教室の外でも、学びに寄り添う大学へ学生主体の学びを支えるICT環境
                            ―北海道―
                            藤女子大学
                        
藤女子大学では、学内のICT環境整備の一環として、eラーニングシステム『GLEXA for アカデミック』を導入。出席管理や授業運営の効率化、振り返り学習や発音指導まで、幅広く活用されている。コロナ禍を経て学びの形が変化する中、「教室の外」でも学生一人一人の学習に寄り添える環境づくりが定着しつつある。
 
                                藤女子大学
                                        北16条キャンパス
                                    〒001-0016
                                    北海道札幌市北区北16条西2丁目
                                
カトリック精神に基づいた女子教育を展開。少人数教育を生かしたきめ細やかな学習支援に加え、ICT環境を整備し、教室内外での学びを支える体制を強化している。
                            個に寄り添った教育とICT活用
                            新たな学習環境の実現を目指して
                        
                        藤女子大学は、1925年の設立以来、カトリック精神に基づいた女性の人間的成長と社会貢献を重視した教育理念を掲げている。現在、文学部、ウェルビーイング学部、ウェルビーイング学研究科を擁し、言語・文化・社会や、地域社会・食・子供に関する分野など多彩な学びを提供している。少人数教育を生かした、きめ細やかな指導により、学生一人一人の可能性を引き出すことを重視してきた。
近年、社会のデジタル化が進む中で、同大学でも従来の対面教育の質を保ちながら、新たな学習環境の構築が求められている。変化する社会のニーズに応えるため、ICT活用を積極的に推進し、教室内外での学びを支える体制強化に取り組んでいる。特に、女性のキャリア形成支援という観点からも、現代的なスキルの習得と伝統的な教育理念の融合を図っている。
コロナ禍が浮き彫りにした学習支援の課題
パンデミック以降、オンライン授業が普及し、学びの場が教室の内外へと広がった。藤女子大学でも、全学的に自学自習を支える体制整備が急務となり、「いかに学生一人一人の学びに寄り添うか」が新たな課題として浮かび上がったという。
「コロナ以前から、授業外学習の部分で活用できるものはないかという検討が重ねられていました」と工藤雅之教授は振り返る。コロナを契機としたリモート授業の一般化により、学習管理システム導入の必要性はより鮮明になった。
従来の対面授業では見えにくかった学生個々の理解度や課題の達成状況をどう把握し、どのように支援につなげていくか。学生と教員の間に生まれた「距離」をどう埋めていくか。特に英語教育における発音指導では、学生が人前で発音することへの恥ずかしさもあり、効果的な個別フィードバックに多くの時間と労力が必要だった。また、管理栄養士養成課程では出席管理の厳格化が求められ、その確認作業が教員の負担増につながり、課題となっていた。
システム活用による発音の指導と振り返り学習の充実した取り組み
これらの課題に応えるべく、同大学ではLMS(学習管理システム)の導入が決まり、複数のソリューションを比較検討することになった。その中で、インターフェースの使いやすさや柔軟なカスタマイズ性、教職員の評価に加え、学生の使用感も踏まえて『GLEXA for アカデミック』の導入が決定した。
英語教育を担当する工藤教授の講義では、同システムの録音機能を活用した発音課題が行われている。これにより、学生は、「L」と「R」など聞き分けが難しい発音を録音し、納得するまで何度でも録音し直して提出できるようになった。
「発音は人前では恥ずかしさを感じやすく、教室ではなかなか練習できない学生もいます。それが自宅では何度でもやり直せることでより深く学べるようになり、限られた授業時間では難しい個別指導が行えるようになりました」(工藤教授)
文法指導の講義では、毎回の講義後に「何を学んだか」「以前の知識とどうつながったか」といったリフレクション(省察)を記述し、同システム上で提出。教員は内容を確認した上で、個人情報を除いた形で他の学生にも共有している。
