公開日:2022/6/23

チエル15周年 特別対談

チエル株式会社は、2021年10月に設立15周年を迎えました。教育機関と企業というまったく違う世界に身を置いてきた2人が、これまでの歩みを振り返るとともに、変わることのない“教育ICT”への思いについて語り合いました。

チエル15周年特別対談

チエル株式会社 代表取締役会長
川居 睦

東北大学大学院 情報科学研究科
東京学芸大学大学院 教育学研究科

堀田 龍也教授

現場の先生と力を合わせて
少しずつパートナーシップを築いてきた

なぜチエルを設立したか
産学連携の始まり

チエル設立当時の対談記事(扉ページ)
                                    チエルマガジン第1号より(2007年春夏号)
チエル設立当時の対談記事(扉ページ) チエルマガジン第1号より(2007年春夏号)

堀田 チエルは、2021年10月に設立15周年を迎えました。設立前後、川居さんと熱い議論を交わしたことを今でも思い出します。学校でICTの利活用が進まないのはなぜなのか? 本気で教育市場だけに絞ったICT会社は貴重ではないかといったことを語り合い、それがチエル誕生につながりましたね。

川居 私自身、行き詰まりを感じていたことをよく覚えています。当時から私は学校現場で利用できるシステムを取り扱っていましたが、学校に行っても導入していただいたシステムが使われていない。自社ソフトが鍵のかかったロッカーに入っている。こんなに悲しいことはありません。堀田先生と話し合い、利活用を推進するためにはシステムと教材を一緒に企画するべきだと思い、チエルを設立するに至りました。

堀田 一方で、この頃はどちらかと言うと、これまで努力してきた企業が文教市場に対して危惧を感じていた時期でした。大手のIT企業が文教市場から撤退した例もありました。その時に新しい会社を作るというのは、大いなる決断があったかと思います。

川居 おっしゃる通りです。実は多くの方から言われました。「なんでこんな時期に?」と(笑)。しかし、学校教育は国の根幹をなすものの一つです。本気で教育市場だけに絞った会社があってもいいのではないかと、あえて設立を思い立ったわけです。そうしないと、日本のICT教育がどんどん他国に遅れをとってしまいます。最終的に企業の目的は社会貢献ですから、そういった意味でも、チエルは学校教育という市場に絞ることにしました。

堀田 かなり思い切った選択をされたわけですね。私が長年チエルマガジンの巻頭を担当してきたのは、そういう意味でとても貴重な企業だからです。日本では、企業が学校現場と手をつなぐというのはそう簡単なことではありません。川居さんは昔から、さまざまな製品を産学連携という形で打ち出し、研究者の私を通して、現場の先生と力を合わせて共同開発をしてきました。そうやって少しずつパートナーシップを築いてきましたね。

フラッシュ型教材を全国へ
ホスピタリティを大切に

川居 産学連携で、いくつもの取り組みを進めてきました。数あるプロジェクトの中でも、特に力を入れてきたのが「フラッシュ型教材」です。フラッシュ型教材は、課題を瞬時に提示するシンプルな仕組みで、繰り返し学習することによって基礎知識を身につけるのに活用されています。特に小学校ではどんな先生にも使いやすく、応用しやすいのが特長です。ICTは道具であって、日常使いしないと意味がないと、デジタルで反復学習を可能にするというアイデアを最初に提案いただいたのが堀田先生でした。

堀田 当時、授業でパソコンを使いこなすことに不安感や苦手意識を持っている先生は多くいらっしゃいましたが、フラッシュ型教材の土台はパワーポイント。ソフトウェアとして難しいものではないので、誰でも作ることができる。しかも紙とは違って、簡単に量産が可能です。似ているけれどもちょっとずつ違う教材など、いろいろなバージョンを簡単に作れ、利活用できることから、しっかりとした学力の定着が図れるわけです。これがデジタル教材としてフラッシュ型教材を活用するメリットです。

川居 当時、このフラッシュ型教材を広める活動として全国でセミナーを開催しました。北海道から沖縄まで計40回以上開催する中で、回を重ねるごとに口コミで参加者が増え続け、100名を超えることもありました。これをますます広めるために、先生たちの自作のフラッシュ型教材が投稿でき登録いただいた皆さまに活用いただける「eTeachers」というウェブサイトを整備しました。

堀田 「eTeachers」は先生方のICT活用を大いに促進したと思います。セミナーには全国の先生方に参加していただき、互いの関係構築にも寄与しましたね。

川居 参加していただく皆さまに、「チエルのセミナーに来てよかった」と心底思ってもらえるよう、ホスピタリティ精神を大事にして開催してきました。長年のお付き合いとなる各地の先生方は、今でも当社を応援していただいており、非常にありがたく感じています。

