公開日:2008/9/8
第5回「子どもたちを情報社会の影から守る」
堀田龍也先生連続インタビュー
大好評連載中の、堀田龍也先生のインタビュー「これでわかる『教育の情報化』」。今回のテーマは、「情報社会の影から、子どもを守る」です。今やインターネットや携帯電話をめぐる子どもたちのトラブルは、社会全体の関心事となっていますが、教師や保護者、そして社会はこの問題にどう向き合えばよいのでしょうか。
「クルマ社会」の発達に学ぶ
今、情報社会は、私たちの想像を遙かに上回るスピードで進化し続けています。私たちの暮らしも、ずいぶん便利に快適になりました。でもその一方で、さまざまな問題も噴出。情報社会ならではのトラブルや犯罪が大きく報じられ、人々は情報社会の「影」に怯え始めています。
しかし、「光」と「影」の両方を抱えているのは、情報社会だけではありません。何事にも、いい面も悪い面もあるのです。たとえば、「クルマ社会」を考えてみてください。
自動車はとても便利な道具です。通勤通学などの移動手段として、物流を支える輸送・運搬手段として、自動車は我々の豊かで便利な生活を支えています。
でもクルマ社会には、「影」の部分もあります。交通事故です。交通事故の死者数は、昭和40年代には1万6000人台を記録。「交通戦争」と呼ばれるほど悲惨な事故が続発し、社会問題になりました。
ところが昨年の交通事故による死者数は約5700人。最悪期よりも1万人以上減りました。その理由は何でしょうか。
1)社会的インフラ整備が進んだ
信号機、横断歩道、歩道橋、ガードレールといった、社会的インフラの整備が進んだ。
2)交通安全教育の成果
学校や家庭で交通安全教育が行われ、交通事故を防ぎ、事故から身を守るための知識や姿勢を人々が身につけた。
3)法律面での整備
道路交通法などの法律が整備され、交通安全のためのルールが明確に。処罰の厳格化が進み、人々の意識も高まった。
4)自動車産業の取り組み
人々を交通事故から守るために、自動車産業も技術開発に注力。エアバッグや事故に強い車体などの新技術が普及した。
交通安全と同じ
横断歩道や信号機という「インフラ」、左右を確認し手を挙げながら横断歩道を渡るという「知識と姿勢」、そして地域の方々の協力があって、交通安全は実現できる。情報社会でも、同じことがいえる。
過渡期の今だからこそ、教育が大切
クルマは「便利な道具」であると同時に、「走る凶器」でもあると社会全体が認識し、「光」を享受しながら「影」の脅威を少しでも減らそうと、インフラや教育、法律、技術などさまざまな角度から努力した結果、今のクルマ社会がある。情報社会もこうなるべきだと、私は思います。
しかし現在は、情報技術の発展スピードに社会が追いつけていない。法律面の整備も遅れているし、安全教育も学校で行うべきか家庭で行うべきかと議論されている段階。今は、情報社会の“過渡期”なのです。
その結果、インターネットや携帯電話がらみのトラブルや犯罪といった、情報社会の“交通事故”が続発。多くの子どもたちが事故に巻き込まれていることに社会は怯え、「携帯禁止論」などの極論も出始めています。
ですが、もはや情報社会から後戻りすることはできません。クルマ抜きの社会が成り立たないのと同じです。情報社会がクルマ社会と同じように健全に発展し、人々が恩恵を享受するには、クルマ社会と同じように、インフラや教育、法律、技術などさまざまな角度から安全を追求する必要があります。
その一例が、「フィルタリング」の普及でしょう。子どもが使う携帯電話にはフィルタリングサービスが原則適用されるようになりましたし、学校現場でもフィルタリングソフトの導入が進んでいます。チエルも、市場シェア4年連続No.1のフィルタリングソフト「InterSafe plus」を通じて、子どもたちに安全なインターネット環境を提供しています。
しかし、インフラや技術の整備に頼るだけでは、事故はなくなりません。人々の危機意識や問題意識が低いままでは、安全に暮らすための知識や姿勢を持たないままでは、安全な情報社会は実現できません。 だからこそ、教育が必要なのです。交通安全教育と同じように、学校と家庭で教育を行い、自分の脚で情報社会を歩ける子どもを育てていくのが、我々大人たちの使命ではないでしょうか。
- 有害なサイトから子どもたちを守る手段として、フィルタリングソフトが注目を集めている。写真はチエルの「InterSafe plus」。
今後も、情報社会は急スピードで発展していくでしょう。同時に、インフラや法律、技術面の整備も進み、時代に追いつく日が来るでしょう。それまでは、教育の力が頼りです。 情報社会の“過渡期”に生きる子どもたちを不幸にしないためにも、教師や保護者が目を配り、子どもたちを育んでいきましょう。それが、「情報社会の影から子どもを守る」ということだと思います。
最終回となる第6回では、「情報社会に生きる、教師のあり方」について、語っていただく予定です。次回のチエルWebマガジンもお見逃しなく!