公開日:2008/12/1
【フラッシュ型教材実践レポート】
教員向けの「フラッシュ型教材」研修のコツは、
トライアル&エラーで気づきを促すことにあり。
教材を作ること、三度。
作るたびにコツを会得し、完成度も向上
わざと失敗を経験させることで、気づきを促し、しっかりと体得させる。授業でよく用いられるこの手法は、教員向け研修でも有効だ。長崎県教育センター主催の『初心者のための、「使って覚える」ICT活用基礎』研修講座でも、この手法でフラッシュ型教材のポイントを、参加した先生たちの心に染みこませていた。
「ではみなさん、フラッシュ型教材を実際に体験してみましょう!」と、本多先生の元気な声でスタートした研修講座。今日初めてフラッシュ型教材に触れる先生たちは、「草花の名前を答える」「仮分数を帯分数に直す」といったフラッシュ型教材の見本に触れた後、本多先生の指示でいきなり教材の作成に取りかかり始めた。4人1組のグループ内で、まず各自が問題を考えて紙に書き、それを班長がとりまとめて4問共通の「発問」を考えたのだ。
各自がバラバラに問題を考え、それから発問を考えるのだから、カオス状態になるのは必然。算数の問題、漢字の問題、地理の問題などが混在し、先生たちは「この問題に共通する発問なんて……ないよね」と四苦八苦。さらに、やたらと難解な問題や、ダラダラと文章の長い問題などに触れ、先生たちに気づきが生まれた。
「まず最初に発問とテーマを決めることが先決だね」 「パッと見てわかる、そして答えられる発問と問題にしないと、テンポよく行えない」 「答えが2つ以上ある問題だと、とまどう。一問一答形式が向いている」
この気づきを踏まえた上で、今度は班で協力して1つの教材を作ることに。すると、先程とは見違えるような、優れたフラッシュ型教材を、先生たちは作り出し始めた。魚へんの漢字の読み方を答える国語科の教材、野菜の切り方の名称を答える家庭科の教材、年号を答える社会科の教材などなど。
「冒頭で私が見せた見本のようにヒントを入れてあげると、即答できない子どもも解けるようになりますよ」と本多先生がアドバイスすると、先生たちはさっそくヒントも取り入れていた。
こうして完成した教材を、他の班にも見てもらった後、気づいたポイントを話し合って三度目となる教材作成に挑戦。
「シンプルな問題の方がパッパッと答えやすいし、やってておもしろい」ことに気づいた先生たちは、さらに教材をブラッシュアップ。地図記号を答える問題、首都を答える問題など、洗練された教材を作り上げた。
三度も教材を作ることで、問題のレベルや見せ方、答えさせ方を工夫する大切さを、体験的に学んだのだ。
そして作るたびに、先生たちが作る教材はみるみるレベルアップしていった。
ついには、フラッシュ型教材作成の
コツと技術を全員が習得
紙ベースでの教材作成でフラッシュ型教材のコツをつかんだ先生たちは、パソコンでの作成にも挑戦。チエルのフラッシュ型教材データベースを見て、気に入った教材をダウンロードし、その教材をアレンジする形で自分なりの教材作りに取り組んだ。
「パソコンだと、コピーや修正が容易なので、既にある教材の一部分だけを変えてオリジナルの教材を作れます。問題内容を変えるだけでもいいのです」
明治期の文学作品の作者を答える問題、元素記号を答える問題など、先生たちは"自分の授業ですぐ使える"フラッシュ型教材を、短時間で制作。フラッパ(チエルが提供している、フラッシュ型教材ビューワー。ランダム表示や、出題前のカウントダウンアニメを出せる)の使い方も学んでいた。
「これはおもしろい! 子どもが夢中になるのもうなずける」
「コツさえ使えば、簡単に作れるので、教師も楽チン」
と、先生たちは口々に、笑顔で感想を述べ合っていた。
「フラッシュ型教材は万能ではありません。文部科学省の言う『確かな学力』のうち、思考力や判断力を鍛えるのには向いていません。しかし、『知識・技能』を定着し、『学ぶ意欲』を高めるのには、とても効果的です。フラッシュ型教材を使うことで、より効率的に繰り返し学習でき、学びが定着する。そして子どもの顔が上がり、大きな声が出て、学習意欲がアップします」
そんな本多先生の解説を噛みしめながら、参加した先生たちは自分が作った教材を持ち帰っていった。
3時間ほどの研修で、参加した先生たちはフラッシュ型教材を作成・使い方のコツをしっかりと学び、作成する技術も身につけた。自分の学校に戻ってからも、きっとフラッシュ型教材を使うことだろう。