公開日:2016/2/26

これで、子供も先生も、社会科が好きになる!

〝社会科名人〟のワザを、誰でも使えるデジタル教材が新登場。

『小学校の見せて教える社会科5年生/6年生』は、さまざまなグラフや絵図を収録した提示用デジタル教材だ。そのリリースを記念して、この教材の制作にご協力いただいた、札幌市立発寒西小学校・校長の新保元康先生と、岩手県奥州市立常盤小学校・副校長の佐藤正寿先生に、教材制作のねらいや使用効果についてお話いただいた。

左:札幌市立発寒西小学校
校長

新保 元康先生

右:岩手県奥州市立常盤小学校
副校長

佐藤 正寿先生

子供も先生も、「社会科が苦手」

図1
教科書に掲載される資料数
「小学社会」(教育出版 H27年度用)の場合

佐藤正寿(以下佐藤) 社会科って、「嫌われ教科」なんですよね。「好きな教科」のアンケートを取ると、必ず下位に低迷する。その理由は至極単純。まず、「覚えなければいけないこと」がたくさんある。特に高学年は、地理、歴史を習うので、覚えなければならない用語がたくさん出てきます。

 そして、「わかりにくい」。社会科では図やグラフがたくさん出てきますが、社会科が苦手な子供にとっては、情報量が多すぎて処理できない。だから、嫌われるんです。

新保元康(以下新保) 子供だけじゃない。実は先生も社会科が苦手なんです。なぜかと言うと、教える内容がとても多く、時間が足りない。だからついつい詰め込んだり、駆け足になってしまい、授業がうまくいかないのです。

 上手に社会科を教えたいと思っても、その方法を学ぶ機会も限られています。社会科の授業研究をしている学校は、今とても少ないんです。どの学校も国語と算数に力を入れていますからね。

 その結果、子供も教師も、ますます社会科が苦手になっている。とても深刻な悪循環です。

図2
米の生産量と消費量、古米の在庫量の変化

佐藤 4年生と5年生の間に横たわる「ギャップ」も、社会科嫌いを生む要因になっています。4年生までは、社会科見学に行ったり、「わたしたちの町」について調べたりと、身近な内容が中心。子供もイメージしやすいし、興味を持ちやすい。それが5年生になると、急に難しくなります。

 たとえば、教科書に載っている資料数が急激に増えます。図1を見てください。

 5年生の資料数に注目してください。4年生に比べて、約1・6倍に急増しています。5年生の社会科の授業時数は100時間ですから、平均すると1時間あたり七つ以上の資料を扱わなければならない計算になります。これはたいへんな量です。

 しかも、資料一つひとつの情報量がとても多くなっています。その端的な例が、グラフです。たとえば、お米に関するこのグラフを見てください(図2)。

 1枚のグラフに、米の「消費量」「生産量」「古米の在庫量」と、三つものデータが盛り込まれています。本来なら一つずつ読み解いてもたいへんなグラフが、同時に三つも提示され、しかもそれぞれのデータを関連づけて考えなければなりません。グラフの読み解きが苦手な子供にとっては、かなりの負担です。

新保 質的な難しさと量的な難しさの二重苦ですよね。だから高学年になると、社会科嫌いが増えるのです。

佐藤 教師もたいへんですよね。これほど情報量が多い複雑なグラフを、全員が読み取れるように指導しなければならないわけですから。

難解なグラフをわかりやすく。シンプル化とスモールステップ

図3
『小学校の見せて教える社会科5年生』の画面。「提示切替パレット」をクリックすれば、任意のグラフだけを表示できる。

図4
グラフを二つ同時、三つ同時表示も可能。「スモールステップ」で情報量を増やし、少しずつ読み解かせることができる。

佐藤 そんな問題を解決するために、私たちはこの『小学校の見せて教える社会科5年生/6年生』(以下、『見せて教える社会科』)を制作しました。キーワードは、「シンプル化」と「スモールステップ」。たとえば、先ほどのお米に関するグラフなら、データを一つずつ表示できるようにしました。(図3)。

 グラフを一つずつ示す。これだけで、格段に読み解きやすくなります。読解が苦手な子は、情報量が多すぎて、どこに注目すればいいかわからないんです。だから、情報を絞ってあげる。必要な情報だけ抜粋して、「シンプル」に見せてあげるのです。

 まずは「消費量」「生産量」「古米の在庫量」を一つずつ読み解かせて、その変化や傾向をつかませる。その上で今度はデータを二つ表示して、関連性について考えさせる。「スモールステップ」にすることで、すべての子供にわかりやすくなります(図4)。

