公開日:2026/8/3
英語で「自分の軸」を育てる。 読み、問い、語り合う―『ABLish®』が変える英語の授業
―大阪府―
追手門学院大学 (国際学部)
「英語を覚える」から、「英語で考え、語り合う」へ―。追手門学院大学 国際学部では、クラウド型の英語ニュース教材『ABLish®』(エイブリッシュ)を授業の核に据え、学生が自分の興味から世界の話題へと踏み出す学びを実践している。世界の時事ニュースなどの記事を読み、問いを立て、仲間と議論する。その一連の流れの中で、学生は英語力だけでなく「自分の軸」を育てている。国際学部の授業を率いる松宮新吾教授と、1年次から『ABLish®』を使い続けてきた学生たちに、その手応えを聞いた。
追手門学院大学
〒567-0013
大阪府茨木市太田東芝町1-1(総持寺キャンパス)
追手門学院大学は、1966年に開学し、現在は9学部3研究科を擁する総合大学。大阪府茨木市に2つのキャンパスを展開し、「独立自彊・社会有為」の教育理念のもと、先進的な教育を推進。近年は、新校舎や理工学部の開設、教育DXの推進により、志願者数は14年連続で増加しており、地域社会とともに新たな価値を創造する大学として進化を続けている。
「自分の軸」を育てる―松宮教授が『ABLish®』に込めた思い
松宮新吾教授が大切にしているのは、学生が自分自身の軸(アイデンティティ)を育てることだ。自分の考えを持つ「My World(我の世界)」と、他者と関わる「Our World(我々の世界)」を結びつけることを、英語学習の目的に据えている。
「従来の教材は文法や語彙の習得が主眼でしたが、『ABLish®』はそこから一歩進み、現代社会の課題を自分事として捉え、考え、行動するための批判的思考力や異文化コミュニケーション能力を養うことを重視しています」と松宮教授は語る。英語を世界と向き合う「道具」として使う発想の転換が、授業の出発点だ。
背景には、グローカリズムの実践者の育成を掲げる国際学部のポリシーがある。人間、社会、文化、言語など幅広く横断的に学び、多様な価値観を理解しながら、主体的に思考・判断して協働する姿勢を重んじている。SDGsに紐づいた教材が週3本配信される『ABLish®』は、こうしたリベラルアーツの学びと親和性が高い。同学部では、専門基礎科目と有機的にリンクさせ、英語による表現活動へとつなげている。
読む・考える・議論する・発信する―『ABLish®』を使った予習・モジュール学習
まず予習段階で、学生は毎週配信される3本の記事から興味のあるものを選んでクリップし、自身の意見をジャーナル(日記)としてまとめる。自ら問いを立て、自分の主張を表現していくプロセスそのものが学びの中心だ。
授業では、投稿内容をもとに冒頭の約20分間を共有にあてる。この時、「記事の英語表現を2〜3つは取り入れて自分のストーリーを語る」というルールを設けている。インプットをその場でアウトプットに変える仕掛けだ。
「読む、考える、議論する、発信することが一つの教材の中でつながるのが強みです」と松宮教授。自分で選んだテーマについて気軽に意見やリアクションを共有できるため、留学生も日本人学生も、英語と日本語を交えながら自然と発言が増えていくという。「『読みたい』から始まるので、英語への向き合い方そのものが変わっていきます」(松宮教授)
学生が語る、『ABLish®』の魅力
1年次から使い続けてきた学生たちの声も具体的で前向きだ。 ある日本人学生は「1年生の頃から毎週記事を読み、要約作成やプレゼンテーションを行う中で、英語を読むことが習慣になりました」と振り返る。ゼミ形式の授業でも、日本語と英語の両方で議論を重ねてきたという。別の学生は「とにかく分かりやすく、興味のあるトピックをとことん掘り下げられるのが良い」と語り、英語に苦手意識のあった学生からも「好きな分野なら読み進められ、自信につながった」との声が上がる。
留学生にとっても『ABLish®』は世界への窓だ。「日本や世界の多様な話題に触れられ、毎週新しい発見があります」。さらに、日本人学生との意見交換を醍醐味に挙げ、「同じテーマでも見え方が違う。一緒に議論することでお互いの視野が大きく広がりました」と語る。アンケートでも「スピーキングやリーディング力が上がるだけでなく、世界の時事ニュースも知ることができる」とあり、語学力と社会への関心が同時に育っている。
教員も実感する、活用のメリット
『ABLish®』を使うメリットは教える側にも表れている。特に「教材づくりや授業運営の負担を抑えながら、議論中心の能動的な学びを実現できる」点が教員から評価されている。週3回更新される最新ニュースが届くため、題材を探す手間が少ない。丁寧な指導と使いやすいツールがかみ合い、教室全体の学びを底上げしているのだ。実際、同学部の原准教授の授業でも『ABLish®』が教材として活用されている。ペアで選んだ記事の要約や意見を発表する活動を継続的に実施することで、学生は『ABLish®』を通じて、メイン教材だけでは扱いきれない幅広いトピックについて効率的に学べているという。
数字とグラフが示す、学びの成果
こうした学びは、確かな成果として表れている。2025年度の国際学部カリキュラム実施状況調査では、スピーキングを中心に総合的な英語運用能力の向上を実感する学生の割合が増え、「英語を使う」自信が着実に育っている。また、同調査では「異文化理解力や思考力、課題解決能力、人間関係構築力といった非認知能力の向上を認めている」学生の比率も向上。これからの社会で生きる「力」そのものが育っていることを示唆している。
成果は客観的なテストスコアにも見てとれる。TOEIC L&Rにおいて、1年次4月期と2年次1月期に受験したテストのヒストグラムを比べると、分布全体が高値側へ大きくシフトしており、スコアの水準が全体的に上昇したことがうかがえる。
「使う人が支払う」―受益者負担のサブスクモデルという選択
導入形態にも、同学部ならではの特徴がある。『ABLish®』を紙の教科書の代わりに学生自身が購入する「受益者負担のサブスクモデル」、つまり、実際に使う人が利用期間に応じて費用を負担するという、シンプルな仕組みを採用しているのだ。
定着までには工夫もあった。当初は購入に戸惑う学生も少なくなかったが、松宮教授は授業のたびに直接声をかけ続けた。あわせて、学生の知的好奇心を刺激する記事選びやディスカッションの工夫で「使いたくなる」状況を創出。「地道な働きかけの積み重ねが効きました」と振り返る。現在では未購入の学生は大幅に減り、教材を前提とした授業をスムーズに展開できている。
これからに向けて
今後について松宮教授は、時事ニュースの多言語化や、AIを用いた学習者のレベル把握の仕組みづくりに関心を寄せる。英語で「自分の軸」を育てる追手門学院大学の実践は、これからも『ABLish®』というツールとともに着実に前へ進んでいく。
*TOEIC は、エデュケーショナル・テスティング・サービス(ETS)の登録商標です。
国際学部
松宮 新吾 教授