公開日:2012/11/14

文部科学省が公表した『大学改革実行プラン』とは…

「大学改革」は、待ったなし!

大学の「質の保証」「グローバル化(国際化)」等々、いわゆる「大学改革」については、平成20年12月に文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会(中教審)が、平成20年12月に答申した『学士課程教育の構築に向けて』においても大きく謳われ、それぞれの大学では、これまでに粛々と改革の歩みを進めていたところである。
 そうした中、本年6月初旬、文部科学省(以下、文科省)は、「大学改革は、待ったなし!」との認識から、改革のための8つの方向性を示した『大学改革実行プラン―社会の変革のエンジンとなる大学づくり―』を公表した。
 本年度から平成29年度までの実行プランであり、3期に分けて実施される。

大学改革実行プラン』を集約するに至ったいきさつについて、文科省は、「現在、日本は少子高齢化の進行や地域コミュニティの衰退、グローバル化によるボーダレス化、新興国の台頭による競争激化といった急激な社会の変化や東日本大震災という国難に直面している。そのような状況において、社会の変革を担う人材育成、知的基盤の形成やイノベーションの創出など、”知の拠点”として、大学が、この国の発展に果たすべき役割は極めて大きく、かつ、多様である。現下の日本の状況下においては、大学改革は待ったなしの状況であり、実行が求められている。そのため、日本が直面する課題や将来想定される状況をもとに、目指すべき社会、求められる人材像、目指すべき新しい大学像を念頭におきながら、大学改革の方向性を『大学改革実行プラン』として取りまとめた」としている。

『大学改革実行プラン』の全体像

 文科省では、『大学改革実行プラン』をまとめるにあたり、
 「求められる人材像」として、

 ・生涯学び続け、主体的に考え、行動できる人材 
 ・グローバル社会で活躍する人材、イノベーションを創出する人材 
 ・異なる言語、世代、立場を超えてコミュニケーションできる人材

を掲げ、「目指すべき新しい大学像」として、

 ・学生がしっかり学び、自らの人生と社会の未来を主体的に切り拓く能力を培う大学
 ・グローバル化の中で世界的な存在感を発揮する大学 
 ・世界的な研究成果やイノベーションを創出する大学 
 ・地域再生の核となる大学 
 ・生涯学習の拠点となる大学 
 ・社会の知的基盤としての役割を果たす大学

を念頭においている。
 この前提等を踏まえて、『大学改革実行プラン』は、以下に示す、2つの大きな柱と8つの基本的な方向性で構成されている。とくに、2つの大きな柱に対しては、「社会との関わりの中で、新しい大学づくりに向けた改革を迅速かつ強力に推進する」と述べている。

一.激しく変化する社会における大学の機能の再構築

 (一)大学教育の質的転換と大学入試改革
 (二)グローバル化に対応した人材育成
 (三)地域再生の核となる大学づくり(COC=Center of Community構想の推進)
 (四)研究力強化:世界的な研究成果とイノベーションの創出

二.大学の機能の再構築のための大学ガバナンスの充実・強化

 (五)国立大学改革
 (六)大学改革を促すシステム・基盤整備
 (七)財政基盤の確立とメリハリある資金配分の実施(私学助成の改善・充実―私立大学の質の促進・ 向上を目指して―)
 (八)大学の質保証の徹底推進(私立大学の質保証の徹底推進と確立〔教学・経営の両面から〕)

 なお、これらを骨子にして、国としての大学政策の基本方針『大学ビジョン』の策定が今年度中に行われる。

三段階で実施される『大学改革実行プラン

 文科省は、『大学改革実行プラン』について、今年度(平成24年度)と第二期教育振興基本計画期間(平成25年度~29年度)の5年余を「大学改革実行期間」と位置付け、次のような3つのフェーズで、スピード感と実行力を持って取り組むとしている。

