公開日:2011/10/11

Part 3:成功している教員研修【校内研修】”よくわかる授業づくり”のためにICTの活用を研究する

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福井県勝山市立村岡小学校
伊藤 誠一 校長先生

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研究主任
西本 陽子 先生

 福井県勝山市立村岡小学校では、全教室に実物投影機とプロジェクタを常設し、日常的な活用を進めている。

 校内でもICT活用研修会や授業研究会を開催しているが、”使い方講習”にとどまらず、
“よくわかる授業づくり”につながるICT活用を研究しているのが特徴だ。

わかりやすい授業のためのICT活用

 「楽しく なるほど よくわかる 授業づくり~ICTでわかりやすく伝える~」を研究主題に掲げる、福井県勝山市立村岡小学校。先生方は日常的に授業でICTを活用しており、校内の「ICT活用研修会」で実物投影機やプロジェクタなどのICT機器の使い方を学ぶとともに、「授業研究会」でもICTの授業での効果的な活用方法を学び合っている。
 「日々の授業でICTを使っているうちに、『ただ使うだけではダメ。やはり授業作りの視点で、効果的な活用法を考えなければ』という共通理解が生まれ、今年度からさらに授業寄りの研究・研修を行うようになりました」とは、研究主任の西本陽子先生。その一例が、授業研究会で行われた「ICTを使った授業場面の報告」だ。
 「ICTを使った授業場面を撮った写真を見せながら、この単元の、この場面で、こういう意図で使ったと、全員が順番に報告し合いました。実物投影機を使った漢字の書き取り指導や、地図記号のフラッシュ型教材の活用、ハードル走の動画教材など、多様なICT活用事例が報告されました」(伊藤誠一校長先生)
 「資料提示・発問・指示に注目した授業研究」「資料提示と指示を組み合わせた教材と授業の提案」を心がけている同校では、ICT活用場面を検証する際も、「授業づくり」の視点で話し合う。
 「活用場面の写真を見ながら、教職員全員で『なぜこの場面で使ったのか』『発問はどうだったのか』などと話し合いました。授業の一場面に着目することで、議論の的も絞られます」(伊藤校長先生)

「教科書1ページ徹底分析」のねらい

 授業研究会のテーマは、先生方からの要望を反映することもあれば、研究主任の西本先生、そして伊藤校長先生が提案することもある。校長先生の提案で行われたのが、「教科書1ページ徹底分析」だ。
 「本校では実物投影機を教室に常設し、教科書の拡大投影を日常的に行っていますが、教科書ならどこでも映せばいいというものではない。教科書のどこを映せばわかりやすいかを考えて、映すことが大事。そのためには、教科書をよりよく知る必要があると思い、このテーマを提案したのです」(伊藤校長先生)
 まず模擬授業を行った後に、全員で議論。「教科書のここを実物投影機で映したのはなぜか」「映す箇所はここでいいのか」「この発問でいいのか」などとディスカッション。さらに教科書の1ページを全員で分析し、「何がわかるか」「なぜここにこの図や写真があるのか」「そこからどんな意図を読み取れるのか」などを、徹底的に話し合った。
 この他にも、授業研究会では「視聴覚を活用した学校・教室環境づくりの方法」や「ほめ言葉を磨く」など、さまざまなテーマが採用され、先生たちは”授業力の向上”に努めている。

「職員室通信」で方向性を共有

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授業研究会の様子。ICT活用場面を撮った画像を見ながら、全員で討論。

 授業研究会が終わると、その話し合いのポイントを校長先生がまとめ、「職員室通信」として配布する。
 「職員室通信は研究会の確かめにもなるし、次の課題提示にもなる。職員全員の方向性がハッキリと示されるので、活用や議論の方向がぶれずにすみます」(西本先生)
 また先進校の事例や、ICT活用の論文なども配布し、教師全員の方向性や課題、問題意識の統一を図っている。
 「今年度からパナソニック教育財団の実践研究助成を受けていますが、その研究テーマも『確かな学力の育成に向けたICT活用』であり、『ICTを活用した授業スキルの向上』を目的としています。今後もこの姿勢で、授業研究会とICT活用研修を進めていきたいと思います」(伊藤校長先生)

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