堀田 川居さんはことあるごとに、ホスピタリティの重要性を説いていますよね。

川居 ホスピタリティこそ、チエルというブランドの支えになっているからです。全国の学校の先生方にとって、どの製品を買うかと同時にどの会社から買うかはとても大切だと感じています。多くの先生は、学校は異動することはあってもずっと先生です。これは裏を返せば、私たちチエルの社員は異動があってもずっと見られているということなのです。決して変なことはできません。

子どもたちの可能性ある未来のために

チエルマガジンも15周年
ICT利活用の歴史そのもの

堀田 ICT活用に向けて、このチエルマガジンの発行にも長年取り組んできましたね。

川居 設立当初から年2回発行し続け、15周年となる今年は30号の発刊を迎えました。発行部数は小中版だけでも1万1000部以上になり、全国の先生方へお届けしています。堀田先生には毎号ご登場いただき、時代に即した情報とメッセージを発信していただいてきました。

堀田 タイトルを振り返るだけでも、教育業界が大きく変化してきたことが分かりますね。2008春夏「教育の情報化って何?」、2013春夏「何のためにICTを整備し、活用するのか?」、2019春夏「今すぐ始められる『教育の情報化』と『ICT環境整備』」、2020秋冬「子どもたちの未来を拓く教育を『GIGAスクール』で実現しよう」――。まさにICT利活用の歴史そのものです。チエルはこうした変化を最前線でとらえることができたからこそ、今の成長につながっているのだと思います。

川居 チエルマガジンでは、さまざまな事例の紹介も行ってきました。例えば、40年も前からICT教育をスタートさせた茨城県つくば市は、市内すべての小・中学校にICT環境を揃え、2016年度には市内全52校がJAET(日本教育工学協会)の「学校情報化優良校」の認定を獲得しました。この他にも、ICT教育におけるトップランナーの取り組みを数多く発信し、全国に波及させることも教育専業のIT会社であるチエルならではの使命だと考えています。

堀田 小学校や中学校は義務教育であり、どの自治体の学校に通うかによって教育の水準が大きく異なるようではいけません。その意味で、チエルマガジンを通じた情報発信により、各自治体の取り組みを全国の先生が学べるという機会は非常に貴重であり、今後も手をつないで継続していきたいと思います。

先生方のニーズに合った
商品・サービスを徹底追求

川居 時代は「1人1台」になり、教育を取り巻く環境はますます変わってきています。「eTeachers」は2021年にサイトを刷新し「eTeachers GIGA SCHOOL」として生まれ変わりました。フラッシュ型教材を1人1台環境に沿った形に変えつつ、GIGA端末を活用するための実践的なアドバイスやヒントを発信していきます。

堀田 チエルマガジンについてもGIGA端末の活用方法や活用事例紹介など伝える場にできるといいですね。また、昨年から始めたチエルマガジンセミナーも非常に好評ですね。

川居 ありがとうございます。セミナーはオンラインでの実施だけでなく、現地に出向いて直接先生と顔を合わせて開催できたらいいですね。学校現場は今後も目まぐるしく変化していくと思われますが、チエルの経営理念が変わることはありません。今年度より私は会長になり、社長を粟田にバトンタッチしました。それはさまざまな世代の現場の声をお伺いするためです。先生方の授業をICTで支えるという理念のもと、学校現場の先生方のニーズに合った商品・サービスの提供を徹底的に追求していきたいと考えています。もちろん、チエルマガジンを通じた情報発信も変わらずに続けていきます。今後ともご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

チエル設立当時の対談記事(扉ページ)
                                    チエルマガジン第1号より(2007年春夏号)
各自治体の取り組みを全国の先生が学べるチエルマガジンは非常に貴重であり、今後も手をつないで継続していきたい

堀田龍也 (ほりた・たつや)
東北大学大学院 情報科学研究科 教授
東京学芸大学大学院 教育学研究科 教授

●1964年熊本県天草生まれ。東京都公立小学校教諭、文部科学省参与等を経て現職。中央教育審議会委員をはじめ、デジタル教科書や教育データ利活用、プログラミング教育等のさまざまな政府関係委員や座長を歴任。小学校教諭の経験を活かし、現在も学校現場の情報化やデジタル教材を活用した授業の方法論の研究を推進している。

チエル設立当時の対談記事(扉ページ)
                                    チエルマガジン第1号より(2007年春夏号)
ICT教育におけるトップランナーの取り組みを数多く発信し、全国に波及させることはチエルならではの使命

川居 睦 (かわい・むつみ)
チエル株式会社 代表取締役会長

●1962年生まれ。93年11月アルプスシステムインテグレーション入社。99年10月旺文社デジタルインスティテュート(2006年よりチエルに社名変更)取締役に就任。05年6月アルプスシステムインテグレーション取締役。06年10月、チエル代表取締役。21年6月より現職。

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