公開日:2016/7/29

ICT運用支援システム導入でさらなるIT環境の活性化へ

流通経済大学では、2013年夏に無線LAN環境「RKU Wi-Fi」を構築し、学生ポータルへのアクセスが増加したものの、学生がパスワードを忘れるケースがあり、その一元管理に対するニーズが高まった。そこで15年9月に統合認証システムによるシングルサインオンと共に『ExtraConsole ID Manager』が導入された。

流通経済大学
1965年に世界最大規模の総合物流企業である日本通運株式会社の支援により設立された、産学連携を出発点とする社会科学系総合大学。2015年に創立50周年を迎え、開学より貫いてきた実学と少人数教育、そして豊かな人間性を育む教養教育に一層力を注ぎ、社会で活躍できる人材の育成に取り組んでいる。これまでの実績により、受験誌等では「就職に強い大学」との評価も高い。千葉県松戸市と茨城県龍ケ崎市の2つのキャンパスから、入学時に通学するキャンパスを選択できる「キャンパス選択制※」を導入しているほか、学習を支援する教育学習支援センター、海外に関心を持つ学生を支援する国際交流センターなど、教育環境が充実している。
※一部例外あり。

[新松戸キャンパス]
〒270-8555
千葉県松戸市新松戸3-2-1
TEL 047-340-0001

[龍ケ崎キャンパス]
〒301-8555
茨城県龍ケ崎市平畑120
TEL 0297-64-0001

Wi-Fi環境の整備を皮切りに、リニューアルプロジェクトを推進中

 流通経済大学では、学生や教員が利用する教育研究システムについて、4年に1度のペースでの更新が通例となっている。

 「在学中に1度は最新のIT環境を学業に生かしてほしいという願いがあります」と青砥係長がその理由を述べるように、サーバーや認証基盤、PCやプリンターといったハードウェアに加え、各種ソフトウェアやeラーニングなどの学習管理システムなどが定期的に更新されている。2003年には龍ケ崎キャンパスでネットワーク基盤が更新され、翌04年にオープンした新松戸キャンパスでも、高速インターネット接続や、一部エリアでは無線LAN環境も整えられていた。

 しかしその後、モバイル端末の主流は携帯電話からスマートフォンへと変容。ネットワーク基盤の老朽化が進む一方で、キャンパス全域でスマートフォンやタブレット端末による大規模・大容量の通信を可能とする無線LAN環境の整備が課題となってきたのだ。

 他方で、従来は二つのキャンパスで異なるベンダーのネットワークサービスを利用していたことが、トラブル時の責任範囲を曖昧にし、迅速な対応を阻害する要因にもなっていた。かつ、モバイル端末の多種多様化により、学生・教職員を問わず、さまざまなニーズにフレキシブルに対応するサポート体制が不可欠となった。そして、学内の会議を経て13年9月に整備されたのが、キャンパス内のあらゆる場所でスマートフォンやタブレット、ノートPCを使った学習を可能にしたWi-Fi環境「RKU Wi-Fi」だ。新松戸キャンパスに約130台、龍ケ崎キャンパスに約240台のアクセスポイントを設置したほか、ベンダーを統一し、各種設定・制御を一括で行える管理体制を整えた。どちらかのキャンパスでトラブルが発生しても、別キャンパスの設備が補完して接続を保つ環境を実現。その結果、学生と教職員が合計で約5、700人いる同大において、約4、400台の端末が、無線LANにアクセスできるよう端末登録されている。さらに、それまで教室に設置されたPCや、自宅のPCからの接続に限定されていた学生ポータルサイト「Ring」へのキャンパス内からのアクセスが劇的に増加したことも、Wi-Fi環境整備の大きな成果だ。その後、14年10月には、大学などの教育・研究機関同士がキャンパスの無線LANを相互利用する国際無線LANローミング「eduroam」にも参加し、15年には学内ポータルサイト「Ring」がスマートフォン対応を前提に、大幅に刷新された。

 とは言え、ハードやシステムの更新や新規導入は、あくまでも手段であり、それ自体が教育機関の目的ではない。学生のスマートフォン利用が加速度的に活発になってきている中、教育研究活動へのさらなる活用こそが学内会議でも共通認識・共通目標になっているという。そんななか、15年9月に導入されたのが、チエルの学内ICT運用管理ソリューション『ExtraConsole ID Manager』だ。「これまでの数々の更新と異なり、『Extra

Console ID Manager』の導入は情報基盤そのものの更新。教職員も学生も使いこなして初めて、その成果を証明することができます」と、社会学部教授で総合情報センターのセンター長を兼務する都築教授は今後の利活用を重視する。

教員と情報システム部門の双方のニーズにかなう環境整備

 『ExtraConsole ID Manager』の導入で目指したのは、第一に教員側からの声が大きかった学生本位のシステム整備だ。「従来からの課題として最も多かったのは、学生がパスワードを忘れてしまうことでした。流通経済大学では、Gmailがメールのプラットフォームとして使用されるなど、クラウド化を進めていましたが、就職活動のための重要なメールを見たくてもログインできずに前に進めない状況すらありました」と振り返るのは都築教授だ。