◆第1フェーズ(24年度:改革始動期) ―国民的議論・先行的着手、必要な制度・仕組みの検討―

・『大学ビジョン』の策定
・大学改革フォーラムの全国展開
・グローバル教育拠点の形成
・大学のガバナンス強化
・「国立大学改革基本方針」の策定
・私立大学の教育活性化のためのメリハリある支援の強化 等

◆第2フェーズ(25・26年度:改革集中実行期) ―改革実行のための制度・仕組みの整備、支援措置の実施―

・学生の「主体的な学び」の強化
・大学情報の公表の徹底(「大学ポートレート」)
・評価制度の抜本改革
・質保証の支援のための新たな行政法人の創設
・大学の研究力強化のための支援の加速化
・「国立大学改革プラン」の策定
・私立大学の教育活性化の多様な展開 等

◆第3フェーズ(27~29年度:改革検証・深化発展期) ―取組の評価・検証、改革の深化発展―

・大学改革の取組を評価・検証
・大学改革を深化発展

【改革の目指す主な具体的目標・ 成果の例】

■生涯学び続け、主体的に考える力を育成

(目標)主体的な学習ができる環境を整備し、学生の学修時間を欧米並みの水準に。
(現状)1週間当たりの大学1年生の授業関連の学修時間(授業時間を除く):日本―約6割が1~5時間、アメリカ―約6割が11~15時間。

■グローバル社会で活躍する人材の育成

(目標)20代前半までに同世代の10%が、海外留学等を経験。
(現状)日本人の海外留学生数は、2004年の8万2・945人をピークに年々減少。

■我が国や地球規模の課題を解決する

 大学・研究拠点の形成
(目標)世界で戦える「リサーチ・ユニバーシティ」を10年後に倍増。

■地域の課題解決の中核となる

 大学の形成
(目標)全国の地域圏で、大学が地域再生の主要な役割を果たすセンターに。

『大学改革実行プラン』における8つの方向性

 次に、『大学改革実行プラン』の2つの柱に掲げられた8つの方向性について、それぞれの詳細な取組について紹介する。なぜ「待ったなし」なのか、そのわけが見えてくる。

一.激しく変化する社会における大学の機能の再構築

(一)大学教育の質的転換と大学入試改革

 大学教育における質の向上、質保証については、先の『学士課程教育の構築に向けて』において、とくに喫緊の課題として強く謳われた事項であり、大学入試改革については、平成12年の大学審議会の答申で「大学入試の改善」が強く求められ、その後『学士課程教育の構築に向けて』においても「入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)の具体化」を求められていたところである。
 この度の『大学改革実行プラン』においては、「大学教育の質的転換」と表現を異にしているが、まず、大学の現状を把握する上で、「教育方法、学修環境等を把握するための緊急調査」や「全国各地で大学教育改革に関するフォーラム(対話集会)」等が平成24年度から直ちに行われることになっている。

 『大学改革実行プラン』での「大学教育の質的転換」とは、「主体的に学び・考え・行動する人材を育成する大学教育への転換」と定義しており、「大学教育の質的転換の取組」として、教員と学生とが意思疎通を図りつつ、学生が相互に刺激を与えながら知的に成長する課題解決型の能動的学修を中心とした教育へと転換することが必要であり、「教育課程の体系化」「組織的な教育の実施」「授業計画(シラバス)の充実」「教員の教育力向上、学生の学修環境の整備などを進めるための全学的な教学マネジメントの改善」と連動して行われることが肝要である、としている。
 また、「産業構造の変化や新たな学修ニーズに対応した社会人の学び直しの推進」もテーマとして掲げられおり、大学の取組として、ICTや通信教育の活用を進めつつ、産業界と大学が協働してプラットフォームを構築し、対話の深化・好事例の共有・情報発信を図ることが必要、と述べている。

