公開日:2016/8/22

『小学校の見せて教える理科』で、若い先生も、実験や観察の指導に自信が持てる!

理科対談 子供たちは理科が大好き! でも先生は…?

子供たちの約7割は、理科が好き。先生も理科が好き。しかし、実は、理科の指導が苦手だという。特に、実験や観察の指導が課題とされる。こうした「ねじれ現象」を解決するために開発されたのが、リリースされたばかりの『小学校の見せて教える理科』だ。そこで、この教材開発にご協力いただいた方々に、座談会形式で、教材の特長やポイント、苦労した点などについて忌憚なく語り合っていただいた。
(文中敬称略)

群馬県藤岡市立神流小学校
校長

齋藤 俊明先生

群馬県前橋市立城南小学校
教頭

笠原 晶子先生

株式会社教育同人社
編集部編集2課

卜部 恵美さん

先生は、なぜ理科の指導が苦手?

―子供は理科が好きなのに、先生は実験や観察の指導に自信がない。なぜでしょう?

笠原 子供は理科が大好きですよね。実験や観察など、他の教科にはない活動ができるので、昔から人気の教科です。でも先生はというと…まず理科を教える自信がないんです。小学校の先生は全教科を教えなければなりません。でも、実は国語や算数が専門で、理科は専門外、という先生が多いんです。

齋藤 特に若い先生に理科が苦手な人が多いようですね。専門が国語や社会で、文系コースを選択した人だと、理科は中学校で習ったのが最後、なんてこともある。すると、自分に理科の知識がないから、自信が持てないんです。

笠原 もう一つの理由は、「時間がない」ということ。実験や観察では、準備や授業研究に時間がかかりますが、先生はとても忙しいので、なかなか時間が割けない。準備不足のまま実験をして失敗し、さらに自信を失うという悪循環も起きています。

齋藤 私はもともと中学校で理科の教員をしていたので、小学校教員の大変さはよくわかります。中学校なら理科も専科ですので、実験や観察の準備にじっくり時間をかけられます。一度準備すれば、自分が受け持つ複数の学級でも使えることから、効率も良い。でも小学校は、他の教科も教えなければならないわけですから、理科の準備だけに時間はかけられない。せっかく入念に準備しても、自分のクラスで教えたら終わりです。結果的に準備がおざなりになり、行き当たりばったりの実験になってしまいがちですよね。

―行き当たりばったりの実験で終わってしまうと、どんな弊害が?

齋藤 「やりっぱなし」になってしまうんですよ。「実験、楽しかったね!」でおしまいで、「学び」にはなりません。

図1

出典:独立行政法人 科学技術振興機構 理科教育支援センター 「平成22年度小学校理科教育実態調査」

『見せて教える理科』の三つの工夫

―先生自身が、理科に自信がないにもかかわらず、準備や授業研究の時間が取れない…。そんな悩みを解決するために、『小学校の見せて教える理科』を開発されたわけですね。

卜部 教育同人社の『理科学習ノート』を下敷きにしつつ、あらゆる教科書会社の教科書を参考に、掲載する実験や観察を厳選しました。そして、笠原先生と齋藤先生に、教師ならではの実践的なご意見をいただきながら、何度も作り直しました。

―どんなところを工夫されました?

卜部 次の3種のコンテンツを盛り込みました。「①実験・観察の手順」「②実験器具の使い方」「③結果のまとめ」です。「①実験・観察の手順」では、実験や観察の流れを1枚にまとめて大きく提示できるようにしました。そして、各手順ごとに、イラスト入りでわかりやすく解説もしています。

齋藤 どのような手順で進めればよいのかが、一目瞭然です。手順がわかれば、授業の流れがわかり、「見通し」が持てます。特に若い先生は、授業に見通しが持てない。持てないから、迷うし苦手になる。

笠原 「見通し」を持つことは、大切ですよね。何のためにこの実験をするのか。最終的に、子供に何を理解させるのか。「見通し」を持たずに実験しても、「やりっぱなし」だったり、途中で終わってしまう。先生は忙しいので見通しを持つ時間も取りにくいですが、この教材を見れば大丈夫。授業前にこの手順を見ておけば、見通しを持って、迷わず進められます。

齋藤 先生が迷わなくて済めば、子供も迷わなくて済む。先生が見通しを持てれば、子供も見通しを持てる。何のためにこの実験をするのか、子供も意識しながら実施できます。

笠原 この手順を、大型テレビに映しながら実験させてもいいですね。

卜部 次に、「②実験器具の使い方」を解説するコンテンツも充実させました。実験では、安全に配慮することが大切です。しかし、実験器具の使い方の指導に時間をかけすぎると、肝心の実験する時間が奪われてしまいますよね。実験器具の使い方や注意点を、効率良く手際良く学習できるように工夫しました。

齋藤 実験器具の使い方は、ほとんどの子供は一度学習しただけでは、覚えられません。でも、この教材を見せればすぐに思い出せるし、短時間で復習できます。

笠原 繰り返し学習に最適ですよね。実験中にこの画面を大型テレビ等に映しておけば、注意喚起にもなります。

―「③結果のまとめ」がすごいですね。実験の結果をまとめる表が収録されていますが、これを使えば、実験結果を整理しやすく、考察しやすくなりますね。

笠原 この表を使えば、実験を「やりっぱなし」で終わることはなくなります。

齋藤 実験は、結果を整理して考察して、理論を導き出してこそ、意味がある。このまとめ表を使えば、それがしやすくなります。実験を行う前に、この表を見せておくのもいいでしょう。先生も子供も、授業の”ゴール”をイメージでき、ゴールを意識しながら実験に取り組めます。

図2 ①実験・観察の手順

実験・観察の手順をまとめて提示。各手順の解説も載っている。

おすすめは「月の見え方の変化」

―この教材には、5年生版が9件、6年生版が7件の実験・観察活動が収録されていますが(図5参照)、特におすすめのものは?

