管理職を巻き込んだ研修会と学校の状況に応じたサポートで活用を促進

―東京都―
足立区教育委員会

ICTを活用した多様なモデル校の設定や授業研究、情報公開などを積極的に行い、教育現場をさまざまな角度から支援している足立区教育委員会。区全体のICT整備の底上げにつながるこれまでの取り組みや教育委員会の考えなどを探究する。

管理職を巻き込んだ研修会と学校の状況に応じたサポートで活用を促進
ICTの活用が進むにつれ、子供たちの学習意欲が高まった事例も複数聞かれる。(写真はリーディングDXスクール連携協力校 足立区立西新井小学校)
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ICT活用が子供たちの学習力や意欲向上に寄与

 足立区のICT教育環境整備は2019年からスタートした。まずは先生のICT活用スキルの熟練度を上げることを優先し、子供たちへの端末整備は段階的に行う方針だったが、GIGAスクール構想の前倒しにより子供たちへの端末整備が加速した。

 足立区教育委員会 統括指導主事の西野厚氏は、「子供たちの端末は Chromebook™ を採用しました。Google Workspace for Education は多様なシーンで活用できると分かり、課題や成果の追求を目的に2021年度にICTモデル校を設定。以降、授業での実証や研究を重ね、ICT活用を区全体に拡大しています。おかげさまで、小学校だけでなく、中学校からもICTモデル校への応募が多数きています」と説明する。

 足立区にはICTモデル校が2024年1月末時点で5校ある。そのうちの1校である小中一貫校の興本扇(おきもとおうぎ)学園は、文部科学省のリーディングDXスクール事業の指定校で、Google for Education™ 事例校プログラムにも参画。同学園の先生からは、「ICT教育が進むにつれ、子供たちの学習意欲の高まりや学力向上など手ごたえを感じている」との声が寄せられる。

 西野氏は「勉強が苦手、あるいは字がきれいに書けない子供は、教科書やノートを目にすると『イヤだな』という気持ちが先立ち、学習意欲が低下しやすいと言えるでしょう。しかし、『キーボード入力なので手書きの必要がない』といったICTの特徴によってそうした気持ちから解放された結果、積極的に学ぶようになった事例をいくつか聞いています」と明かす。

研修・支援員・ソフトウェアなどさまざまなかたちでの現場支援

 足立区教育委員会では活用を促進するため、積極的に公開授業や研修を行っている。管理職を巻き込んだ研修をはじめ、「サポート研修会」を、よろず相談会といったかたちで実施している。

 また、学校の活用状況に応じてICT支援員の派遣度合いも変えており、より必要と考えられる学校には最大で週4で派遣するなど全体の活用促進を図っている。

 さらに、ソフトウェアでの支援も欠かさない。ICT教育環境整備の一環で導入したチエルの『InterCLASS®Console Support』の便利機能の1つである「QRコードかんたんログイン」は、キーボード操作に習熟していない子供でも二次元コードをかざすだけで Chromebook に簡単にログインできるため、特に低学年児童を受け持つ先生から今も支持されている。

 「チエル社の『InterCLASS® Filtering Service』も導入しているのですが、子供たちが家庭で端末を利用する際、有害サイトをブロックしたり、Webサイトを利用できる時間帯を指定したりできるため、先生や保護者からは好評です」(西野氏)

 西野氏は、「『何が分からないか分からない』という学校には視察に行き、必要なソリューションを見極めて提案しています」と語る。

積極的な情報発信などにより授業スタイルを最適化

ニュースレターなどで情報発信を積極的に行っている。
ニュースレターなどで情報発信を積極的に行っている。

 足立区教育委員会の今後の展望として、2024年度は3つのかたちでICTモデル校を用意する予定だ。1つ目は「GIGAスクール推進校」で、個別最適な学びを研究する学校を募集する。

 2つ目は校務にICTを取り入れてICT活用を促進する「DXモデル校」だ。担当指導主事が付き、モデル校限定の研修会、研究用書籍などが提供される。

 3つ目は「ICTメンター」だ。ICT活用に積極的な先生がいる学校には、学校全体の支援ではなく、その先生を直接サポートすることで、校内全体のICTスキル底上げを図るモデルケースを目指す。3つのモデル校を全面的に支援し、活用していくという。

 また、ICTに関する好事例の紹介など、情報発信に意欲的だ。ICTモデル校の定期的な公開授業はもちろん、ニュースレター「ICT通信」は2024年1月時点ですでに83号発行済みという。保護者の理解と協力を目的とした専用サイト「あだち学校ICT情報ひろば」の運営やリーディングDXの推進ポスターの作成など、啓発活動も継続。地域住民や近隣住民からは口コミで評判が広まっていると聞く。

 モデル校の設定や情報公開、研究の支援といった地道で積極的な活動が徐々に区内に浸透し、最近は子供たちに主体的・対話的で深い学びを実現させるための取り組みが積極的に行われるようになってきた。一方で、「前段階に、従来のような基礎的な知識習得の時間も設け、子供たちが能動的に探究していけるよう、サポートしてあげることは重要です」と西野氏は、ICT活用を通じた授業スタイルの最適化を常に考えている。

 ICTの活用は、先生の働き方改革にも大きく寄与する。「ICT活用が学校全体に広がることで、先生という仕事がより魅力的に見えるのではないでしょうか」(西野氏)

 足立区教育委員会の取り組みは、今いる先生や子供たちへの支援だけでなく、未来の先生の採用にもつながっている。

*Chromebook、Google for Education は、Google LLC の商標です。

統括指導主事<br> 文部科学省<br> 学校DX戦略アドバイザー<br> デジタル庁デジタル推進委員<br> 西野 厚 氏

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文部科学省
学校DX戦略アドバイザー
デジタル庁デジタル推進委員
西野 厚 氏


※ご紹介させていただいた所属・役職は2024年3月1日現在のものです

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