公開日:2026/8/7

一斉授業から、一人ひとりの学びへ。 多目的に活きる語学情報演習室の20年

―宮城県―
仙台高等専門学校 (広瀬キャンパス)

語学の演習室は、語学のためだけのものではない―。仙台高等専門学校では語学情報演習室へチエルの語学学習支援システム等を導入して以来、英語のTOEIC演習にとどまらず、地理総合などの一般科目から、専門の実習、卒業研究の発表会場まで、幅広い授業をこの一室が支えてきた。中間モニターや一斉制御機能で効率的な授業環境を整えつつ、近年は生成AIの活用やBYOD化といった新しい流れにも柔軟な対応を進めている。「一人ひとりのペースで学べる環境」を軸に積み重ねてきた活用の実際とこれからの方針を伺った。

独立行政法人国立高等専門学校機構 仙台高等専門学校

独立行政法人国立高等専門学校機構
仙台高等専門学校

〒989-3128 
仙台市青葉区愛子中央4丁目16番1号(広瀬キャンパス)

宮城工業高等専門学校と仙台電波工業高等専門学校が2009年に統合し誕生。広瀬・名取の2キャンパスを擁し、最先端のICTやものづくり教育を展開。「高専ロボコン」でも全国トップクラスの実績を誇るなど、学生の主体的な探求・開発活動が非常に盛んな学校。

「一斉授業」の限界から──語学情報演習室導入の背景

 仙台高等専門学校が語学情報演習室を整備し、チエル製品を導入したのは2005年のこと。その背景には、当時の語学教育が抱えていた共通の課題があった。「それ以前の環境ではどうしても、一斉に音声を流して答えさせる『一斉授業』の形になってしまっていました。しかし、学生によって英語のレベルも学習の速度も異なります。学生がそれぞれのペースで演習に取り組める自由度のある環境をなんとか作りたい―それが、導入の大きなきっかけでした」と矢澤睦先生は当時を振り返る。

 『CaLabo® EX』の導入によって、各学生の進捗を教卓から一目で確認できるようになり、個別指導が実現。全員が同じタイミングで縛られることなく、それぞれの理解度に応じた「個別最適な学び」の土台がこの教室に構築されることとなった。

学生用の端末の隣に設置された中間モニター。細かな資料や教材の提示に活躍している。
学生用の端末の隣に設置された中間モニター。細かな資料や教材の提示に活躍している。

中間モニター『S600-OP』が実現する視覚的効果と、国際交流での「対面感」

 現在、この語学情報演習室において、教員から絶大な支持を得ているのが中間モニター『S600-OP』の存在だ。一般的な普通教室の場合、前方スクリーンにしか資料を投影できないため、後方の学生から「細かい文字が見えにくい」という不満が生じやすい。しかし、中間モニターを設置したことで、学生の手元で資料がはっきりと見えるようになった。さらに前方スクリーンと異なる画面を映せるため、切り替え機能を活用した多角的な授業が可能になっている。「前方スクリーンで全体の提示を行いながら、実際の細かい演習資料やPDF化された教材などは手元の中間モニターに映し出す、といった2つのソース(教材)を同時に切り替えて見せる授業ができます。普通の教室環境ではなかなか実践しづらいことなので、非常にありがたいですね」と矢澤先生はそのメリットを語る。

 この中間モニターのメリットは、タイや韓国といった海外の学校との国際交流(「ものづくり対抗戦」など)の場でも大いに発揮されている。「海外校とオンラインで繋ぐ時、中央の大きなスクリーンだけに相手の顔が映っているよりも、目の前の中間モニターで相手の表情が見える方が、より近くで『対面して会話している』というリアルな感覚を得られます。相手の顔をしっかり見ながら対話できる効果は非常に大きい」と小林英治先生は話す。一般教室のWi-Fi環境では通信が不安定になりがちだが、語学情報演習室の有線LANならではの安定した通信環境が、海外との大容量の映像・音声のやり取りをストレスなく支えている。

 また、時間割の空き状況に応じて、矢澤先生が担当する一般科目の「地理総合」の授業でもこの部屋が積極的に活用されている。中間モニターにスライドを映しつつ、前方スクリーンには資料集や地図帳の該当ページを大きく提示することで、視覚的にも非常に理解しやすい授業を展開。学生アンケートでも「普通の教室より見やすくて良い」と極めて高い評価を得ている。