笠原 「月の見え方の変化」です!

齋藤 同感です。小学校の理科の中で、この単元が一番難しいと言っても過言ではありません。

笠原 特に難しいのが、月が満ちていくときの半月と、月が欠けていくときの半月の違いを理解させること。教科書や資料集には、このようなイラスト(図6‒1参照)しか載ってないんです。これを見ただけでは、光の当たっている箇所は同じなのに、見え方が違うことを理解できず(図6‒1の赤丸Aと赤丸B)、子供は混乱するんです。

 二次元の教材を見て、頭の中で三次元に変換しなければならない。これは

苦手な児童が多いですし、実は先生にも苦手な人が多く、上手に教えられずに苦労するんですよ。

卜部 そこで、これでもかというほど細かく丁寧に、スモールステップで解説しました(図6‒2~5)。

齋藤 紙の教科書や資料集では、紙面に限りがあるので、スモールステップで細かく解説しようとしても限界があります。でもデジタル教材なら、その制約がない。細かく、繰り返し、わかるまで解説できますよね。これはデジタル教材ならではの良さです。

―確かに、ここまで丁寧に解説してあれば、みんな理解できそうです。

齋藤 理屈と自然現象が頭の中でカチッとハマる瞬間が、理科の醍醐味。でも、そこにたどり着くのが難しいんですよね。この教材で月の満ち欠けをしっかり理解できれば、「セーラームーンで真夜中に輝くのはおかしい!」って批判できるようになりますよ(笑)。

―セーラームーンのどこがおかしいんですか?

齋藤 三日月は太陽が沈む時、西の空にしか見えないので、セーラームーンのように、真夜中の空高くに輝き続けることはないんです。そういったことがわかってくると、面白いですよ。

図4-1 ③結果のまとめ

図4-2

図4-3

上は、燃焼実験の結果をまとめる表。空欄をクリックすると、「火が消える」「燃え続ける」などの選択肢が選べる(図4-1)。図4-2のように、実験で「わかったこと」をまとめる教材も収録。また、数値を計測する実験では、任意の数字を入力できるようにもなっている(図4-3)。

図3 ②実験器具の使い方

実験器具の名称についての学習も可能。クリックすれば、空欄に答えが表示される。使い方の手順や注意点まで網羅している。

理科の面白さを、子供も教師も!

―この教材を、誰に、どのように使ってほしいですか?

齋藤 やはり、若い先生ですね。若い先生は経験が浅いから、実験や観察の指導に自信を持てずにいますし、授業研究や教材研究をする時間もない。この教材を使えば、実験や観察をスムーズに行え、学びにもしっかりつなげられます。

笠原 短期的には、実験の手順や進め方がわからない、まとめ方がわからないという先生の手助けになるでしょう。長期的には、この教材が授業研究や教材研究をする取っ掛かりになると思います。

齋藤 この教材を使って授業を進めていけば、実験や観察のコツがわかってきます。理科を教えるコツがわかってくるはずです。この教材を使いながら、少しずつレベルアップすれば、良いと思います。

卜部 この教材で、理科への苦手意識を払拭して、先生も理科を楽しんでもらえたら、と思います。

―最後になりますが、お二人は理科が好きですか?

笠原 大好きです! 理科には、「驚き」や「発見」がたくさんありますから。子供が「不思議だな」と感じたことを、授業の中で解決していく。そして、身の回りの自然現象が、こういう仕組みになっているんだと理解し、納得する。習ったことが、自分の生活と結びつく。それが理科の醍醐味です。

齋藤 私が教師になったのは、中学生のときに理科の実験で、「すごい!」と感動したからなんですよ。感動を与えられる理科が、大好きです。子供たちにも、実験や観察で、感動を与えてあげたいですね。

―ありがとうございました。

図5

多くの子供がつまずく、「月の満ち欠け」も
スモールステップで理解できる!

図6-1

赤丸Aと赤丸B、光が当たっている箇所は同じなのに、見え方が違うのがわかりにくい。そこで…

図6-2

図6-3

図6-4

スモールステップで、細かく、何度も解説。これなら、理解しやすい。

図6-5

最後に、実際の月の写真を見て、学んだ「理屈」と「現象」を一致させる。この単元に限らず、イラストで解説した方がわかりやすい箇所はイラストを使いつつ、最後のまとめでは本物の自然や現象の写真を掲載。学んだことと自然現象とが結びつくように工夫している。

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