今から始めるタブレットPC【第4回】

― タブレットPC初心者を応援します! 連載企画 ―


授業計画は変えずに、紙の教材も併用しながら、
タブレットPCの良さを発揮できる場面で使っています。

タブレットPC初心者の坪田沙織先生が、タブレットPCを授業で活用できるようになるまでをレポートする連載企画も今回で最終回となります。前回は、タブレットPCやデジタル教科書、フラッシュ型教材などのICT機器やデジタル教材を効率よく活用した授業を見せていただきましたが、わずか4か月で、どのようにしてタブレットPCを駆使することができるようになったのかについて、より具体的に話していただきました。

タブレットPCに慣れたのは、「フラッシュ型教材」のおかげ

――4か月前、タブレットPCを活用するにあたって、スタート時点での率直なお気持ちをお聞かせください。

 最初は「タブレットPCを使わなきゃ」というプレッシャーを感じていましたし、タブレットPCに触れたこともなかったので、私にうまく使えるかがとても不安でした。そして、「使ってみて、もしうまくできなかったら、すぐに打ち切って今まで通りの授業をすればいいや」と、開き直っていました。(笑)

――最初はどのような活用から始めたのですか?

「フラッシュ型教材」です。とても簡単そうだったので、私でもできるかなと思いました。子供たちにタブレットPCを使わせる前に、私自身がタブレットPCに慣れようと考えたのです。

 そこで、『小学校のフラッシュ基礎・基本』を使って、社会科の都道府県名を覚える活動を行ってみたところ、うまくいきました。「私にもタブレットPCを使えるんだ!」とうれしくなって、何度も繰り返し活用しました。フラッシュ型教材のおかげで、タブレットPCなどICTへの苦手意識を払拭できましたし、自信もつきました。それからは、社会科にとどまらず、国語科や算数科でも、フラッシュ型教材を使うようになっていきました。


「フラッシュ型教材は、ICT活用の入り口として最適!」と、坪田先生。

――先日の算数の授業でも、冒頭でフラッシュ型教材を使って前時の復習をされましたよね。

 フラッシュ型教材は、短時間で学びのポイントを復習できますし、繰り返し練習することで定着を図れるのが良いですね。先日の授業は、「直方体の展開図」でしたが、その前に、前時に学習した立方体についてのフラッシュ型教材で復習し、面の形や大きさなど、学びのポイントとなる事柄をしっかり確認させました。

ICTの活用は、使えば効果的と判断した場面だけ

――どなたかに相談したり、アドバイスを求めたりしましたか?

 教育委員会の指導主事の先生によく相談をしました。といっても、授業づくりに関する相談がほとんどです。ICTの操作方法や使い方などは、最初の研修で教わった基礎的なことで十分でした。

――授業づくりに関する相談とは、どのようなことですか?

 たとえば、先日の授業では、「展開図が折りたたまれて立体になる様子をICTで見せられないか」と考えました。算数が得意な子は、展開図を見ただけで頭の中で組み立てられます。でも、算数が苦手な子はそうはいきません。そんな子供たちのために、展開図が立体になっていく様子を見せて、わかりやすく教えたいと考えたのです。

 その時は、デジタル教科書にそうした機能があると教えていただいたので、さっそく授業に取り入れました。ICTありきで授業を設計するのではなく、こういう学習活動を行いたいという目的が先にありきで、その手段としてICTが有効なら活用するというスタンスが大事だと思います。

――以前に、「タブレットPCを使うとなると、授業をイチから設計しなくてはならないから大変そう」と、おっしゃっていましたが、実際のところはいかがでしたか。

 授業計画をイチから変える必要はなく、既存の授業計画に上手にはめ込めばいいのだとわかりました。先日の授業も、授業計画の大筋は変えていません。今まで紙のワークシートや実物投影機で行っていたところを、より効果的に学べるようにと、タブレットPCやデジタル教科書を活用しただけです。紙のヒントカードや模型といった、今まで使っていたアナログな教材もそのまま活かしています。

――デジタル教材だけはなく、アナログな教材も併用する理由は?

