公開日:2023/5/30

第48回 全日本教育工学研究協議会全国大会(愛知・春日井大会)
~GIGAスクール環境の日常的な活用で実現する令和の学び~
参加レポート

チエル粟田が行く

本レポートでは、2022年10月28日・29日に開催された日本教育工学協会(JAET)が主催する第48回 全日本教育工学研究協議会全国大会(愛知・春日井大会)の様子をお届けします。本大会は、愛知県初、また3年ぶりに対面で開催することとなった大会で、1500人以上の参加者が会場に駆けつけました(チエル粟田)。

大会概要

 1日目の午前中は春日井市内6校で57の授業が公開されました。午後は、春日井市民会館で本年度より会長となられた高橋純先生による開会式、学校情報化先進校表彰、堀田龍也先生による基調講演、そしてシンポジウム「GIGAスクール環境の日常的な活用で実現する令和の学び〜公開校6校の実践から学ぶ~」が行われました。

 2日目は研究発表およびワークショップが開催されました。その後、トークセッション「若手教員が語り合う『GIGAスクール環境の日常的な活用で実現する令和の学び』」、そして閉会行事で締めくくられました。

 公開授業や基調講演、シンポジウム、特に盛況だった春日井市民会館大ホールでのトークセッションは別室への案内が出るほどでした。2日間を通し、本大会への期待や熱気を感じることができました。

プログラム

基調講演

 東北大学大学院・東京学芸大学大学院の堀田先生による基調講演では、文部科学省で議論されている最新情報や、公開授業での児童生徒の様子が紹介されました。

 講演内では「学習の基盤となる資質・能力」の考え方について次のように説明されました。

「学習の基盤となる資質・能力」の考え方。
「学習の基盤となる資質・能力」の考え方。

 インフラとしてICT環境整備(1人1台端末・高速ネットワーク・クラウド等)があり、その上に、「情報活用能力」と「(新)学び方」がある。さらにその上に、各教科等での深い学びがある。これらが必要なことは言うまでもないが、基盤となる資質・能力も重要であり、特に、(新)学び方である“自分で個別最適な学びができるスキル”や“協働的な学びに必要なスキル”にも目を向け、過度な一斉指導から脱却する必要がある

 さらに、インフラの必要性についても触れ、基盤となる高速ネットワークは必須な要件であることが言及されました。

シンポジウム

 シンポジウムでは、公開授業の対象となった各学校の活動を助言する先生方が登壇し、各学校に端末が導入されてから授業や学校が変わっていく様子が発表されました。

 高森台中学校の助言者兼シンポジウムのコーディネーターである高橋先生からは1人1台端末活用の新旧イメージが提示されました。

1人1台端末活用の新旧イメージ。
1人1台端末活用の新旧イメージ。

 「1人1台端末活用」が目指すのは、「従来授業+端末活用」という形式ではなく、「クラウド活用授業」である姿。クラウド活用授業では、一斉指導で必要なインプットや課題・活動を確認した後は、白紙が共有されることで途中の共有が行われ、自己判断で他者参照や協働ができるようになる

 端末活用の目指すべき姿として、非常に印象的な内容でした。

 高橋先生のまとめとして、「まずはやってみる、良かったら続けてみる」ことの重要性が示されたほか、助言を通して指示がなくとも学習が進む子供たちが増えていった(=究極の指示が実現した)ことや学びの質が上がったこと、それぞれの取り組みが作業ではなく活動となることで全員の頭がフル回転できている様子などが挙げられました。

トークセッション

具体的な活用事例1。
具体的な活用事例1。

 トークセッションでは、高橋先生を中心に、授業公開校の若手教員から具体的な活用事例が紹介されました。

 子供たちが自ら学習計画を立てるバスケットボールの授業で、学習計画を繰り返し考えさせたところ、当初は「練習試合」とだけ書かれていた部分が具体的な目標を定めた計画に更新され、結果学習の質が高まったという事例が紹介されました。また、チャットを積極的に使うことで子供たちの間でお互いの良いところを言い合う習慣ができる事例も紹介されました。

 各先生方の報告を受けた高橋先生は4つのポイントを挙げました。

具体的な活用事例2。
具体的な活用事例2。

 第1に、学習基盤を整えたり、基礎・基本の習得を重視したり、学習規律を整えることで子供が迷わない基盤作りが必要である。第2に、ICT活用はとにかく使ってみることが重要。即時フィードバックや白紙から共有し他者・中途参照による協働をしやすくすることで活用が進むだろう。第3に、教員が毎回授業の見通しを示すが、子供たちが計画を作成したり、自己評価をしたり、「問」と「答」が遠い場合でも個別学習を実現することが大事。振り返りなどアウトプットを必ずする必要がある。第4に、「解」だけでなく解き方や理由も考える癖がつき、学び方をほかの単元にも反映させることができるなど、先生がうれしいと感じる変化が大事

 先進的な春日井市内の小中学校の事例から始まった本大会は、我々にとっても貴重な機会となりました。

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