 「大学入試改革」においては、「高校教育の質保証とともに、意欲・能力・適性等の多面的・総合的な評価に基づく入試への転換の促進」が謳われ、「学ぶ意欲と力を測る大学入試への転換」を求めている。
 具体的には、「高校段階での学力状況を多面的・客観的に把握する様々な仕組みの検討」、「高校・大学の教育と連動した入試改革」「思考力・判断力・知識の活用力(クリティカルシンキング)を重視した入試への転換」「センター試験の改革」等が挙げられている。

 この「大学入試改革」については、今年度から中央教育審議会等で検討を進めるとしている。

(二)グローバル化に対応した人材育成

 大学の「国際化」は、これまでにも大きな課題として『学士課程教育の構築に向けて』においても「国際的通用性を備えた、質の高い教育を行うことが必要」と強く求められおり、『国際化拠点整備事業(大学の国際化のためのネットワーク形成整備事業)』や、2020年を目処に30万人の留学生の受入れを目指す『留学生30万人計画』も遂行されているところである。
 今回の『大学改革実行プラン』においては、さらに踏み込んで、「拠点大学の形成・学生双方向交流の推進(日本人学生の海外留学の拡大、留学生の戦略的獲得)などによる、大学の国際化の飛躍的推進」を第一に掲げ、各大学が、卒業時の外国語力スタンダード(例:TOEFL iBT80点)の設定とこれを満たす学生数、卒業時における単位取得を伴う海外留学経験者数などの達成目標の設定を行うことなどを求めている。この取組については、本年24年度から強化されることになっている。
 併せて、海外留学の標準テストであるTOEFL、企業における英語力の指標としてのTOEICを念頭においた「入試におけるTOEFL・TOEICの活用・促進、英語による授業の倍増」、研究者養成の性格が強かったこれまでの博士課程教育を改革し、俯瞰力・独創力を備え、産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成する「リーディング大学院」の構築を支援しつつ、「産学協働によるグローバル人材、イノベーション人材の育成推進」等についても掲げられている。
 まさに、留学の人的な相互交流による「国際化」の促進のみならず、産業界との連携を図りつつ、世界との対峙を意識した方針と見て取れる。

(三)地域再生の核となる大学づくり(COC=Center of Community構想の推進)

  本項目をまとめるにあたり、文科省は、①大学の教育研究が、社会の課題解決に十分応えていない ②学生が大学で学んだことが、社会に出てから役立っていない ③地域と教員個々人のつながりはあっても、大学が組織として地域との連携に臨んでいない との認識に立ち、大学等(短大・高等専門学校を含む)が、地域の課題を直視して解決にあたる取組を支援し、大学の地域貢献に対する意識を高め、その教育研究機能の強化を図ることを目標としている。

 その実現に向けて、具体的に3つのテーマが挙げられている。

①地域人材の育成・雇用機会の創出

・社会人のニーズに対応したキャリアアップ、就業等、学びの場の提供による社会人学生の受入れなど、社会人に対する学び直しの場を提供。
(例:結婚を機に退職した教員や看護師が、大学の講座を受講して、再び職場に復帰 等)
・超高齢化社会に対応した学びや交流の場を提供。
・地域の産業界と連携した研修等を提供。

②地域活性化・地域支援の取組

・学生による地域の子ども達への支援や、商店街活性化などの活動。
(例:地域づくり考房「ゆめ」による外国籍児童との交流活動【松本大学】)
・震災や原発事故などの災害による影響や改善策についての調査研究。
(例:避難所や仮設住宅で暮らす子ども達の学習・遊び支援【福島大学】)

③産学連携・地場産業の振興

・地元企業が直面している技術開発上の課題に対する助言、地域の特産である農産物の栽培方法や品種改良など、地域に対する研究成果の還元。
・研究成果の社会実装に向けた産学連携拠点の構築と産学連携機能の高度化・ネットワーク化。
・受諾研究や共同研究など、地域の企業等の個別ニーズに対応した研究開発。