 デジタル教科書やデジタルノートを見ただけで立体をイメージできる子もいます。でも、それだけではわからない子もたくさんいます。立体のイメージをつかむには、切ったり貼ったり組み立てたり、さまざまな角度から眺めることが必要です。デジタル教材の活用だけでなく、これまでのアナログな教材も交えて、子供たち全員が理解できるように、さまざまな手段を用意しています。

デジタル教材だけでなく、紙のヒントカードなど、多様な教材を用意して、全員が理解できるよう、工夫を凝らしていた。

他の班の途中経過もリアルタイムで共有できるのが、タブレットPCならではの良さ

――先日の授業では、グループに1台のタブレットPCで子供たちに直方体の展開図を考えさせましたが、そのねらいは?

 「他の班の途中経過をリアルタイムで見ながら、参考にして、学習意欲を高める」のがねらいです。これこそ、タブレットPCならではの良さだと感じています。実はこの良さに気づくことができたのは、子供たちのおかげなんです。

 前時の「立方体の展開図を考える」授業で、タブレットPCを使ったグループ学習を初めて行った時のことです。『らくらく先生スイート』を使えば、子供たちのタブレットPCの画面をリアルタイムで大型テレビに一覧表示できることを思い出し、何気ない気持ちで映してみたのです。すると、子供たちが目の色を変えました。他班の途中経過を見て、「あの班はこんな展開図を考えている! なるほど!」と参考にしたり、「あの班の展開図と似てるから、別の展開図を考えよう!」などと意欲的に取り組むようになったのです。

 今までは、ノートやワークシートに考えをまとめた後に実物投影機で映していましたが、これでは途中経過は見えませんでした。タブレットPCなら、作業の途中でも子供同士で学び合ったり、刺激を受けて学習意欲を高めることができます。

 教師にとっても、すべての班の途中経過を把握できるのはとても便利です。今までは、一番困っている班への指導にかかりきりになってしまい、他の班の様子を把握するのが難しかったのです。でも、タブレットPCならすべての班の途中経過を把握できるので、困っている班を見つけてすぐに指導に入れます。


子供たちのタブレットPCの画面をリアルタイムで一覧表示。

――タブレットPCでグループ学習するコツはありますか?

 いきなりグループ学習に入るのではなく、まずは個別学習を行うようにしています。先日の授業でも、個別でノートに展開図を書かせてから、タブレットPCを使ったグループ学習に進めました。

 いきなりグループ学習に入ると、人の意見を聞くだけの消極的な子供が出てしまい、話し合いも活性化しません。個別学習で一人ひとりが自分の意見を持った上でグループ学習にのぞむと、議論が活性化し、良い学び合いになるのです。

 さらに、タブレットPCを使ったグループ学習の後に、その教科・単元のねらいにつながる学習活動を入れて、その日に学んだことをまとめ、全員に定着させることが大事です。先日の授業でも、授業の最後に直方体の展開図を書くポイントを話し合い、発表させて、全員が理解して授業を終えられるように心掛けました。

――スタートする前の取材では、「タブレットPCを使う必要性を感じない」とおっしゃっていましたが、今はどうですか?

 体験を通して、タブレットPCの有効性を実感しました。感激しています。とにかく、子供たちにとって理解しやすい授業、子供同士で学び合える授業ができることが何よりです。

――最後に、この企画を通してのご感想をお聞かせください。

 素敵な機会をいただいて、とても感謝しています。こういう機会がなければ、タブレットPCに触ろうとも思いませんでした。タブレットPCを使うきっかけを与えてくれた、相模原市教育委員会に感謝しています。

お話を伺った先生

相模原市立共和小学校
4年1組担任 情報教育担当

坪田 沙織 先生

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