さらに、大学レベルでのより発展的な英語運用として、文の句構造に重点を置いた基礎的な文法指導とリフレクションを組み合わせた授業を実施。工藤教授は学生のメタ認知活動を通じた振り返りを整理して、クラス全体に共有することで、互いの学びに刺激を受け合う学習コミュニティを形成している。
「自分の学びを言語化し共有することで、学生は『自分にもできる』という実感を持てるようになるのです」(工藤教授)
実際に、英語が苦手だった学生が「英語が好きになった」「使えるようになった」と話すケースも多く、英語で自らを表現することに関する効力感の向上がうかがえる。自己効力感が上がるとさらに高度な課題にもチャレンジできるようになり、到達すればさらに満足感が増して次の課題へとつながる「良い学びの循環」が、この成功の背景にある。
加えて、『GLEXA for アカデミック』は出席管理や授業アンケートなど、授業運営にも幅広く活用されている。特に管理栄養士養成課程では出席の厳格化が求められるため、「出席/遅刻/保留」から「出席/非出席」の2区分に変更し、シンプルで厳格な管理を実現した。行政への提出書類作成もスムーズになり、教員の業務効率化に貢献している。また、授業アンケートもオンライン化し、集計作業を自動化。授業改善のプロセスにおける効率が向上しているという。
フィードバックを迅速に学生へ還元できる点も大きな利点だ。評価結果の共有を通じて、学生が自身の学びを客観的に見つめ直す機会となり、授業への主体的な参加を促している。
同システム上では、学生との双方向コミュニケーションも日常的に行われている。課題提出だけでなく、質問や相談、遅刻連絡なども可能で、メールやLINEよりも気軽にやり取りできるという。システム利用には事前の設定が不要なため、学生にとってシンプルなコミュニケーション手段となっている。
「『GLEXA for アカデミック』を開けば、そこに先生が『いる』と感じるのだと思います」(工藤教授)
授業に関する教材やお知らせも一元管理されており、学生にとっては安心感のある学習環境だ。授業外での補足教材や発展的な内容の共有も可能になり、関心を持った学生への個別対応がしやすくなったという。
「LMSは授業の入り口。その先の学びにどうつなげていくかが重要です。同システムがあることで、個別にフォローできる仕組みが整いました。さらに、学生の反応をもとに教材をアップデートでき、その変化を記録に残せるため、教える側の姿勢も柔軟になりました」(工藤教授)
作成済みの教材やワークは翌年以降も再利用でき、デジタルならではの編集性を活かして授業改善に役立てられている。同システムは他大学との連携にも対応しており、教育資産の共有・循環も広がりを見せている。
「一度作ったものを再利用することができるため、ワークロードを大幅に減らすことができています。『GLEXA for アカデミック』が、『授業の相棒』として常に授業のそばにいてくれるので安心です」と工藤教授はその評価を口にする。
                            ICTと対面教育との融合による
                            これからの教室の実現を目指して
                        
                         
                                    今後は、教育資産の共有・再利用を進め、LMSとデバイスの連携を深化させる構想が進行中だ。ビューアー機能との連携により、動画教材や資料を手元で確認しながら学べるような設計も検討されている。対面授業の時間外でも、継続的に学びにアクセスできる環境が整い、「教室の外でも教室の続きができる」新たな学習空間が形になりつつある。
「同じ授業でも、学生の反応や課題は年度によって異なります。記録があることで、次につなげられるのがデジタルの強みだと感じます」(工藤教授)
ICTと対面教育の融合による新たな学習環境を構築し、学生の主体的な学びと自己効力感の向上を引き続き支援していく。ICTを通して、どれだけ学生の学びに寄り添えるか。そんな問いを軸に、藤女子大学はこれからも「学生の学びに寄り添う教育」の実現を目指している。
 
                                    
                                        藤女子大学文学部
英語文化学科
工藤 雅之 教授                                    
 
                                                 
             
             
             
            