 以上の大学COC機能の強化については、平成25年度から逐次実施されることになっている。

(四)研究力強化:世界的な研究成果とイノベーションの創出

  先般9月11日、イギリスの大学評価機関:クアクアレリ・シモンズ社が行っている「QS世界大学ランキング2012~2013」において、昨年3位に甘んじていたマサチューセッツ工科大学(米)が、ケンブリッジ大学(英)、ハーバード大学(米)を抜いて、初の1位を獲得したと発表があったばかり。そのわけは、論文引用数や学生一人当たりの教員比率が飛躍的に伸びたからと伝えられている。ちなみに、東京大学―30位(昨年25位)、京都大学―35位(昨年32位)、早稲田大学―198位(昨年185位)、慶應義塾大学―200位(188位)。アジアのトップは、香港大学で、23位(昨年22位)である。
 こうしたランキングの根拠については、種々の批判もあるものの、世界の目が集中し、一喜一憂していることに違いない。
 気になって、一昨年を見たところ、東京大学24位、京都大学25位であったことからも、日本を代表する大学が徐々に順位を下げていることが窺える。
 
 『大学改革実行プラン』に話を戻すと、文科省はその中で、「国際的に見ると、全体として我が国の研究力は、相対的に低下傾向」「世界で戦えるリサーチ・ユニバーシティ(研究開発活動に重点を置く大学)の層が薄い」と明言している。
 その原因として、
・研究者一人当たりの研究支援者数が低下し、諸外国に比べ低水準。
・海外派遣研究者数の伸びは横ばい。長期派遣は、ピーク時の半分以下。
・国際共著論文の割合が低い。
・民間からの研究資金等が近年減少。等を挙げ、「大学の研究体制・環境の全学的・継続的な改善」を重要課題と捉え、次のような取組を、平成24年度から逐次実施することとしている。
・大学の研究力強化促進のための支援の加速化。
・研究拠点の形成・発展のための重点的支援。
・研究システム・環境改革の促進。
・産学官連携の推進。

二.大学の機能の再構築のための大学ガバナンスの充実・強化

(五)国立大学改革

 国立大学改革については、グローバル化やイノベーションの創出をはじめ、社会的課題に対応できる新たな国立大学を目指して、すでに平成24年度予算に138億円を計上し、「国立大学改革推進事業」として、先行して実施されている。
 平成24年度は、国としての改革の方向性を示した「国立大学改革基本方針」を策定。25年中には、国立大学個々のミッションの再定義と「国立大学改革プラン」を策定し、実行に移される。平成25年度の概算要求では、170億円を計上。
 改革の主な内容は、次の通り。
・すべての国立大学の学部・学科のミッションを再定義。
・大学の枠・学部の枠を越えた連携・再編成。
(例:「リサーチ・ユニバーシティ」群の強化。機能別・地域別の大学群の形成)
・海外・国内大学との連携の促進。
・国立大学法人の評価の在り方。
・国立大学のガバナンスの強化。
 以上の実践により、国立大学の新体制の構築、および機能の強化が、これまでになく加速して進められる。

(六)大学改革を促すシステム・基盤整備

 ここで掲げられている主な項目は、①大学情報の公表の徹底(「大学ポートレート」) ②評価制度の抜本改革 ③客観的な評価指標の開発 ④大学教育の質保証の支援のための新たな行政法人の創設 である。
 整備されることによって、各大学にとっては、共有化・効率化が図れることにつながる。

①大学情報の公表の徹底(「大学ポートレート」)…平成24年度に先行実施。本格実施は、平成26年度。

 情報の公表は以前から求められており、データベースを用いた教育情報の活用・公表のための共通的な仕組みを構築しようというもの。ねらいは、各大学の業務負担の軽減。

②評価制度の抜本改革…平成25年度より 中央教育審議会で逐次具体化を目指す。

 現在の認証評価は、法令適合性など最低基準の確認が中心だが、機能別分化に対応し、強み・特色を伸ばす多様な評価への転換など「評価を通じた質の保証・向上の促進」、情報公表や評価制度間の連携を図ることによる「評価業務の効率化」を目指す。

