機は大活躍だった。そして授業の最後は、フラッシュ型教材で締めくくる。今夏導入されたばかりの『小学校のフラッシュ基礎・基本(2年)』には、子どもたちに身 につけさせたい基礎・基本の内容がまとめて収録されている。「忘れかけているかな、というタイミングで復習させます。声が小さくなりそろわなくなるので、やっぱり忘れてるなと…(笑)」と言うように、佐藤先生は子どもたちの理解度チェックにフラッシュ型教材を役立てているという。

ICTというツールをいかに使いこなすか

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 今井先生や佐藤先生のように、パソコンを使いこなしてフラッシュ型教材などを授業に取り入れている先生は少しずつ増えている。「今はまだ、とりあえず設備が整い、教員が実物投影機を使いこなせるようになった段階。それだけでも授業は大きく変わった」と品田校長は語る。実物投影機では、教科書や資料集、実技科目のお手本のほか、子どもたちのノートや作品を映し出すことも多いという。「自分の作品が紹介された子は自信につながるし、他の子どもはそれを見て良いところを取り入れようとする。『前に集まって』と子どもを呼び寄せる手間や時間も省けるし、ズームアップできるので見やすいし、本当に便利です」と今井先生。
 一方で、品田校長はこうも語る。「ICTはあくまでも手段であって、教員がそれに食われてはいけない。『映像を見て、この通りにやりなさい』では授業が崩壊していまいます。教員がきちんと言葉で説明をして、映像はその補助として使うべき。便利なツールをいかに使いこなすかは、教員の手腕にかかっているのです」。今後は校内研修などを通して、教員の間にさらなるICTの活用方法を広めていく予定だという。

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齋藤 俊明 指導係長

 藤岡市のICT環境整備を中心となって進めた教育委員会の齋藤指導係長は、「持ち運びができる授業用のノート型パソコンの導入が今後の課題」と現場の環境整備をさらに充実させるべく、次なる課題にすでに取り組んでいる。
 確かに教員用のパソコンが増えれば、フラッシュ型教材やデジタル教材の使用もさらに進むことだろう。比較的小規模な自治体だからこそ可能な迅速な判断と行動力を活かした藤岡市の取り組みは、早くも功を奏しているようだ。同市の今後の展開に教育界の注目が集まっている。

現場と協同してICTの活用方法を模索していく

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針谷 章 藤岡市教育長

 ICT機器を試験的に導入したところ、現場から大変反響があったので、昨年度の文部科学省の「ICT環境整備事業」に申請することになりました。このとき、「大型テレビでいいのか?」と市長に問われたのがきっかけで、改めて調査をして現場の要望を集め、最終的に学年に合った設備を配置することに決まったのです。
 導入後も、現場の声は大切にしています。今年6月に行ったアンケートでも、教員も子どもたちもとても満足しているという結果が出ましたし、実際に教室を訪れて子どもたちが嬉々として授業に取り組んでいる様子を見ると、本当に良かったと感じますね。
 今後の課題としては、せっかくある設備をいかに活用するかということ、さらにICTに依存しすぎないように、黒板などとの使い分けのバランスなどもテーマにした研修も行っていくべきだと考えています。また、小学校に加え、市内の中学校のICT環境をさらに拡充していくことも課題ですね。

品田 彰 校長

齋藤 俊明 指導係長

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