 Wi-Fi環境の整備によって学生ポータルへのアクセス頻度が向上したことから、学内に複数あったID管理サーバーを統合し、IDやパスワードを一元管理できるシングルサインオン環境の構築が、次なる最優先課題となったのだという。従来から学生がGmailや各種ソフトを使おうとする際に、セキュリティ対策のためにそれぞれ異なるパスワードを設定し、個別にログインしていたことが背景にあるのだ。

 第二の課題は、流れの速い情報環境にキャッチアップしていくための整備・更新。これは、学内のネットワーク環境の整備を担う総合情報センターを中心とする情報システム担当者の声に基づくもの。「以前のベンダーの作業内容はブラックボックス化している部分があり、かつユーザー視点では、スマートフォンには非対応でしたので、担当者がシステムとより主体的に向き合いながら、改善していくことが不可欠でした。特に、入学や卒業によって毎年約1、400名の学生が入れ替わりますので、ID統合やパスワード変更の工数削減に直結する体制が求められていたのです」と同センター情報システム課の青砥光一係長は実務担当者の視点で語る。

 こうして、シングルサインオン環境の構築に重きを置きながら、『Extra Console ID Manager』の導入が進んでいく。

優れた適応性を実証しシステム管理者の負担を軽減

 学内会議で方針が固まった後、14年度にかけてアウトライン策定から具体的な内容の検討まで進められ、15年度から採用ベンダーの選定がスタート。ユーザビリティ、システムの堅牢性・安定性、コスト、納期、メンテナンス性、サポート体制などについて15年7月に各ベンダーがプレゼンテーションを行った。

 「9月には運用をスタートさせたいという要望を快諾してくれたのがチエルでした。タイトなスケジュールのなか、フレキシブルに対応いただき、スムーズに移行もできました。ほぼ1か月半で構築が完了したことは信じられないくらいです。『ExtraConsole ID Manager』は管理者向けシステムですので、学生を中心とするユーザーには見えない部分の更新となりましたが、Webブラウザからユーザー情報を一元管理できますし、管理運用は確実に便利になっています」と青砥係長。そして「プレゼンテーションどおりの機能を、そのとおりに使用できることを導入後に実感でき、選んで良かったと感じています」と語るのは同センターの小西甲事務部長だ。

 現在では、キャンパス内の全域でアクセスしやすいWi-Fi環境と、ログインしやすいシングルサインオン環境の相乗効果により、教職員・学生を問わず、IT活用やWeb活用の意識は着実な高まりを見せているという。学生がパスワードを忘れた場合の再発行手続きの簡便さや、運用のしやすさは向上しており、エンドユーザーのメリットも確実に高まっているという。

 「シングルサインオンは管理がしやすく便利な反面、セキュリティ面は懸念材料のひとつでしたが、他大学での導入実績が選定時の決め手になりました。現在は安心して使用できていますし、カスタマイズされていない汎用のシステムでも十分な強みがあることが、本学の導入事例でも証明されたのではないでしょうか」と都築教授は評価する。

直近の課題は、新規利用者のアカウント申請をWebから出来るようにしてID管理システムに登録する、業務の簡素化・効率化に向けた機能追加などだという。そのために、設定変更やオプション追加などによって、より望ましい環境づくりを進めながら、「環境」の活用を推進・促進していきたいという。

『ExtraConsole ID Manager』によるユーザー情報の一元管理

デスクトップPCのない未来のキャンパスの先駆けに

構築から運用開始、その後のサポートまでチエル担当者が手厚く対応。こうしたいという要望にも、すぐ回答し、管理者の満足度は高いと評判。

 「当面はスマートフォンを最大限活用して学業の”補助作業”としての情報収集に役立ててほしいという思いがありますが、ゆくゆくはタブレットやノートPCによるレポート作成、論文作成など”本格的”にIT環境を学業に活用する動きを活性化させたいのです」と都築教授は展望を語る。

 現在は、コンピュータ室や図書館、就職支援センター、教育学習支援センターなどにデスクトップやノートPCを設置し、学業をバックアップしているが、徐々にPCは学生個人の持ち込みや貸し出し中心の利用方法に移行させていく方針だ。

 実際に、16年4月オープンの新松戸キャンパス2号館では固定のデスクトップやPCを設置せず、アクティブラーニングを積極的に推進する方針のもと、ラーニングコモンズなどのスペースを中心に設計されている。

 今後は、同大の特徴である全学生が1年次からゼミに所属する「ゼミナール教育」でも、学生個人のスマートフォンやタブレット、ノートPCを活用して学習を進めていくようになることが想定されている。社会に出ても通用する学生の育成を目的とするが、学生だけでなく、教員も、激しく移り変わる情報システムを利用した教育の変革が求められることとなる。

 「極言すると、学内に学生用のデスクトップPCが1台もないとしても、ノートPCや携帯用情報端末を使っていつでもどこでも学業に励むことのできるキャンパスであれば、高等教育機関として何ら問題ないということです」と青砥係長が語るように、これは決して夢物語ではない。個人所有の情報端末のみとなったとしても、利用を支える重要な基盤として『ExtraConsole ID Manager』は活躍していくものと思われる。

総合情報センター長 <br>社会学部 <br>都築 一治教授

総合情報センター長
社会学部
都築 一治教授

総合情報センター <br>小西 甲事務部長

総合情報センター
小西 甲事務部長

総合情報センター <br>情報システム課 <br>青砥 光一係長

総合情報センター
情報システム課
青砥 光一係長

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