 また、グラフを「○年ごとに表示する」機能もついています。図5は「日本の漁業の生産量・消費量と輸入量の変化」を表したグラフですが、輸入量のグラフを95年まで見せて、「この先どうなりそうですか」と発問して、子供たちに予想させるのです(グラフ左)。

 たいていの子供は「増える」と予想するでしょう。なぜなら「ずっと増え続けてきたから」。ところが、ここをピークに、日本の輸入量は減少傾向に転じるのです(グラフ右)。予想がはずれた子供は、「どうして?」と驚き、新たな疑問を持ちます。理由を知りたい! と意欲もわいてきます。

 ”社会科名人”と呼ばれた先生方は、このような授業が得意でした。資料の一部を隠して見せ、予想させる。すると子供は、これまで学んだこと、自分が知っていることをフル活用して、予想します。そして予想した上で答え合わせをすることで、新たな疑問が芽生える。もっと知りたい、調べたいという意欲につながるのです。

拡大提示の「目のつけどころ」をアシストする

図5
「提示切替パレット」から、任意のグラフを時系列に沿って少しずつ表示できる。グラフを途中まで表示し、その先を予想させる活動に最適。

図6
拡大表示すべきポイントが設定されており、そこをクリックするとズーム表示される。

新保 グラフだけではありません。この『見せて教える社会科』には、絵や地図など多彩な資料が収録されています。6年生では、グラフの数こそ5年生に比べて減るものの、絵図や年表などが増加し、多彩な資料を読み解くことが求められるようになります。その助けになる機能を盛り込みました。

 図6は、どの教科書にもよく載っている、貴族の屋敷を描いた絵図です。「ポイントを表示」ボタンをクリックすると、拡大表示してじっくり読み解かせたいポイントが白く浮かび上がり、そこをクリックするとズーム表示される仕組みになっています。

 これだけで、ぐんと読み解きやすくなります。社会科が苦手な子供でも、どこを見ればいいかがわかり、集中して読み解けるのです。

 どこを拡大するかを吟味し、余計な情報を隠して、見せたい情報だけ拡大する。拡大表示が得意だった”社会科名人”の「目のつけどころ」を、この『見せて教える社会科』はアシストします。

社会科名人のワザは、誰でも使えるようになる!

図7
『社会科の達人が推薦する 社会科重要資料の指導法 30選』(教育同人社刊)の誌面。『見せて教える社会科』を使った授業の展開例が細かく示されている。

新保 佐藤先生もおっしゃったように、この『見せて教える社会科』を使えば、”社会科名人”のワザは、誰でも使えるようになります。

佐藤 しかも、『社会科の達人が推薦する 社会科重要資料の指導法30選』(教育同人社刊・別売)という指導書も作りました。この指導書では、『見せて教える社会科』に収録されている資料を使った、授業展開例を掲載。どのグラフをどの順番で見せるといいか、その際にどんな発問をすればいいかなど、細かくまとめました。ぜひセットで使っていただければと思います。

 私の学校でも、若い先生方が使っていますが、子供たちから、とても豊かな反応が出ています。自分の予想や発見を積極的に発表するようになり、覚えるべき用語や事柄も定着して、テストの点も上がっています。

 もちろん資料を読み解く力も鍛えられています。この力は、社会科に限らず他教科でも必要ですし、今求められている「情報活用能力」そのものだと言えます。

新保 この教材を使えば、若い先生でも、社会科が苦手な先生でも、授業を進めやすくなります。資料の読み解きを円滑に行えるので、読み解いたことを元に考える時間をたっぷり取れるようになって、45分の授業時間内に、計画通り最後まで授業を進められるようになります。駆け足や詰め込みを防げます。

佐藤 教材研究や授業研究の良いきっかけにもなりますよね。どんな資料を、どんな順番で、どんな発問をしながら見せ、どんな気づきを引き出せばいいか。そのコツがつかめます。

新保 『見せて教える社会科』には、社会科を専門とする私たちが厳選した資料30点が収録されています。この30の資料をきっちり教えれば、子供も先生も、社会科への苦手意識を払拭できると考えています。

佐藤 社会科の醍醐味は、「見えなかったものが、見えるようになる喜び」にあります。『見せて教える社会科』を使って資料を読み解いていけば、その喜びが味わえる。先生も子供も、社会科のおもしろさを実感し、社会科を好きになってほしいですね。

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