CALLシステムの活用でメリハリある授業を行う
立命館大学では、2008年度よりCaLabo EXを採用し、現在では衣笠、びわこ・くさつの両キャンパスにそれぞれ5教室、計10教室に導入している。授業におけるシステムの活用状況や今後の展望について、びわこ・くさつキャンパスで中心となってシステムを利用されているという経営学部の英語の先生方ならびに情報システム担当の職員の方々にお話をうかがった。
CALL教室の授業では意欲も発話量も向上する
今回は、CALL教室での授業の導入が進んでいる経営学部のお二人の先生、林正人教授と廣森友人准教授にお話をうかがった。経営学部(経営学科・国際経営学科)では、Reading, Listening, CW(Communication & Writing)、CALLの4つを1年次の必須科目としており、このうち週1回のCALLの授業をCALL教室で行っている。先生方は、授業を行うにあたり、4つの科目の位置づけ、差異化を常に意識されているという。
「CALLの授業には、リスニングはもとより読み書きの要素やスピーキングも入りますが、扱う内容や質を工夫することによって、他科目との差異化を図っています。例えば、ネイティブスピーカーの教員が担当するCWの授業では、比較的カジュアルな場面でのスピーキングを意図していますが、CALLの授業では、フォーマルな場面を意識しています」と林先生は語る。その一例として、1年次後期(2nd semester)には、アメリカ企業を紹介するDVDを教材に授業を行い、経営学という専門分野の入門にもなるよう工夫しているという。
「CALL教室の利点として、DVDなどの映像が活用できるということがあります。映像があることで学生も楽しみながら学べるようですし、リスニング、シャドーイング、ペアワークとアクティビティを切り替えていくことで、授業にメリハリがつき、学生も飽きることなく取り組むことができると感じています。また、学生のなかには、面と向かって他人に相対することが苦手な子もいます。そういう学生にとっては、ランダムペアを利用して離れた席の子とチャットをするほうが心地よいようです」と廣森先生。学生の態度も、他の科目に対するよりも積極的で、CALLの授業を楽しみにしている学生も多いという。
また、林先生は、「CALLの授業では、個人の発話量、つまり英語を口に出す量がとても多くなります。これは英語力向上に非常に重要なことです。ヘッドセットをつけて音読練習やシャドーイングをし、それを録音させて提出させているのですが、みんな熱心にやってくれていますよ」と語る。
システムはメインではなく学習者をサポートするもの
また、経営学部の英語教員の間では、さまざまな形での協力体制がある。普段からの教材交換や情報共有に加え、年2回、セメスターが始まる前に全員対象の講習会が開かれ、システムの使い方や授業の進め方について学ぶのだ。さらに、4つの科目それぞれにコーディネータという責任者がおり、なにかあればコーディネータに相談できるような仕組みになっている。「みんなで協力して教育していこう、という雰囲気がありますね」と林先生。システム系のスタッフやSE、また「CALLスタッフ」と呼ばれる学生のサポートもあり、機械操作が不得手で不安だという教員も安心して授業を行うことができる体制が整っている。
実は、林先生も廣森先生も、立命館に赴任して3年目。林先生も当初はシステムの使い方や授業の進め方に戸惑ったという。「大切なのは、新しいことを学ぼうとする姿勢です。ただ、システムはあくまでもツールであり、自分が使いこなせる範囲で使えばいいと考えています。機器などのツールが便利になったからといって、学習者の英語力が上がるわけではありません。基本は、適切なインプットを与え、アウトプットを引き出すことです。それを手助けするのが、これらのCALLシステムなのだと考えています」と話してくれた。
また、廣森先生は「CaLabo EXはいわば『箱』です。問題は、その箱の中に何を入れるか、ということではないでしょうか。今後は、既存の教材だけではなく、工学系の研究者とも協力しながら、システムの利点を活かせるような教材の開発も進めていきたいと考えています」
教材制作、クラウド化…新しいことに挑戦したい
続いて、CALL教室の運営やICTの利用・活用支援を担当する教学部教育開発支援課の前田昭吾さんにお話をうかがった。「CALL教室の稼働率は高く、とくにびわこ・くさつキャンパスでは約70%にもなります。私たちの部署ではヘルプデスクを設置し、授業中の先生からの質問に内線で対応できるように待機していますが、大きなトラブルもなく、システム面や機器の操作もみなさんどんどん慣れてきていらっしゃるようですね。とくにびわこ・くさつキャンパスでは、英語のほかに第二外国語の中国語や韓国・朝鮮語の授業でも活用しています。全学的にICT環境の向上に努めていますが、学部単位でもe-Learningや学部独自の教材の制作を進めています。先生方の意見も取り入れながら、新しいことにチャレンジしていきたいと考えています」
また、立命館大学のクラウドの導入状況について、情報システム部情報基盤課武田龍馬さんにお話をうかがった。「本校のような規模が大きな大学にとっては、クラウドの利用価値は大きいと思います。ただ、セキュリティ面への不安などから、学内にもクラウド導入に慎重な方が多く、段階的に導入を進めているところです。これまでには、自前でサーバを持つことのデメリットを部分的に解消するために、学内にあったサーバを外部に移したりもしました。系列のAPU(立命館アジア太平洋大学)では、学内メールをGmailに移行した結果、サーバの容量が半分ほど削減できたという報告もあります。今後は、LMSのリプレイスを行うことが決まっていますが、ステップを踏みながらさらにクラウド化を進めていきたいと考えています」
学内のICT環境のさらなる整備に取り組んでいる立命館大学。これは、教育の質の向上、さらには優秀な人材の育成へとつながるであろう。西の私立大学の雄の活動に期待が集まる。