公開日:2026/4/21
“どんな子供を育てるか”から始まる旭川市のDX
教育委員会訪問 令和7年度旭川市リーディングDXスクール事業実践報告会レポート
―北海道―
旭川市教育委員会
令和7年12月1日、旭川市内において、リーディングDXスクール事業に指定されている市内4校(緑新小学校、 西御料地小学校、緑が丘小学校、緑が丘中学校)による実践報告会が開催された。市の教育研修「ICT活用研修会」を兼ねた本会には、市内すべての小中学校から約160名の教職員が参加した。
4校の実践に見る
教育DXの7つの視点
令和5年度よりリーディングDXスクール事業に取り組んできた旭川市の4校は、校務改善と授業改善の両面で、目に見える成果を挙げている。今回は、4校の発表内容から共通して見えてきた「7つの特徴」を整理して紹介する。
①チャットの積極的な活用
まず校務や授業改善で、教職員も児童生徒もチャットを積極的に活用しているのが特徴だ。
緑が丘小学校では、各学年が1クラスのみのため、同学年の担任と日常的に相談することが難しいという課題があったが、緑が丘小学校の長岡教諭の発案によりチャットスペースを開設し、市内2校(緑新小・西御料地小)とのチャット交流で克服。他校の教員と教材研究や指導の悩みを相談し合い、互いの実践を参照できる環境を整えている。
緑が丘中学校では授業でもチャットを積極的に活用している。旭川市では、児童生徒が安心してチャットを使えるよう、児童生徒同士のダイレクトメッセージは禁止し、チャットルームは教員のみが作成できる設定にしている。生徒が自分のノートをチャットに上げて共有することで、まとめる力が向上しているという。
②ポータルサイトの開設
校務DXで目を引いたのが、ポータルサイトの活用だ。緑が丘中学校では、校内DXプラットフォーム(Google スプレッドシート™ ベース)を構築(図1)。年間を通じて使用する書類や月ごとに必要な書類や資料へのリンクを一覧化し、誰でも迷わずアクセスできる環境を整えている。新入生向けの案内サイトや、生徒が構築した学校祭特設サイトを運用している点もユニークだ。
必要な情報を一元化することで、校務の効率化が一気に進む。チャットの活用とともに今後のトレンドになりそうだ。
③教科書が基本!
GIGA端末活用推進と並行して、指定校はあらためて教科書の読解を重視している。緑新小学校では、教科書から読み取った情報を児童生徒がクラウドに入力し、他者参照を行うことで、教科書を読み解く力の向上を図っている。
児童生徒が情報収集をする時、最も信頼できる情報源はやはり教科書。教科書をしっかり読み取ることが、深い学びの出発点となる。
年間を通じて必要な書類や資料へのリンクを一覧化することで、誰でも迷わずアクセスできるように工夫されている。
④学習の見通しを示し、児童生徒の自己決定・自己選択を促す
Google Classroom™︎ を使って、児童生徒に本時や単元の目的や内容、着目すべき見方・考え方、ルーブリックなどをまとめた資料を配付しているのも特徴だ。緑新小学校の久川主幹教諭は、「学習の見通しを持つことで、主体的に学べるようになる」と強調した。
⑤児童生徒に委ねつつ、教師が支援
児童生徒に学びの主導権は委ねるが、任せっぱなしではなく、教師は支援に懸命だ。緑新小学校では、クラウド上で児童の記述や変化を確認し、即時に適切な助言や支援を行っている。
⑥持続可能な組織的実践
DXを一過性の取り組みにせず、教職員の異動があっても継続できる仕組みづくりを進めている点も見逃せない。
西御料地小学校では、各学年・教科ごとに、ICTを有効活用できた教材や使い方などの情報を集め、各学年の単元配当表に整理(図2)。次年度以降の担任が使いやすいように配慮している。
⑦どんな力を付けたいかが大前提
最後に強調しておきたいのが、どの学校も、「児童生徒にどんな力を付けたいか」を明確に掲げ、教職員で共有している点だ。緑新小学校では、身に付けさせたい力から逆算して、児童にさせたい学習活動やICTの活用方法を検討している。これはDXにおける最重要ポイントと言える。
春日井市の水谷氏が示した教育DXのポイント
3年間にわたり指定校4校を指導・助言してきた水谷年孝氏(愛知県春日井市教育委員会教育研究所 教育DX推進専門官)による講演と講評、そして新保元康氏(認定NPO法人ほっかいどう学推進フォーラム理事長)が司会を務めるグループディスカッションが行われた。
水谷氏は旭川市の実践を振り返りながら、「児童生徒が集中・熱中し、頭がフル回転している」と指摘。教科書からしっかり情報を集め、整理・分析、まとめ・表現する学習過程を、すべての教科で、児童生徒自身が回せるようになってきていると評価し、「目の前の児童生徒をしっかり見取って、指導の個別化を図っている」と讃えた。
パネルディスカッションでは会場の教職員から「DXは特定の先生に負担がかかり過ぎる」との悩みも寄せられた。これに対し新保氏は、DXが一時的に教員の負担を増やすことに理解を示しつつ、「これから学校現場に入ってくる若い人たちのために、ひと汗かく」つもりで前向きに考えてはどうかとアドバイスしていた。
指定校の実践は市内へと広がっている
実践報告会終了後、主催した旭川市教育委員会の柳澤麻弥指導主事と、登壇した4校の教諭に感想を伺った。
この実践報告会は今年で3年目を迎える。市内全校から教職員が来場しており、「市内の横展開は着実に進んでいる」と、柳澤氏は語った。DXの進め方について指定校への問い合わせも増えているという。
また今回初めて、札幌市や北見市など道内のリーディングDXスクール指定校の実践報告会も併せて開催された。その感想を尋ねてみると、「同じ課題を共有していることを確認でき、より進んだ活用事例が刺激になった」(緑が丘中・北村主幹教諭)、「どこも似た悩みを抱えていると実感。切磋琢磨したい」(緑新小・久川主幹教諭)、「生成AIの活用に関心が高まった。ネクストGIGAに向け挑戦したい」(西御料地小・舛田主幹教諭)と、手応えを語ってくれた(本イベントについては囲み記事参照)。
今後も旭川市のDXは、着実に進んでいくことだろう。
※Google Classroom、Google スプレッドシート、Gemini は、Google LLC の商標です。
旭川市教育委員会
学校教育部教育指導課 課長補佐 指導主事
柳澤 麻弥 氏
緑が丘中学校
主幹教諭
北村 裕美 先生
西御料地小学校
主幹教諭
舛田 誉生子 先生
緑新小学校
主幹教諭
久川 聡 先生
緑が丘小学校
教諭
長岡 伸二 先生