③客観的な評価指標の開発

 大学の教育力、研究力、地域貢献、国際性などに関する強みを客観的に明らかにする指標を開発すると同時に、各大学の取組の進展や伸び率等に着目した指標を開発し、各大学の機能強化等での達成目標・ベンチマークとしての活用を目指している。

④大学教育の質保証支援のための新たな  行政法人の創設…平成26年4月創設見込み

 平成24年1月、「独立行政法人の制度および組織の見直しの基本方針」の閣議決定を受けて、大学入試センターと大学評価・学位授与機構を統合し、廃止される国立大学財務・経営センターの業務を承継する新たな行政法人を創設。
 学習到達度把握のためのテスト開発や学習行動の把握のための全国調査、認証評価・学位授与などの業務を実施。両法人の統合により、大学の入口から出口まで一貫した教育の質の保証を担う機能の強化を図る。

(七)財政基盤の確立とメリハリある資金配分の実施(私学助成の改善・充実―私立大学  の質の促進・向上を目指して―)

 大学の約8割を占める私立大学の質の向上が、日本の大学の底上げにもつながることであり、文科省は、「成長分野の人材育成、国際化への取組、社会人受入れといった、社会・経済の新たな成長に向けた取組への支援」や「建学の精神、特色を生かした教育改革の新たな展開を支援するための私立大学の物的環境の整備」(私立大学教育研究活性化設備整備事業)を、メリハリのある配分をもって、平成24年度中から直ちに実施する。
 「私立大学教育研究活性化設備整備事業」については、すでに平成24年度の予算において、31億円計上されており、25年度概算要求でも、45億円を計上している。
 さらに、25年度には、新たに「私立大学等改革総合支援事業」(概算要求125億円)を設け、「大学教育の質的転換や特色を発揮して、地域の発展を重層的に支える大学づくり、産業界や国内外の大学等と連携した教育研究など、私立大学等が組織的・体系的に取り組む大学改革の基盤充実を図るため、経常費・施設費・設備費を一体として重点的に支援する」としている。

(八)大学の質保証の徹底推進(私立大学の質保証の徹底推進と確立〔教学・経営の両面から〕)

 設置基準の明確化等による一貫したシステムにより、大学の質を確実に保証する「教学の質保証のトータルシステムの確立」および、経営上の課題を抱える学校法人について、実地調査等を経て早期の経営判断を促進する「早期の経営判断を促進するシステムの確立」を平成24年度から直ちに実施するとしている。
 これによって、「大学としてふさわしい実質を有するものについては、それぞれの特性を活かした機能別分化に応じた適切な支援を進める」ものの、法令違反等、教学上問題がある大学に対しては、学校教育法により、改善勧告・改善命令・組織廃止命令が発令され、また、経営改善の見込みがなく、教育の継続に悪影響を及ぼす学校法人に対しては、私立学校法により、役員解職勧告・解散命令が発令されることになる。
 総じて、「社会のステークホルダーの信を得られる質の高い大学を保証するシステム」を目指し、「社会変化に適応できない大学等の退場もやむなし」としている。

   *   *   *

 「待ったなし!」の勢いから、本年度から”実行”に移される項目もあるものの、多くは、今後、中央教育審議会等で検討されることになる。「大学改革」は、まさに喫緊の課題であり、しばらくは目が離せない。

●『大学改革実行プラン』の詳細については、文部科学省サイトhttp://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/06/1321798.htmよりご覧ください。