紙からデジタルへ──『CaLabo® EX』による効率的な授業管理

 授業のタイムマネジメントや準備・管理の負担軽減において、『CaLabo® EX』の多様な機能が大きな効果を発揮している。

 矢澤先生は、学生の集中力を維持するため、TOEIC演習では「ヘッドセットを使用した個人演習は必ず10分間」と区切り、その後は全体スピーカーに切り替えて小テストを行うなど、15〜20分単位で活動にメリハリをつけている。

 次の授業との入れ替え時間は10分しかないが、ここで威力を発揮するのが一斉電源コントロール機能だ。「教卓から一斉にシャットダウンや再起動の操作ができ、全体画面で各マシンの状態を一目で確認できるため、10分の休憩時間でも終わりと始まりを遅らせることなく、スムーズに次の授業へと切り替えられます」(矢澤先生)

 また、小林先生は「ファイル配布・回収機能」を日々の英語の授業で日常的に活用している。「提示用の資料を学生に一斉に配信し、学生はそこにキーボードで直接答えやメモを書き込みます。それを授業の終わりにそのままデータとして回収し、ノート代わりとして使ってもらっています」と小林先生は話す。紙のプリントであれば発生していた印刷の手間や紛失リスク、重い紙の束を回収して数えるといった管理の煩雑さがすべてデジタルで完結。ペーパーレス化と同時に教員の業務効率化が達成された。

 学習を見守る「モニタリング機能」も効果的に機能している。教卓から「全員の画面がこちらから見えているよ」とあらかじめ伝えるだけで、学生たちが自律的に授業に集中する、落ち着いた学習環境が自然と保たれている。

放課後の「ロボコン」設計から「卒研発表」まで、マルチに活きる演習室

 この教室のポテンシャルは、語学や一般科目の授業だけに留まらない。高専ならではのユニークかつ多目的な運用が行われている点も特筆すべき特徴だ。

 例えば毎年2月には、全学的な「卒業研究発表会」の会場としてこの語学情報演習室が貸し出されている。これも、中間モニターやプロジェクターを駆使して複数の発表資料やソースをスムーズかつ綺麗に提示できるという、教室の優れた提示設備が評価されてのことだ。

 放課後には、この部屋が「高専ロボコン」に出場する学生たちの活動の場となることもある。演習室と同じフロアにロボコンの活動場所があるという位置的メリットも手伝い、時に学生たちが集まっては演習室のPC内にインストールされている3D CADソフトを立ち上げるなど、ロボットの設計に演習室を活用しているという。

 その他、学外向けの講座や研修会で使用することもあり、演習室は今や、語学、一般科目、学内活動や地域貢献の場へと、何通りもの役割にスイッチしながらフル活用されている。

生成AIの活用とBYOD化──次の一歩に向けて

 今後の展望として、仙台高専ではさらなるデジタル教育の深化と、学校全体のICTインフラの転換期を見据えている。

 小林先生は現在、英語のライティング指導において「生成AI」を取り入れる新しい試みに挑戦している。学生が自力で作った英文をAIに添削させ、返ってきた洗練された英文を、今度は学生自身がキーボードを使って打ち直すというプロセスだ。「スマホのタッチ操作に慣れている今の学生は、意外にもキーボード入力が不慣れです。社会で必須となるPCスキルを養う意味でも、AIが直した英語をタイピングして頭に刷り込むこのアプローチは、手で書くのとは異なる刺激となり、学びをより深めている手応えがあります」と小林先生は語る。

 さらに学校全体としては、今後のPC更新時期をきっかけに、私物端末を持ち込む「BYOD(Bring Your Own Device)」の方針を段階的に推進していく計画だ。これに伴い、すでに高専全体で導入しているクラウドサービスをシステム画面や中間モニターと連動させ、学生の持ち込み端末からシームレスに学習に参加させるなど、クラウドと融合したハイブリッドな活用方法を探り始めている。

 長年培ってきた有線LAN環境の安定性という強みをベースにしながら、BYODや生成AIといった最新トレンドをいかに融合させ、一人ひとりの学びを発展させていくか。仙台高専の語学情報演習室は、これからも時代の最先端を走り続ける。

*TOEIC は、エデュケーショナル・テスティング・サービス(ETS)の登録商標です。

総合工学科(一般科目担当)<br>矢澤 睦 教授

総合工学科(一般科目担当)
矢澤 睦 教授

総合工学科(英語)<br>小林 英治 准教授

総合工学科(英語)
小林 英治 准教授

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