今から始めるタブレットPC【第1回】

― タブレットPC初心者を応援します! 連載企画 ―


私がタブレットPCを使わなかった理由。
「だってタブレットPCなしでも、授業に困っていませんので」

「タブレットPCが入ってきたけど、どう使えばいいかわからない」
「タブレットPCを導入したのに、先生方が使ってくれない」
そんな先生方の悩みを応援する連載企画がスタート!「タブレットPCに触ったことがない」という初心者の先生が上達していく歩みを、6回にわたってレポートします。

お話を伺った先生

相模原市立共和小学校
4年1組担任 情報教育担当

坪田 沙織 先生

相模原市立総合学習センター
学習情報班

岡部 竜生 指導主事

私がタブレットPCを使わない2つの理由

 神奈川県相模原市では、市を挙げてタブレットPCの整備と活用を進めています。ここ共和小学校にも、平成25年度に6台のタブレットPCが導入されました。けれども、昨年度に赴任してきた坪田沙織先生は「一度もタブレットPCに触れたことがない」と、苦笑いします。

「タブレットPCを使わない理由ですか?(考え込んで)2つあります。

「1つは、タブレットPCがなくても、授業に困っていません。ずっとチョークと黒板、自作の教材で授業してきましたし、今さらタブレットPCを使う必要性を感じないんですよね」

 「もう1つの理由は、活用する姿や効果をイメージできないこと。タブレットPCを活用している授業を見たことがないので、どう使えばいいか、どんな良さがあるのか実感がもてません。実際に使って見れば便利なんでしょうけど」

 坪田先生ははっきり言いました。なかなか説得力のある理由です。共和小学校では、他の先生方もタブレットPCを使っていないのでしょうか?

「いえ、ICTの得意な若い先生は、タブレットPCを使っているようです。私も情報教育担当なので、先生方には『タブレットPCをどんどん使ってください』とお願いしていますが…情報教育担当がこんなことじゃダメですよね」

 坪田先生は、そう言って肩をすくめました。

書画カメラは、毎日使っています!
書画カメラとタブレットPCの間に立ちはだかる「高いハードル」

「ICTはまったく使っていないのですか?」とたずねると、思わぬ答えが返ってきました。

「いえ、書画カメラ(実物投影機)は使っていますよ。子どもたちのノートを大型テレビに映して発表させたり、ノートのまとめ方のお手本を書画カメラで実演してノート指導をしたり、資料の写真を映して観察させたりもしますね。毎日使っていますよ。書画カメラはほんとに便利ですよね」

 書画カメラは使うけど、タブレットPCは使わない。その違いはどこにあるのでしょうか?

「だって、書画カメラは簡単ですから。スイッチを入れて、見せたいものを(台の上に)置くだけですからね。タブレットPCは難しそうで…。プライベートでは、スマホは使っていますけど…」

 さらに「書画カメラとタブレットPC」の間には「高いハードル」があって邪魔をしていると、坪田先生は言います。

「書画カメラは私の教室に常設していますが、タブレットPCは職員室に保管されています。これは大きな差です。常設されていれば『使ってみよう』と思ったときにすぐ使えますが、職員室からわざわざ持ってきて、セッティングするのは面倒ですよね」

「また、書画カメラはこれまでの授業計画にすんなりあてはまります。黒板に書いて発表したり、資料を印刷して黒板に貼って観察したりしていたのを、書画カメラに置き換えるだけ。『あ、ここは書画カメラで見せてみよう』と授業中に思いついたら、すぐに実践できます。常設していますしね。けれども、タブレットPCを授業で使うとなると、授業計画そのものを一から作り直さないといけないでしょう?授業準備がたいへんそうなのも、使わない理由ですね」

「タブレットPC初心者だけど授業力は高い」坪田先生に、
同じような先生方のモデルになってもらいたい

 坪田先生の元同僚で、現在は相模原市立総合学習センター学習情報班の岡部竜生指導主事も、「坪田先生と同じく、使ってみたいけど使い方がよくわからない」という理由でタブレットPCを使わない先生方は多いと指摘します。

「私たちの役割は、先生方にタブレットPCの良さを知ってもらい、授業で活用してもらうことです。そこで今回、タブレットPC初心者の坪田先生に白羽の矢を立てました。坪田先生が一からタブレットPCを学んで上達していく姿を、多くの先生方に見てもらい、『私でもできそう』 『私もやってみよう』と勇気づけたいと考えています」

 なぜ坪田先生を選んだのか、そこにも深い理由があると、岡部指導主事は言います。

「坪田先生は、タブレットPCは初心者ですが、授業力はとても高い教師です。授業力が高ければ、すぐにタブレットPCを使うコツをつかんで、授業で使えるようになると思いますし、教育効果も上がるはずです」

 「坪田先生のように、授業力はとても高いのに、タブレットPCを敬遠している先生がとても多いのが現状です。こうした先生方がタブレットPCを使うようになれば、タブレットPCの利活用は加速的に普及していくと考えています」

第2回では、そんな坪田先生が「タブレットPCの基本的な使い方」についてマンツーマンでの研修で学びます。

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