大学ビジョンについて ☆『大学改革実行プラン』文部科学省・平成24年6月公表より

大学ビジョンの策定による戦略的な政策展開 *平成24年度中に策定

大学ビジョンの策定 国としての大学政策の基本方針
【主な項目等】
◎20〜30年後を展望した日本の将来像、求められる人材像、社会的課題に対応した教育・研究の国家戦略
◎産業構造の変化等に対応した高等教育、大学教育に対する進学需要
◎大学の果たすべき役割・機能と課題(人材育成、イノベーション創出、地域貢献等)
◎大学政策の方向性

大学政策の戦略的展開
教育振興基本計画

●大学関係予算の戦略的配分
 ・大学ビジョンに基づく配分方針の策定
 ・既存の施策事業の検証・見直し 等

●制度等の見直し・整備
 ・評価制度の改革、大学ガバナンス強化
 ・多様な大学間連携の促進のための制度整備 等

●国立大学改革の推進
 ・ミッションの再定義
 ・国立大学改革プランの策定・実行 等

●政策課題への計画的取組
 ・地域再生の核となる大学づくり(COC構想)の整備
 ・「主体的学び」のための学修環境の整備 等

大学ビジョンの内容の構成イメージ

1.20〜30年後を展望した日本の将来像、求められる人材像

■20〜30年後の日本と世界の展望を踏まえた、日本が直面する課題
 少子高齢化、産業構造・就業構造の変化、高付加価値を有するイノベーションの創出、高い専門的・汎用的能力を有する人材の量的確保 等
■この課題解決のために、求められる能力
 様々な分野での卓越した能力、異文化・異言語の相手との協働、世代・立場を越えたコミュニケーション能力 等
■求められる人材像・大学教育に対する進学需要
 ・新たな価値を創造する人材、優れた価値をグローバルに展開する人材、地域を支える人材 等
 ・新たな雇用が見込まれる成長分野(医療・介護等)で必要とされる高等教育修了者 等

2.大学の果たすべき役割・機能と課題

■大学が果たすべき役割・機能
 ①生涯学び続け、主体的に考える力を持った人材育成   ②社会・経済の発展を牽引する人材育成
 ③世界的な研究成果とイノベーションの創出       ④地域再生・地域課題解決における中核としての成果の発揮 等
■現在の大学の課題
 ①大学教育が、社会経済の求める人材ニーズに対応していない ②社会人学生・留学生の割合が低く、人材の流動性を促す仕組みとして不十分
 ③経営上・教学上課題のある大学の存在           ④研究で世界と戦える大学数が少なく、その地位が低下している
 ⑤大学の持つシーズ・リソースが社会で十分生かされていない 等

3.大学政策の方向性

■大学教育の質的転換 〜他の高等教育機関との役割分担と連携の下、学士課程、修士課程、専門職学位課程、博士課程を通じて実施〜
 ・高校教育改革、入試、大学教育改革の一体実施 ・学修時間の増加、教員の組織的教育、学習環境の整備等
 ・学修成果の把握(アセスメントテスト等)   ・社会人学生・留学生の受入れ拡大
 ・高等教育における実践的キャリア教育・職業教育の充実 等
■戦略的な機能強化
 ・層の厚い「リサーチ・ユニバーシティ」・研究拠点の形成  ・グローバルに活躍する人材育成、国際化の拠点大学の形成
 ・地域再生の核となる大学・大学群*(COC=Center of Community)の形成  「*」…大学、短大、専門学校 等
 ・多様で質の高い中間層の形成(社会人の学び直しも含む)等
■システム・基盤整備
・大学ビジョン等に基づく、メリハリある戦略的資源配分
・大学群の形成に向けた大学連携の推進(国際展開のための大学間連携、連携のための多様な制度的枠組みの整備)
・世界標準の質保証の仕組みの整備(大学ポートレート、評価制度改革、客観的指標整備等)
・大学の質保証の徹底推進(質確保のためのトータルシステムの確立、きめ細かい経営指導や支援、教学上問題のある大学への厳格な対応)
・質的転換のための公財政投資の充実、大学ガバナンス強化 等

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